可愛い根っこを追いかけて9
一応人型のまま気絶したので大丈夫だと思うが万が一擬態スキルが解けてウルフに戻ったら困る。
女の子をそのまま地面に寝かせていられないと言ってテントを用意してその中にノワールを移した。
ノワールの面倒はアステラ、ジザルデスはロドラレアに任せる。
そしてショウカイはパナノのところに戻る。
「そんでさー、私が言ってやったんだ、後ろだ!ってね。
そのおかげでノワールは後ろから迫り来る敵に気がついて、こやって相手をぶっ飛ばしたんだ」
「わぁ……すごいです!」
スーが拳を振り回しながら熱く何かを語っている。
パナノはそれを熱心に見つめている。
何を話しているのか知らないけどスーは非常に得意げに見える。
「スー、何を話しているんだ?」
「あっ……」
「スーさんは皆さんのリーダーなのですね!
すごいです!
広い視野を持ち周りを見回し皆さんに的確な指示を出すブレーンであるのですね!」
「ほーん……」
「あ、あはは……」
スーは突き出していた拳を戻してポリポリと頬をかく。
いいように言ったみたいでパナノは憧れに近いような視線をスーに向けている。
「まあうちの頭脳だからな」
「はっ……」
「やっぱりそうなんですね!」
別にここで否定してやることもない。
目を輝かせるパナノを落胆させるのもかわいそうなので話に乗っかってやるショウカイ。
ショウカイの意図を感じてスーも目をキラキラとさせる。
周りに良く見せたいと言う気持ちは分からなくない。
パナノの機嫌をとって憧れられてくれれば話もしやすかろう。
「ま、まあ、私が仕えるべきというか、守ってあげるべきはショウカイだから!
私ほどじゃないにしても私が側にいてあげる価値がある人間っていうか?
守ってあげたくなっちゃうっていうか?」
「さすが大妖精ですね!」
大妖精?
ショウカイの視線が突き刺さってスーの顔が引きつるけどパナノはそのことに気づいていない。
「ふぅ……それでパナノ、話を聞きたいんだけどいいかな?」
「はい……お願いします、助けてください人間さん」
「何があったのか君は見ていた?」
「私は土の中にいて見てはいません」
「そうか……」
「でも何があったのかは分かります」
「わかるのか?」
「私たちマンドラゴラは近くにいるマンドラゴラや植物と繋がっているんです。
完全ではなくとも何があったのかは他のマンドラゴラを通じて視えていました。
完璧じゃないですけど」
「そうか!
じゃあ犯人の顔とか……」
「分かりません」
「えっ?」
「みんな……みんな急に意識を失ってしまいました」
平和だった。
しばらく人族が来なくて根っこが伸び放題になっていること以外は特に問題もなく過ごしていた。
そろそろ根っこをなんとかしなきゃ抜けなくなってしまう、なんて冗談を言いながらマンドラゴラたちは日の光を楽しんでいて、生まれて日が浅いパナノは土の中で穏やかに成長を待っていた。
そんな時に人族がやってきた。
「人族……なのは間違いないのか?」
「私たちは魔人族から不思議な圧力を感じてしまいます。
だから魔人族だったら分かります」
フードを深く被った数人の人族。
他のマンドラゴラの目を通しての記憶なのでかなり朧げで曖昧。
マンドラゴラたちは警戒と期待をする。
顔も出さない人族に警戒、根っこを切ってくれるかもしれないという期待。
それでも気に入らない人なら叫ぶつもりでマンドラゴラは身構える。
ある程度のところまで近づいてきたところで人族の1人は両手を上げた。
次の瞬間マンドラゴラたちの意識が無くなった。
何が起きたのか分からなかった。
土の中にいたパナノには影響がなかったけれどマンドラゴラたちの意識がなくなって繋がりが途絶えてしまった。
他の植物とも繋がっているが他の植物には目もない。
魔力から人族が近づいてくるのが分かった。
やがて土を掘る音が聞こえてきて、仲間たちが取り上げられていくのを感じた。
「後は……気づいたら私だけ」
「怖かったな」
さめざめと泣くパナノの頭を指先でそっと撫でてやる。
「……妖精も家族がさらわれることがあるから気持ちは分かるよ。
私からもお願い!
マンドラゴラみつけて!」
妖精も妖精の粉だったり妖精そのものだったりが目的で狙われることがある。
いやスーだって何人か友人を失ったことがある。
パナノの気持ちは痛いほどに分かった。
スーがギュッとパナノを抱きしめる。
「まあ……できる限りのことはするよ」
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