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ワダエを救え1

 夢を見た。

 ノワールがすごくおっきくなる夢。


 ベッドよりも大きくなったノワールがいて、その上にショウカイが乗っている。

 ふわふわでフカフカとして、呼吸器する度に上下するのが心地よくて。


 ショウカイがみじろぎするとノワールがショウカイに視線を向けて尻尾を振る。


 温かくて幸せな、そんな夢。


「んっ……」


「起きたか」


「うわああああ!」


「失礼な!」


 とてもいい気分で目覚めると、夢は半分夢でなかった。

 大きくて意外と柔らかいものの上にショウカイは寝ていた。


 ただそれはノワールではなくマギナズの上であった。


 顔を上げるとそこには大きなクマの顔。

 驚くなという方が無理である。


 ビックリして起きあがろうとしたのでマギナズの上から滑り落ちてしまった。


「なんで……?」


 地面に打ち付けた腰をさすりながらマギナズを見ると、こちらも仰向けの体勢から起き上がっていた。

 妙な夢を見ていたのもマギナズのお腹の上で寝ていたためであった。


 寝ぼけてマギナズの上に登ったとは考えにくい。

 そもそも上に登ることをマギナズが許してくれるはずもなく、大人しく隣で寝転がっていたとも思えない。


 となるとマギナズの方がショウカイを乗せてくれたということになる。


「ゴアッ!」


 強い衝撃。

 何とか頭だけは打ち付けなかった。


「ノワール!」


 衝撃の正体はすっかり回復したノワール。

 起きたことに気づいて飛び掛かってきたのだ。


「良かった!」


 ノワールはショウカイの顔を舐めようとしていたけれどショウカイはそれよりも早くノワールをギュッと抱きしめる。

 不意をつかれたノワールだったが抱き締められても嬉しく、尻尾が激しく振られる。


「ふん、なかなか見上げた根性したウルフのメスだな。


 もっと強くなったら戦おうぜ」


 マギナズは鋭い歯を見せて笑う。

 是非ともノワールにはマギナズと戦わないでほしい。


 この巨体のクマにはどう頑張っても勝てる気がしない。


「起きましたか」


 振り返るとそこにはテラリアスナーズがいた。

 足の傷はすっかり治ってしまったようでどこを傷つけたのかすら分からなくなっている。


「俺は一体……」


「地面は固いですからね、マギナズにお詫びも兼ねてベッドになるように命じました」


「私の上で寝たオスはお前が初めてだからな」


「あっ? えっと、マギナズさんは……メス?」


「ああ? オスが女王様の周りにいられるわけねぇだろうが」


「そうですよね……すいません」


「ったく……光栄に思えよ、私の上で寝たこと」


「はい……」


 ヤンキーが何かのように凄んでくるクマの性別なんて分かりはしない。

 詳細鑑定を使えば別だけど見た目でそんなことを判断できる能力はショウカイどころか他の人でも無理。


 まして言葉遣いが荒いマギナズは男っぽく見えてはいた。

 ただし思念で聞こえてくる音声は高めで女性っぽいとは思っていたのだが。


 ワチカミみたいなら分かりやすいのに。


「あの、どうして泣いていたのか、理由を聞いてもいいですか?」


 もうすでにある程度の事情は詳細鑑定で知ってしまっている。

 知ってしまったから、ではないけれどなぜか放っておく気にならなくてショウカイは思い切って聞いてみた。


 マギナズがテラリアスナーズを見る。

 自分が話していい内容ではないが本人が話すならそれはそれでいいと考える。


 長めの沈黙。


「私には子供がいます」


 ゆっくりと口を開いたテラリアスナーズ。


「まだ男の子か女の子かも分からない、卵の中にいる私の子」


 テラリアスナーズはここよりも遠いところにひっそりと暮らしていた。

 生態系の頂点に君臨し、知能の高い魔物には女王と呼ばれて他の魔物を保護するようにしながら生活していた。


 ある時、そこに1体のオスが現れてテラリアスナーズは恋に落ちた。

 詳細は避けられたがテラリアスナーズがかなりしつこく迫っていったらしい。


 何はともあれお相手と愛を成したテラリアスナーズは子となる卵を産んだ。

 風来坊気質なそのお相手は子が産まれるころにまた来ると言ってどこかに行ってしまった。


 テラリアスナーズは卵を大事に育てていたのだが、そんな時にどこからか人間が来て卵を盗んでしまったのだ。


 大切な卵を盗まれたテラリアスナーズはマギナズを伴い犯人を追いかけた。

 相手も必死に逃げ、テラリアスナーズたちも必死に追いかけてここまで来た。


 1人に追いついたのだが、何とそいつは囮であった。

 怒りに任せてそいつを殺してしまったがもはやそこから敵の痕跡は途絶えてしまった。


 このすり鉢状の窪地も囮になったやつを怒りに任せて殺す時にできた跡だった。


 もう卵を追いかけられない。

 テラリアスナーズは深い失意の中で泣き出してしまったのであった。


「人間が……申し訳ありませんでした…………」


 人間代表にもならないがやってしまったのは人間。

 ショウカイは青い顔をしてテラリアスナーズに土下座した。


「あなたがやったことではないのですから謝る必要はありません」


 テラリアスナーズは懐が深い。


 ショウカイがテラリアスナーズの立場だったら人間を滅ぼすぐらいの勢いで探していただろう。

 こうなると襲いかかってきたマギナズのことも責められない。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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