可愛い根っこを追いかけて7
「それこそマンドラゴラを一斉に無力化出来るほどの実力があるならマンドラゴラ泥棒をするまでもない人であるはずんだ」
実際問題不可能ではなく、例えば国の中でも最高峰の実力者クラスなら出来るだろう。
ただしそんな実力者はどこへ行こうと重宝されるのでリスクを冒してマンドラゴラを盗み出すなんてことをしなくてもいい。
きっとマンドラゴラの根っこなんて言えばいくらでも手に入る。
より大きな利益を得られる行為ならともかく管理の難しいマンドラゴラを盗むなんて犯罪に手を染めてもそのメリットがなさすぎる。
「そんな実力者がそこら辺にホイホイいるものでもないし、いてもやる必要がない。
だから現実的に考えると魔法でどうこうするのも考えにくいんだ。
何人か死ぬこと覚悟で何人かそこそこのやつを用意するとか考えられるけどそうなるとかなり大規模な組織になってしまう……」
ロドラレアは悩ましげに頭を振る。
大規模な組織にしてはその痕跡も見つけられない。
どの話にしても推測の域を出ない。
「とりあえず現場に行ってみてだ。
私たちが新たな視点で現場を見れば何か見つかるかもしれないしな!」
ーーーーー
「……これはひどいな」
マンドラゴラの管理を行っているヨーキラ族傘下の部族に案内されて盗まれたマンドラゴラの群生地に来た。
現場は調査のために保全されているのだけど一目見てそのがマンドラゴラが盗まれた現場だと分かる。
至るところが掘り返されて穴が空いている。
穴の数を見ればどれだけマンドラゴラがいたのか分かってしまう。
現場を見ると数分で終えられるとはとても思えない。
これだけ見るなら意外と大人数で作業したようにもショウカイには見える。
ただ現場を見ても話に聞く以上のことは何も分からない。
「まあ……分かってたことだけどね」
調査だって素人がやっているのではない。
ちゃんとした人たちが調べて何も分からず、普段管理に当たる人たちだって必死に何かを探したはずだ。
それでも何も掴めないのにショウカイたちがパッときてサラッと見て何かが分かるほど甘くない。
「助けて……」
「ん?」
「しょうがないから別の群生地に行って見張ってみようか。
根っこも刈り取ってほしいって言ってたし」
「お願い……助けて」
「ショウカイさん、どうかしました?」
「いや……なんか」
弱々しい声が聞こえてきた。
それは穴だらけになったマンドラゴラの元群生地の方から聞こえてきたように思えてショウカイはキョロキョロと周りを見回した。
その様子をジザルデスが不思議に思う。
「これ、魔物の声だよ」
服の裾からこっそりと顔を出したスーがショウカイに耳打ちする。
「何か助けを求めているであるな」
「助けて……助けて……」
「ちょっとそちらは……」
「待ってください、何かがあるのかもしれません」
フラフラとマンドラゴラの元群生地に向かうショウカイ。
案内役の魔人族が現場の保全のためにショウカイを止めようとするがそれをジザルデスが止める。
困ったようにロドラレアを見るがロドラレアもどうせ保全していても何も分からないのなら任せてみようとゆっくりとうなずいた。
今この場において1番権力を持つのはロドラレアなので案内役の魔人族も渋い顔をして引き下がる。
「どこだ……
ここだ!
ジザルデスさん!」
「なんでしょうか?」
「シャベルをお願いします!」
「シャベルを?
……分かった」
ジザルデスは荷物の中からシャベルを取り出してショウカイに渡す。
ショウカイはシャベルを受け取ると慎重に土を掘っていく。
ある程度掘ったら今度は小さいスコップに持ち替えて土を払うように掘る。
「これは……!」
最後は手で土を払って穴の中に手を伸ばす。
そして土の中にあったものをそっと手のひらに乗せて持ち上げた。
「だ、大丈夫か?」
それは小さい人に見えた。
だけどよく見ると人じゃない。
サイズ的には妖精のスーと同じくらい。
でもスーの体は人と同じ皮膚感があるがこの小さい子の皮膚の感じはなんだか皮膚ではなく大根のような感じがしている。
だけど形は小さい人なのだ。
可愛らしい女の子のような姿をしていてシクシクと泣いている。
手は手の形だけど足は足先が根っこの形。
「それは…………マンドラゴラじゃないか!」
何事かとショウカイの手の中を覗き込むジザルデス。
それを見てジザルデスは驚きに目を見開いた。
「マンドラゴラ。
これが」
シクシクと泣いていたマンドラゴラがふと顔を上げ、その目が覗き込んだジザルデスと合った。
「マズイ!」
ショウカイが掘り起こしたものがマンドラゴラだとは知らず不用意に覗き込んでしまった。
マンドラゴラと魔人族はなぜなのか相性が悪い。
地面に植わっているマンドラゴラでもあまり近づくことはできないのにむき出しになったマンドラゴラと思い切り目が合ってしまった。
マンドラゴラの目から涙が溢れ出し、口を大きく開けて息を吸い込む。
「ショウカイさん!」
自分のせいでショウカイを傷つけさせてはならない。
とっさの判断でジザルデスは両手を伸ばしてショウカイの耳を塞いだ。
最後まで読んでいただきましてありがとうございます!
もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、
ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。
評価ポイントをいただけるととても喜びます。
頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。
これからもどうぞよろしくお願いします。