叫べ!1
分かったことは少ない。
相手が人族であったことはみんな見ているので確定である。
黒いローブの連中の1人を捕らえられたと思ったが最後の最後に魔法の黒ローブにやられてしまった。
けれどそいつが持っていた袋の中からマンドラゴラが出てきて、黒いローブの連中がマンドラゴラ泥棒であることは確定であった。
ただそれ以外のことは何も分からないのである。
尋問できる相手もおらず死体と袋のマンドラゴラの他に目ぼしい証拠もない。
ひっそりとショウカイがマンドラゴラに聞いてみたけどどのマンドラゴラも気を失っていて何も覚えていないと言っていた。
あれほどの実力者がどこから出てきたのか。
何者で、何が目的であんなことをしているのか。
瞬間移動をするスクロールは転移先の準備も必要で作るのにもかなりの手間もかかる。
ただの泥棒が持っているものじゃない。
いや、何者なのかの予想は立っている。
そこまでの人材を持ち、そこまでの準備ができる相手など限られてくる。
ヨーキラ族の領地の北側にある王国が1番の可能性がある相手だ。
元々武闘派な国であり魔人族の領地に進出することにも意欲的。
マンドラゴラの根を刈るための人など一部の交流はあるがそれは民間レベルでの交流の話で国レベルにおいてはほとんど交流がないと言っていい。
古株の戦力は把握しているが若手の育成にも精力的な北の国の若い戦力は把握しきれていない。
魔人族が知らない強者がいても全くもっておかしい話ではないのである。
「こ、これぐらい?」
「もうちょっと大丈夫です」
「これぐらい?」
「それぐらいです」
「ほいほい」
確証はないが北の国の工作の可能性が高い。
そのために魔人族たちはこのことを重たく受け止めてひとまずの対策を取ることになった。
領内の警備を集めてマンドラゴラの群生地を護衛することにした。
敵の戦力が思いの外に高いことも分かっているのでかなり厳しいけれど何もしなければまた盗まれてしまう。
そしてさらにショウカイには小規模な群生地のマンドラゴラを掘り起こして別の群生地にまとめる役割をお願いされた。
やはり人手が回り切らないのでしょうがない対策としてマンドラゴラに移住をお願いすることになった。
ただ魔人族からすると言葉も通じない相手でショウカイのリスクは高く、難易度も非常に高いお願いである。
ロドラレアから現在領地を任されている2番目の兄に話がいき、高額の報酬や魔人族の協力も惜しまないことなどを約束して引き受けることになった。
ショウカイにとってはマンドラゴラと意思の疎通が取れるので魔人族が考えるよりも難易度は高くない。
今はまだ目を覚さないジザルデスの回復やマンドラゴラをどこからどこに移すのかの計画がまとまるのを待ちながら取り戻したマンドラゴラの根を切っていた。
マンドラゴラの根っこは体の一部であるが伸びすぎると不都合が出てくる。
ざっくり言えば爪みたいなものであり一定のところから先の部分は神経も通っておらず切り取ってもらったほうが都合が良いのである。
経験のある人ならどこまで切り取れるか感覚で分かるのだけどショウカイはマンドラゴラの根を切るのが初めてだ。
あまり深く切り取ってしまうとマンドラゴラにとって痛みを伴ってしまう。
だけどショウカイにはそこらへんも簡単にクリアする方法がある。
マンドラゴラに直接聞けばいい。
どこら辺までオッケーなのか、どうやったらいいのかをマンドラゴラに聞きながら作業を進める。
魔人族が近くにいるとマンドラゴラが怯えてしまうのでショウカイたちしかいないのでマンドラゴラと会話していても誰に見られることもない。
別にこの作業はショウカイでなくてもいい。
アステラも魔物であるためか魔物の言葉は話せなくても理解はできるので作業を手伝ってくれている。
ノワールやミクリャは切った根っこを拾ったりお手伝いをしてくれている。
スーやシュシュは久々に自由になったのでのびのびとしめマンドラゴラとお話をしていた。
「うんっ!」
それやめてくれないかなとショウカイは思う。
不思議なことにマンドラゴラって奴はみんな人型をしている。
しかもなぜなのかどのマンドラゴラも可愛らしいのだ。
中にはマンドラゴラだなって感じのしわくちゃおばあちゃん風もあるけど結構多くが若い女性風。
魔人族には分からないだろうけど声の感じも可愛いマンドラゴラが多くて、根っこを切られるのが気持ちいいらしくて少しばかり切られる時にセクシーに聞こえる声を出すのだ。
別にマンドラゴラに発情はしないけどちょっとお耳に悪い。
パナノは取り戻したマンドラゴラと一緒にいる。
群生地は分かれているけどマンドラゴラ同士仲が悪いこともなく、きっかけがあれば普通に一緒になったりすることもあるらしい。
「あの男は強かったな」
ショウカイが前に出て戦うことはなかったがあの魔法の黒ローブの実力は相当なものだった。
「そうですね……生前の私に匹敵するほどの実力者だと思います」
魔物化するにあたってかなり魔力を使ってしまったアステラはそれなりにパワーダウンしている。
生前のアステラはもっと強く、そのアステラにも引けを取らないほどに魔法の黒ローブは強かった。
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