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思わぬ出会い1

 ノワールも洗い終わり、ちょっとミクリャとも遊んで休憩。

 日当たりの良いところを選んでノワールにはいてもらい、毛皮を乾かしてもらう。


「じゃじゃーん」


 洗ったり流したりするのに夢中ですっかり昼時を逃してしまった。

 特に用事があるものでもないのでいつでもいいのだけど、とにかくお腹が空いてしまった。


 ショウカイはカバンからお昼用にと持って来たものを取り出した。

 ノワールが洗うのを嫌がった時に食べ物で釣ろうと高めのお肉も買ってきておいたし、調理済みの物もワチカミたちも食べるかと思って持ってきていた。


 聞くとやはり生食が基本らしいのでワチカミはこれが初めての人間の料理体験になる。

 と言ってもタレを絡めた焼いたお肉なだけだけど。


「んっまっ!」


 パクリと手でお肉を口に放り込んだワチカミはカッと目を見開いた。


「ヌギッ!」


「横暴は許さないである!」


 シュシュの体当たりを食らってワチカミが変な悲鳴をあげる。

 調理済みお肉を鷲掴みにして根こそぎ持っていこうとしたところをシュシュが止めたのだ。


 味が濃いのは美味い。

 みんな生肉よりも味付きの方が好きなようである。


 みんなで分け合って味付き肉を食べ、高級生肉もワチカミとノワールで食べてしまった。


 お腹も膨れたし、ノワールを洗った疲労感からのんびりと日向ぼっこをして、まったりと時間が流れていく。


「んー? あれはなんだ?」


 だいぶ水が蒸発してサラサラ手触りに近づいて来たノワールを撫でながら川を眺めていたら異変に気がついた。

 川上から不自然な水が流れてくる。


 川の真ん中がぽこりと盛り上がり、ゆっくりと川下の方に流れていっているのが見えた。


 何かがあるのかと思い、近くにあった長い木の枝を持って川に入る。

 スッと枝を差し込むと盛り上がった水が枝にぶつかって止まった。


 ノワールもこっちをみているけれど警戒した様子はない。

 危なくはなさそうなので盛り上がった水を枝でうまく引き寄せて浅瀬まで持ってくる。


「これはもしかして……」


「スライムであるな」


 つるんとした流線型のボディを持つ魔物。

 水に浸かっていると良く見えなかったけれど中に青いコアが見える。


 あんこの少ない水饅頭。

 そんな感想を抱かせるこれはスライムと呼ばれる魔物であった。


『従属スキルを使いますか?』


「えっ?」


 いきなりの表示に困惑するショウカイ。


「はい、と言ってみようか……」


 なぜこの表示が出るのか訳がわからない。

 対象はこの目の前のスライムだと思うのだが自信もない。


 もしかしてシュシュやワチカミの可能性もなきにしもあらず。


『従属スキルが成功しました。


 スライムが従属スキルを受け入れました。』


 やっぱりスライムでした。


「なんで!?」


「どうしたであるか?」


「このスライム俺の従魔になった……」


「何を言っているである?」


 ショウカイ自身事情が飲み込めない。


『スライム(従属)

 状態:従属

 性別:メス


 マスターに従属する使い魔のスライム。

 マスターに恩を感じていて、従属スキルを受け入れた。

 うっかり川に落ちてしまい、岸に上がることもできず死を覚悟していたところ助けてくれたので従属することにした。

 魔力でできた体を持つ特殊な魔物。

 ありとあらゆるものを時間をかけて溶かして魔力にすることができる。

 しかし個体ごとに好みがあって嫌いなものは意地でも溶かさない。

 謎の多い魔物である。』


 ツッコミどころが多い。

 スライムのメスってなんだ。


 こういった魔物は雌雄同体か性別無しなのかと思っていた。

 じゃあスライムも交配とかで増えるのだろうか。


 そしてうっかり川に落ちたって、なんとも言えない。

 川に落ちて戻ることができないから死を覚悟していたとはマヌケというかなんというか。


「ときどーき、川を流れるスライムを見かけることがあるぞ。


 好きでやっていたと思ったがあれスライムにとってはとんでもないことなのか」


 ワチカミに聞いてみるとスライム流しは時折見かける光景らしい。

 まさか死を覚悟するような状況だとは思ってもいないしわざわざスライムを助けるようなこともなかった。


 命の恩人だから従属を受け入れた。

 シンプルでわかりやすい理由であった。


「スライムが身近にいると便利だぞ。


 基本はなんでも食ってくれるからな、邪魔な骨とか置いとくと綺麗に無くなっていたりするんだ」


 スライムは掃除屋とも言われている。

 討伐対象にはほとんどならなくて、むしろそのまま捕まえてくる依頼があったことを覚えている。


 スライムなんて何に使うのか疑問だったけれどその能力を活かして掃除に使うのだろう。


 持ってみるとやわらかなボディが手の形にフィットして溢れたところがこぼれ落ちそうになる。

 しかしスライムのボディはこぼれ落ちそうになりながらも重力に逆らって垂れてしまうことはない。


 水に浸かっていたせいなのか、元々なのかひんやりとして感じられて気持ちがいい。


『スライムが名前をつけて欲しがっています』


「名前? ああ……確かにちゃんとしたの必要かもしれないな」


 水饅頭……頭の中に浮かんだ言葉をまず排除する。


「名前は単純が1番良い」


 辞書でもあったら外国語チックなオシャレな名前でも考えたけど今そんなものは手元にない。


「水玉……水滴……雫……うん、雫いいな。


 君の名前はシズクだ」


 メスだっていうしシズクなら女の子っぽくていいだろう。

 ショウカイの手の上でポヨンポヨンと跳ねるシズクは自分の名前が気に入ったように見えた。


「……えっ、これが3体目の仲間?」


 なんとスライムか仲間になった!

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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