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叫べ!2

「ただ性格は私の方が何倍も良い子ですね」


 ニヤニヤと人を見下したような笑顔を浮かべていた。

 余裕の表れなのかもしれないけれどすごくムカつく顔をしていて、イブシュレアが1発ぶん殴ってくれないかとひっそり応援していた。


 アステラの場合人の良い笑顔を浮かべていたって腹の中で何考えているか分からない奴もいる経験をしたので人が良さそうでも信用できたものじゃないけど、あの笑みは嫌いであった。

 確かに嫌な笑顔のやつだったが出来るならもう会いたくないものだ。


 戦いなんてしなくていいならしない方がいい。

 特に強い相手なら尚更だ。


「ああっん!」


「やめてくれ……」


 ややお姉さんチックなマンドラゴラ。

 根っこを切ると艶やかな声を出す。


「よし……これで終わりだな」


 マンドラゴラの根っこ切り作業は終わった。

 このマンドラゴラの根っこはこのまま生薬として使われたり、乾燥させたりして薬となる。


 他にも高麗人参的な食べ物として使われることあるらしいが今は薬としての用途が優先される。

 マンドラゴラ本体の意思を聞きながらできるけど神経を使う作業だったので体も凝り固まってしまった。


 ショウカイはカゴの中に最後のマンドラゴラの根っこを優しく入れるとグーッと腰を伸ばした。


「失礼します、ショウカイさん」


 ドアがノックされて低い声が聞こえてくる。

 この声はイブシュレアだ。


「ん……はいはい。


 ちょっと待ってくださいね」


 お姉さんマンドラゴラを他のマンドラゴラと一緒にしてショウカイはドアを開けて部屋を出る。

 魔人族であるイブシュレアがマンドラゴラと鉢合わせるとまたとんでもないことになってしまうからショウカイの方が部屋を出る形になっている。


「どうかしましたか?」


「ジザルが目を覚ました」


「本当ですか!」


 ジザルデスは身をていしてロドラレアを守った。

 そのおかげでロドラレアは無事だったのだけどジザルデスのダメージはデカかった。


 もう起きないんじゃないかと心配だったが杞憂に終わったようだ。

 ショウカイたちはジザルデスのところにお見舞いに向かった。


「お嬢……」


「シー、今寝たところなので」


 病室に行ってみるとベッドに横たわるジザルデスの横にベッドに突っ伏して寝ているロドラレアがいた。

 ロドラレアはジザルデスの側にずっといて看病していた。


 油断した自分が悪いのだと片時も側を離れなかった。

 ロドラレアを守ったジザルデスを見ればジザルデスがロドラレアにどんな思いを持っているのか想像に難くない。


 ロドラレアもジザルデスが目を覚ましたのが嬉しくて、泣いちゃって、疲れていて、そして寝てしまった。

 ジザルデスも病み上がりで目を覚ましたばかり。


 本当に大丈夫そうなことは確認できたのでショウカイたちはまた出直すことにした。


 ーーーーー


「本当に申し訳ありません」


「何を謝ることがあるんですか。


 ジザルデスさんはよく戦ってくれましたよ」


 相手は実力者だった。

 人数差をものともしないで広く周りを見て戦う魔法の黒ローブはまだまだ本気ではなかった。


 そしてジザルデスは狡猾な罠からロドラレアを守った。

 労いこそしても責めるつもりは毛頭なくて謝る必要なんてない。


 爆発の中心により近かった左肩付近は治しきれずに少し火傷の跡は残ってしまうがそれ以外のところはキレイに治った。


「それで本当に大丈夫なの?」


「もちろんだ。


 俺はショウカイさんを案内する使命を仰せつかった。


 最後まで遂行せねばならない」


 今後どうするかについてショウカイはマンドラゴラを他に移す作業や根っこの刈り取りについて協力するつもりなことをジザルデスに話した。

 そんなに離れたところに行くのではなく作業が終われば戻ってくるし大人しく休んでくれていればいいと思っていた。


 なのにジザルデスはショウカイについていくと言う。

 ケガは治ったし不調なところはない。


 ショウカイを案内して守れと言われているのだからその使命を最後までやらねばならないと譲らないのだ。

 ジザルデスの思いとしては自分やロドラレアを殺しかけた魔法の黒ローブを許せず、不甲斐ない自分もまた許せないという思いもあった。


 当然ロドラレアは止めるのだけどショウカイやイブシュレアは男としてジザルデスの気持ちが分からなくもない。

 ショウカイにもジザルデスに対して命令する権利はない。


 むしろ咄嗟の判断能力はとても高いことは分かったのできてくれるとありがたいとは思う。


「ショウカイさん、こんな俺ですがご迷惑でなければご同行させてください」


 ロドラレアの視線がショウカイに突き刺さる。


「…………ジザルデスさんがいなきゃ誰が魔人族と仲介役をやってくれるんですか」


 その視線の意味に気づかないわけじゃないけど真っ直ぐに目を見てくるジザルデスの視線もまた強かった。


「なら私も行く。


 まだジザルだって全快じゃないんだよ。


 私の目の届かないところで倒れたりしたら許さないんだから!」


「……お嬢が行くなら私も行きましょう」


「ではお願いします」


 そういうことでマンドラゴラの植え替え作業には3人がついてきてくれることになった。


 ーーーーー

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