狙うもの3
シュシュとミクリャには手を出さないで待っていてもらう。
手伝ってもらった方が安全だし簡単に行くことは分かっている。
これからアラクネの巣を見つけたらシュシュとミクリャはいなくなる。
そうなるとショウカイとノワールの2人きりになる。
オーク相手にも2人でやれるのか、まだシュシュとミクリャがいて手助けが出来る間に試しておく必要がある。
勝てるか勝てないかで今後の活動の方針も変わってくる。
勝てるならもう一個ぐらい冒険者ランクを上げても活動出来る可能性がある。
ノワールがこっそりとオークの反対側に回り込む。
作戦はショウカイとノワールでオークを挟み込むつもりである。
メインのアタッカーはノワール。
ショウカイはそばにあった石を拾う。
ノワールが反対側に着いたことをを確認して、ショウカイは草むらから飛び出してオークに石を投げつける。
同時にノワールも反対側から飛び出す。
オークは石が飛んできたショウカイの方を見ていてノワールには気づいていない。
オークは棍棒のような太い木の塊を振り下ろして飛び出してきたショウカイを迎撃する。
元より攻撃するつもりがなかったショウカイはオークの攻撃を軽々と回避して、もう一度石をオークの顔に投げつける。
オークは手で石を防ぐがそれで問題ない。
気をひければ十分でダメージは期待していない。
その間に後ろからノワールがオークに襲いかかる。
ノワールが魔力を込めた前足を振り下ろしてざっくりと背中が切り裂かれる。
オークが叫び声を上げてノワールの方を向く。
見るとひどい怪我だが致命傷ではない。
オークは混乱しているので好機とばかりに攻撃の手を緩めない。
オークは2メートル近い巨体でありショウカイの剣を頭に当てるのは難しい。
だからショウカイはノワールの方に気が行ったオークの足を切りつける。
小さく声を出してオークが倒れる。
ノワールがオークの腕に噛み付いて武器を奪う。
「トドメだ!」
倒れたならオークの頭にも剣が届く。
しかしここで経験の浅さがあだとなる。
真っ直ぐに振り下ろされた剣はオークの頭に向かった。
ここで狙うべきは頭ではなく首であった。
思いっきり振り下ろした剣はオークの額に当たった。
半分まで食い込んだところで剣は止まり、オークを倒すには至らない。
「ちょっと待っ……て!」
人間焦ると咄嗟に手に力が入ってしまう。
剣を離せばよかったのにしっかり握ってしまった。
オークが立ち上がり額にめり込んだままの剣にショウカイはぶら下がる形になってしまう。
「は、はは……どうも。
……えいっ!」
スッと振り返るとオークの顔が間近にあり、バッチリと目が合う。
何かしなきゃと思い、咄嗟にオークの顎に蹴りを入れた。
剣が抜けてオークの額から血が噴き出す。
「ノワール!」
よろけるオークの首に勢いよく飛び上がったノワールが噛み付く。
「させるか!」
ノワールを引き剥がそうとするオークの手をショウカイを切り付けて防ぐ。
ノワールがオークの喉を食いちぎり、飛び退く。
少し間があってオークが後ろに力なく倒れる。
「やった……!」
ギリギリの戦いだったけれど勝利は勝利。
「お疲れ様である」
シュシュとミクリャが疲労で地面にへたり込むショウカイのところに寄ってくる。
動きの鈍さや頭の悪さはゴブリンと大きな差がない。
けれど図体がデカくパワーがあり、体を覆う厚い脂肪のせいで致命傷を与えるのに苦労する。
背が高いこともショウカイにとっては面倒な要素の一つになる。
下手に剣で切りつけるとダメージにはならず、顔や首は遠いので反撃を受ける可能性が高い。
それでも勝てない相手ではない。
慣れてくれば1匹ぐらいはどうとでもなりそうだ。
あとはしっかりと反省して次に繋げる必要がある。
ゴブリンはどこを切っても割と簡単に攻撃が通るので忘れがちだったがやはり頭の骨は硬く、簡単には切ることができない。
そのせいで大怪我になりかけた。
このことはしっかり反省して次はちゃんと柔らかいところを狙っていくのが大切である。
戦い方としては胴体は脂肪で無理、頭は遠いなら足を狙うのが1番現実。
機動力を削ぐことは大事だしノワールの方ならオークに手痛いダメージを与えられるのでショウカイはサポート的に立ち回っていくことの方が良いだろう。
今回は初めてのオーク討伐で疲れてしまったので帰ったが、その後も何回も森に足を運んだ。
森は広く、1回や2回ではとてもじゃないが探索しきれない。
魔物を避けつつ行動しているせいもあるが中ぐらいところに当たる森ですらなかなかの範囲になる。
途中1匹だけのオークがいたら挑戦しつつ数日をかけて中ぐらいのところを大体探索した。
大まかであるがグルっと回ってみた。
当然というのもなんだがアラクネの巣がある気配はない。
これ以上探すなら森のもっと奥に足を踏み入れる必要が出てきてしまった。
オーク1匹ですらギリギリの戦いをしているショウカイにとって森の奥は未知数でありどうしても足を踏み入れることに抵抗感じてしまっていた。
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