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お別れの時2

『人間も特別そうできないものでもないのだがな』


「人間もそうできると言っているである」


「俺も? 今も何を言ってるか分からない……」


『魔物に関しての知識を得ました。

 魔物と絆を深めました。

 サモナーとして成長します。


 スキル思念言語を習得しました。』


 久々に勝手に表示が出てきた。

 その瞬間ワチカミが何を言っていたのか、理解できた。


 いきなり情報が頭の中に入ってきたようで少し頭が痛む。


「どうした? 体が痛むのか?」


「いえ、ちょっと頭が……」


「どうした、体が……えっワタクシまだ通訳してないであるぞ?」


「まさか、今ので私の言葉が分かるようになったのか?」


「はい、今は分かります」


「あっはっはっ、面白い人間だ!」


 豪快に笑うワチカミ。

 無表情で大人しいミクリャとは大違いだ。


 同じアラクネなのに大きさも見た目も性格も全く違っている。


「とりあえずなんですが……俺いつまでこうしていれば?」


 未だにショウカイは糸でグルグル巻きにされて床に転がっている。

 首しか動かせないのもツラい。


 あとはなんだか食べられる前みたいで気分も良くない。


「ダメだ、と言ったら?」


「そんなこと言われましても……」


 じゃあどうしろと言うのか。

 こちとら首しか動かせないのだぞ。


「こら、ダメと言っているだろ!」


 ノワールは味方なのは良くわかった。

 こっそりと爪でショウカイを巻いている糸を切ろうとしてくれていた。


 ワチカミがそれを見逃すはずもなくノワールは耳をペタンとさせて尻尾を下げる。


 お前の心意気は伝わったよ、ノワール。

 ありがとうな。


「まっ、別にいいんだけど。


 これだけ魔物に慕われてるんだ、私たちに害なすものではないだろう」


 ため息をついてワチカミは糸に手をかけるとブチっと引きちぎってしまった。


「あっ! すまんすまん!」


 ワチカミはすっかり忘れていたけれど糸巻きにされたショウカイの上でミクリャが寝ていた。

 これだけ会話してもすやすやと穏やかに眠っていたのだがワチカミが糸を引きちぎった拍子にミクリャが飛んでいってしまった。


 怒って抗議するような視線をワチカミに向ける。

 しかしミクリャはそんなことよりもショウカイが起きたことに気がついた。


「わっぷ!」


 ミクリャがショウカイの頬に飛びつく。

 ピッタリとショウカイの顔に引っ付いて頬に顔をうずめる。


 顔に密着されているのでミクリャの表情は見えない。


「好かれているものだな。


 その子はだな、私がお前を連れて行こうとするとな……」


「……!」


「あっはっはっはっ! 分かった!

 この話は無しにしよう」


 よほど聞かれたくない話だったらしい。

 ミクリャは何を思ったのか慌ててショウカイの耳にしがみついた。


 もう一方の耳は出ているし、塞いでいるのも完全じゃないから普通に声は聞こえてしまう。

 聞こえないようにしたかったのなら大失敗である。


 拗ねたような、照れたような感情を見せて顔を逸らすミクリャを手のひらに乗せる。


「少し大きくなった?」


 引っ付いていると分からなかったけど手のひらに乗せると分かる。

 なんかミクリャおっきい。


 指の長さぐらいの大きさだったミクリャが見ると手のひらぐらいの大きさになっている。


 目を細めて口の端を上げる。

 ミクリャが微笑んだ。


「まだまだ成長期だ。


 これからドンドンと大きくなるぞ」


「そ、そうなんだ……」


 アラクネの知識もないので勝手に小さいままでいるようなイメージを持ってしまっていた。


「まあ、みんな元気そうで何よりだけど、一体何があったんだ?」


 指でミクリャの頭を撫でながらシュシュとワチカミに向き直る。


 ショウカイの記憶はヤタに殺されかけたところで止まっていて、それ以降は覚えていない。

 その後に何があって助かったのか全然分からないのだ。


「説明するである」


 シュシュがショウカイの肩に飛び乗る。


「ワタクシは男らしくみんなを逃すために1人、敵を引きつけたである」


「あっ、そういえば相談も無しに勝手な真似を……」


「まあ、待つである。相談したところで許してはくれなかったと思うである。

 勝手にやったのは悪かったであるが、あの時しょうがないである」


 そりゃあ1人で囮になるなんて許すはずがない。


「ともあれである。ワタクシは必死に逃げたである。


 カラス共はしつこくワタクシを追いかけてきていたであるがその時あのヤタというカラスが来たのである。


 ワタクシはこれまた男らしく戦ったであるが力及ばず……。


 あのカラス、ワタクシしかいないことに飽きたのか、怒ったのかさっさと魔法を使って倒そうとしてきたであるがワタクシも回避には自信があるである。

 華麗に魔法をかわし続けていたいたであるがとうとう広い範囲での魔法を放ってきたである。


 流石のワタクシもかわしきれなかったである。

 こうして足を1本持ってかれてしまったであるがワタクシはこれを好機と捉えて、切られた足をそのままに隠れたである。


 何があったのかは知らないであるがカラス共はワタクシをろくに探すこともなく去っていったである。


 ワタクシの足も持っていってしまったであるが思えばショウカイ様を見つけて慌ててそちらに向かったのかもしれないである」

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


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