狙うもの2
オーガキングがどんな魔物なのか知らないけれどキングと付くのですごい魔物なことは分かる。
Aクラスの魔物の魔石であるなら本に書いてあった魔石からの魔物の召喚を可能にするレベルのものであるだろうか。
本に書いてあった以上は魔石から魔物を召喚できるのだと思うのに未だに試せる見込みすらない。
今ショウカイが狩っている魔物ではほとんど石と変わらない魔石はないも同然なので試しもしない。
そもそもゴブリンの魔石じゃギルドも引き取ってくれない。
試したことがないから分からないじゃないと言われるとそれまでだけれどわざわざゴブリンの腹を切り開いて小さい石を探して失敗することが分かっている実験をする気も起きない。
オーガキングの魔石を欲しいと思ったところでFランク冒険者がそんなオークションに参加するなんておこがましい。
どんな魔石なのか見てみたい気持ちもあるけどオークションの噂を聞いただけで他に何の情報もないから場所すら分からない。
こう考えると魔石をちゃんと見たことないなと思った。
後ろにいた冒険者たちはショウカイと違う道を行ってしまったのでこれ以上のことは聞けなかった。
そのまま一度宿に戻りみんなに出発することを伝える。
まだ日は高いので近くの森の様子ぐらい見に行ってみようと思った。
チェイの森と名前が付けられているこの森は木々が鬱蒼と繁っていて薄暗い。
日光が遮られているせいで肌寒く、重たく感じられる。
危なげな雰囲気とは裏腹に森の浅いところでは低クラスの魔物の棲家となっているので比較的安全な狩場になっている。
「まあ巣があるなら森の奥か中心部だと思うのである」
そう簡単にシュシュは言ってのけたのだがショウカイはまだFランク冒険者。
適正な場所はまだまだ森の浅いところであってあまり深いところに行くのは危険が伴う。
シュシュは気楽に鼻歌を歌いながら先導して進んでいく。
一方ショウカイは不安が拭えず何があってもいいように常に横に付いて歩くノワールの様子をうかがっている。
何かあればノワールが1番初めに異変に気づくからショウカイ自身が何かに気づくより何かに気づいたノワールの様子に気づいた方が早い。
「巣がある印とは合図みたいものはないのか?」
「そんなものがあったら人間にバレてしまうである」
「それもそうか」
「ある程度近づけばワタクシにも分かるであるし、おそらく見張りの同輩がいるから分かるである」
その同輩とやらが心配なのだとショウカイ。
シュシュとミクリャが友好的なので忘れがちだが魔物は魔物。
他のクモたちが人間にフレンドリーなわけがない。
魔物なので会えば命の取り合いになる。
シュシュほど楽観的には動いていけないのである。
そんなことないと信じたいけど他のアラクネに会った瞬間魔物の本性を現して……なんてことがない可能性も、ないか。
人前で少し音痴に気持ちよく歌っているシュシュが裏切るとはちょっと思えない。
ちょいちょい薬草を取ったり魔物と遭遇したりしながら浅い層を軽く回って、森の中ぐらいのところに足を踏み入れた。
これまでの浅いところが依頼でいえばGランクやFランク相当の魔物が出るところなら中ぐらいのところはEやDランク相当の魔物が出てくることになる。
冒険者としても中級者の入り口ぐらいに当たり、これぐらいから何とか生活もまともになり始める。
中級者クラスの代表的な魔物といえばオークが挙げられる。
ゴブリンよりも上の魔物が出てくるところに行くのだからより一層気を引き締めなければいけない。
残念ながらFランクのショウカイでは森の中ぐらいのところでやる依頼は受けられなかったし、そんなにバンバン戦うつもりもなかった。
なのでオークを見つけたのだがショウカイは離れたところから様子をうかがっていた。
倒した証拠がどこになるのか分からないし、魔石や死体を買い取ってくれるのかも調べてこなかった。
しかし相手はちょうど1体だけで周りにも仲間はいない。
『オーク
性別:オス
豚に似た顔をした魔物。
二足歩行の大きな体を持っており、全身を厚い脂肪が覆っている。
知能は低く性格は粗雑で好戦的。
肉は美味。』
あれを食べるのか、と言うのがまず初めに思った感想。
立っている豚というにはちょっと無理がある。
食用とかそう言った表現でなく、美味という表現であるからには美味いことは予想は出来る。
見た目や表面の綺麗さに肉質が影響されないとしてもだ、抵抗感を感じるのは異世界人が故なのか。
豚に似ているなんて言うものの鼻が潰れたようになっていてそれが豚っぽいだけで顔の造形が豚なわけじゃない。
それにゴブリンもそうだけどオークもくすんだ緑色っぽい肌をしている。
美しい造形とはショウカイの感覚では口が裂けても言えない。
オークの目的は見ていても理解できないが何かを探すようにキョロキョロして動かない。
このまま隠れていても埒があかない。
「戦ってみようか。
シュシュとミクリャはこのまま手を出さないで待っていてくれないか?
危なくなったら助けては欲しいけど」
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