思わぬ出会い6
「良かったぁ……」
安心して体の力が抜ける。
「きっと回復したら以前の時よりも強くなりますよ。
私の血ですからね」
テラリアスナーズからも安心したような声色がうかがえる。
「人間さんもどうですか、私の血?」
「ええっ?」
「人間の世界でもドラゴンの血と言えば誰もが欲しがる魔法の薬みたいなものだと聞きました。
魔物だけでなく、当然人間にも効果があるでしょう。
まだ血は出てきてしまっていますし、もったいないのでいかがですか?」
テラリアスナーズの足を見るとまだ血がにじんでいて、今にもたれそうになっている。
「ああ、早く!
たれちゃいますよ!」
「あっ、はい!」
迷っていたが急かされて反射的にテラリアスナーズの血を手で受けてとめる。
「もう出てしまったものは戻しようもありません。
遠慮なく、ささっ、グイッと」
そんなお酒でも進めるかのように言われても。
両手並々の血を飲むなんて相当な勇気がいる。
「ええい! 俺も男だ!」
このまま捨てることもできやしない。
なら覚悟を決めて飲むしかないのである。
ノワールは血を飲んで回復したのだ、ショウカイにとっても害があるものではない。
大きく息を吐き出して一息にテラリアスナーズの血を飲み干す。
ドラゴンの血だから何か特別美味しいかと言えばそうではない。
ちゃんと生物の血らしく血生臭く、残るようなドロっとしたのどごしがある。
要は不味い。
吐き戻しそうになるのを涙目になりながらこらえて、テラリアスナーズの血を腹に流し込む。
目の前に本人……本ドラゴンが見ていなきゃ思いっきり吐いていた。
そのまま吐かないように顔が血だらけになることもいとわず血を手で押える。
「うっ!」
吐き気かと思っていた感覚が変わっていく。
体の中で魔力が嵐のように吹き荒れている。
魔力が溢れてまるで体の中から皮膚を突き破って出てきそうになっているようだ。
手足の先まで魔力が満ち溢れて、感覚が研ぎ澄まされる。
(あっ……あそこにストーンリザードがいる)
あそこといっても距離がある。
なのにどうしてなのかそこにストーンリザードがいることがわかる。
全てが分かる。
そんな感覚に襲われた後、視界が歪んでぼやけ始めて、自分が立っているのかすら分からなくなった。
そこでふっとショウカイの意識は途切れてしまったのであった。
「いてて……女王様、やりすぎではないでしょうか?」
吹き飛ばされたマギナズは特に怪我もない様子で戻ってきた。
あんな風に飛ばされてしまったらショウカイもノワールでもきっと無事には済まない。
「……女王様、お怪我を!」
マギナズがテラリアスナーズの足に傷があることに気づいた。
「人間、貴様ぁ!」
「マギナズ!
これは私が人間さんに提案したことなのです」
今度こそショウカイのことを殺さんばかりの勢いだったマギナズをテラリアスナーズが制する。
ノワールを助けるためと説明し、マギナズはそれは自分のせいだったと反論できなくなる。
「今は卵をどう探すか考えましょう」
ひっそりとシズクもテラリアスナーズの足に張り付いて血をもらっていたことにも気づいていたがお詫びだと思って気づかなかったフリをした。
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