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ウルフ洗い3

「んっ!」


 ミクリャはシュシュの教育によって慎ましさを覚えた。

 いつもの無表情で両手を上げてショウカイを見上げるミクリャ。


 もっと大きなサイズだったなら抱っこでも要求しているような仕草だけど、そのような解釈で遠くはない。


 ショウカイが手のひらを差し出すとミクリャはその上に乗る。

 そのまま手を肩に近づけるとミクリャはショウカイの肩に飛び乗ってショウカイの顔に抱きつく。


 これを慎みと呼ぶのかちょっと不明なのだが、シュシュによると慎みらしく、とりあえずミクリャは飛びついてくることをやめた。


 ショウカイは今ワチカミの巣を訪れていた。

 見張りのクモたちもショウカイのことは顔パスで通してくれた。


「いらっしゃいである。


 今日はどうしたである?」


 ミクリャに少し遅れてシュシュも奥から出てくる。

 足が2本と3本の計5本しかないシュシュだが不自由はなく元気そう。


「ワチカミは?」


「今は狩りに出ているである。


 毎日カラスでは飽きるであるからな」


「そ、そう」


 食周りの会話はいまだに慣れない。

 カラスを食べるというのも羽をむしって調理して、ではない。


 想像してしまうと気持ち悪くなっちゃうので気にしないことにする。


「まあいいや。


 今日は川に行ってみようと思ってね」


「川であるか?」


「そう、川。


 この森のもうちょっと奥らへんを川が通っているだろ?


 そこに行こうと思ってたんだ」


「ふむ、ワタクシもミクリャ様もまだあんまり出回っていないであるからあんまり川のこと知らないである」


「何の話をしているんだ?」


「あ、おかえりなさいである」


 そうこうしていると狩りに出ていたワチカミが帰ってきた。

 後ろには糸巻きにされた大きな何かを引きずってきている。


 狩りは大成功のようだ。


「この先に川があるだろ?


 そこに行きたいって話してたんだ」


「川?


 ああ、結構大きなのが森ん中を通ってるぞ」


「だ、そうであるぞ」


「おっ、じゃあ川の方に行ってみようと思うんだけどミクリャたちも行くか?」


「川にであるか? ワタクシはあまり濡れるがすきでないのである……」


「い……く!」


 難色を示すシュシュに対して、ちょいちょいとショウカイの髪を引っ張ってミクリャが行きたいアピールをする。

 ミクリャは行きたいようだ。


「じゃあワタクシもミクリャ様についていくである」


「じゃあ私も行くかな」


「行くのはいいんですけど服着てくださいね?」


 ワチカミは相変わらず下半身クモで上半身女性の形態をしているのだが、普段は服を着る習慣がない。

 ショウカイが巣を去って行ったのでまた服を着ていなかった。


 なので狩りから戻ってきたワチカミは上半身素っ裸である。


「分かった分かった。でもどうせ川に入るなら裸になるだろ?」


「全裸にはならないです……」


 ということでみんなで川に行くことになった。


「しかし、どうして川に行くであるか?」


「ん? ちょっとな」


 ここまできてノワールが逃げ出すとは思えないけど念のためまだ誤魔化す。

 歩いていると程なくして水の流れる音が聞こえてき始める。


 地面の状況も土だけの状態からちょっと石混じりになっていく。


 もっと進んでいくと思いの外近くに大きな川があった。


「おおっ!」


 思っていたよりも大きい。

 しかも手前が浅くノワールを洗うのにも良さそうな作りの川である。


「で、いい加減何するのか教えてほしいである」


「ここに来たのはな……」


 ショウカイはここまで背負ってきたカバンの中からオケと石鹸とブラシとタオルを取り出した。


「ノワールを洗いにきたんだ!」


「洗うである?」


 シュシュはノワールを見た。

 毛並みは艶やかでキレイ。


 汚れているようには見えない。


「なんで洗うである?」


 シュシュにはイマイチ理由がわからない。


「ちょっとニオイがキツくなってきてな」


「ニオイであるか?」


「すんすん、ケホッ……確かに結構臭うな。


 私でも鼻でノワールを見つけられそうだ」


 ワチカミがノワールに鼻を近づける。

 油断していたワチカミはノワールの芳醇な香りを思いっきり吸い込んでしまった。


 実はミクリャも一度ノワールに抱きついてから近寄っていないことをショウカイは気づいていた。


「そうであるか……」


 シュシュもニオイを感じないわけではないが人と違っているのかノワールのニオイについてピンときていない。


「ちなみにノワールは水、大丈夫か?」


 これで水が嫌いというなら慎重に対応する必要がある。

 ノワールは川をジッと見て、パァッと笑顔でショウカイを見る。


 言葉はわからないけれど入っていい?と聞いていることは見て分かる。


「いいぞ」


 ヒャッホーイ!と川に入っていくノワール。

 水は嫌いじゃないみたいで一安心。


「というわけで、ノワールを洗うのを手伝ってくれないか?」


「任せろ」


「任せるである」


「……!」


 ワチカミに言ったつもりだったけどシュシュとミクリャも手を上げて手伝う意思を見せる。


「ノワール、ちょっとおいで」


 嬉しそうに水でバシャバシャと遊ぶノワールを呼ぶ。

 ショウカイのところに向かう足取りが軽い。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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