思わぬ出会い4
「昇格試験……ですか?」
「はい。
ショウカイ様の実績が規定に達しましたので冒険者ランクを上げるための昇格試験に挑むことができます」
時々ワチカミの巣に行ってミクリャやシュシュに会いに行ったり、時々依頼をこなすなんてして過ごしていた。
受付のお姉さんによると依頼の実績が次のランクにいけるほどになった。
ノワールもいてコツコツと依頼をこなしたり本当に時々ワチカミから魔物の素材を貰ったりもしてギルドに提出したりもしていた。
薬草の収集なんかは複数の物を結構な量持ってきたりと依頼をそれなりにやっていたショウカイは1人でやっているにもかかわらず相当な早さで実績を重ねていた。
昇格が認められるまであと一歩。
この昇格試験に合格するとEランクに昇格することが出来る。
昇格試験の内容はズバリ魔物討伐。
ギルドが指定する魔物を倒してその魔物の一部を証拠して持ち帰ってきてギルドに納めることが試験になる。
つまりはいつもとあまり変わらないのだ。
1人では大変かもしれないと言われたのだけれどショウカイに人間の仲間はいない。
だから1人でやるしかない。
失敗しても不利益なことは無いのでとりあえず昇格試験を受けてみることにした。
討伐対象はストーンリザードを3匹。
読んで字のごとく岩のような体長のデカいトカゲである。
場所はワダエの町からほど近い山岳地帯。
乾燥していて草も少なく、風が吹けば砂埃がまう。
早速山岳地帯に向かったショウカイはキョロキョロと周りを見渡しながら歩き回っていたり
森よりも気温が高い気がする。
ここが暑いと言うより森の気温が低かったのかもしれない。
ストーンリザードは普段は岩に擬態してじっとしている。
ショウカイに見つけられるか分からないのでノワールの感覚が頼りになる。
あまりのんびりともしてられない。
スライムを抱えてウルフを連れ立っている姿は目立ちすぎてしまう。
森と違って身を隠す場所がない。
早く終わらせないとストーンリザードを見つけるより先に魔物を連れている姿を人に見つけられてしまう。
山岳地帯は奥に入ると魔物のレベルがグッと上がる。
深入りしないように気をつけながらストーンリザードを探してショウカイはウロウロとする。
結局1日目はストーンリザードを見つけられないまま野営することにした。
困ったことになった。
ストーンリザードがいなかったのか、ノワールが見つけられなかったのか分からない。
ノワールの感覚を誤魔化せるほどストーンリザードの擬態が上手な可能性が出てきてしまった。
寝転がりながらどうしようかと考える。
地面が固い分厚めのマントを敷く。
少し暑く感じるけど体が痛いよりいい。
頭の下にはシズク。
枕がいいだけで野営でもだいぶ快適。
「……なんだ?」
そろそろ眠ろうかと思っていたらうっすらと声が聞こえてくる。
シクシクと泣くような声。
誰がこんなところで泣いているのか。
耳を塞ぐようにしても聞こえてくるその泣き声が気になって眠れやしない。
ガバッと起き上がるショウカイ。
良い予感はしないのだがこのままじゃねむれないので声の主を探しにいく。
火の魔法で辺りを照らして歩く。
草木は無くてもデコボコとした地形なために見通しは良くない。
声だけを頼りに彷徨うように歩いているとそれを見つけた。
「……カメ?」
すり鉢状に窪んだところの真ん中。
1匹のカメのような魔物がそこにいた。
ただしそのカメ、無茶苦茶デカい。
結構距離があるので正確なサイズは分からない。
トラッククラスの大きさがあるように見える。
泣いているのはそんな巨大ガメ。
「詳細鑑定」
『アースドラゴン
性別:メス
翼を持たず地上で一生を過ごす珍しいドラゴン。
非常に硬い外殻を持ち、高い防御力を持つ。
希少な種族であり、知能が高くて戦いを好まない傾向にある。
ここまで盗まれた卵を追いかけてきたが痕跡を見失ってしまい、今は深い悲しみの中にいる。』
「卵?」
泣いている理由はわかった。
ここに至るまでの経緯が分からなくてショウカイは首を傾げた。
イマイチ話が読めない。
「卵を盗んだのは、お前かぁ!」
全く気づかなかった。
ショウカイたちの後ろに大きなクマがいた。
「シズク!」
振り下ろされたクマの攻撃をシズクがショウカイの代わりに受ける。
ものすごい速さでシズクが飛んでいく。
ノワールでさえも気づけなかった相手。
それにも関わらずノワールはショウカイを守ろうとクマに飛びかかっていった。
「邪魔だ!」
「ギャン!」
ショウカイよりもはるかに強いノワールが一撃でやられる。
転がっていくノワール。
確認する暇もなくクマがショウカイに近づく。
「貴様、卵をどこへやった!」
「お、俺は卵なんて知らない!」
「ウソをつくな!」
「おやめなさい、マギナズ!」
クマの太い爪がショウカイの目の前で止まる。
引っかかれただけで皮がベロンと持っていかれてしまいそうだ。
全く反応することすらできなかったショウカイはクマから感じる殺気に生唾を飲み込む。
「なぜ止めるのですか、女王!」
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