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可愛い根っこを追いかけて6

「ワッハッハ!


 いざ行かん、マンドラゴラのところへ!」


「父親である族長が戦争に行ってお嬢も元気がありませんでしたが今日ばかりは楽しそうで何よりです」


「その元気が俺は怖いよ……」


 三者三様の魔人族たち。

 マンドラゴラの生息地はノスターシャの森と呼ばれる広い森林の中にある。


 なんでも次期族長候補はロドラレア以外にも数人いるらしく、意気揚々と次期族長と言っていたがロドラレアは別に1番の候補でもないらしい。

 1番の候補である兄は戦争に父親である族長と共に向かい、2番の候補である兄が今は領地を仕切っている。


 マンドラゴラの問題にも当たっているが何せ領地経営をやらねばならない都合上かかりきりにもなれない。

 そこで出てきたのが3番目の候補であるロドラレア。


 これを解決したところで1番の候補にはなれないだろうけれど問題解決能力の証明にはなる。

 族長になれなかった時の身の振り方なんかも考える必要があるのでこうして功績を重ねておけば後々役にも立つと考えていた。


 だからといって具体的に何かマンドラゴラ泥棒を捕まえる手立てがあるのでもない。

 そもそも手がかりがないのだからしょうがない。


 ロドラレアはショウカイたちがマンドラゴラに警戒されないのならマンドラゴラの集まっている大きな生息地に張り込みをさせて犯人を捕まえようとしているみたいだった。

 ちゃんと兄に許可は取っているので調査は問題なく、マンドラゴラの根っこの採取もむしろやってくれと言われた。


 事前に製薬会の支部によってマンドラゴラの根っこを採取するためのスコップやハサミなんかを借りてきた。


「マンドラゴラを盗むとはな……命知らずにもほどがある」


 ジザルデスは深いため息をついた。

 命知らずというのにも理由がある。

 

 第一にマンドラゴラの危険性がある。

 抜かれたマンドラゴラの叫びは非常に危険で脳がやられてしまう。


 気に入らない人なら触るだけでも叫ぶし、まして引き抜いて持ち去ろうとするならほぼ確実に叫ぶはず。

 音を遮断すれば防げないこともないけれども本当に無音になるぐらいに遮断しないといけないのだ。


 ちょっと耳栓したぐらいじゃ防ぐことなんてできない。

 魔人族としてはマンドラゴラに嫌われていても共存を目指しているので叫びを無効化する術を研究はしていない。


 だがリスクの軽減にもなるしやろうとした人がいなかったわけでもないから難しさは理解している。


 第二にやはりマンドラゴラを盗むことは魔人族を敵に回すことになる。

 マンドラゴラの根っこは比較的珍しい素材でありながらも他の魔物の素材と違って安定的かつ安全に採取できる。


 魔人族の国にあるマンドラゴラの生息地は大規模で魔人族としてみれば資産と言っても過言ではない。

 魔人族の流行り病の治療薬の材料にもなるし魔人族が守っているものなのだ。


 それを盗むのならたとえ相手が同胞だろうと敵になる。

 あとは戦争状態の混乱期に火事場泥棒的に盗むなんてかなり印象も悪い。


「なんの証拠もないけど奇妙な点もあるんだ」


「奇妙な点?」


「証拠がなさすぎるんだ」


 ロドラレアは額のシワを指先で伸ばすようにしながら話し出した。


「これまでの調査で何も出てこなかった。


 それだけじゃなくていつ盗まれたのかも分からない。


 マンドラゴラの管理の都合でおおよその時間は分かるのだけどそれ以外は全く」


「奇妙というかすごい手際の良さだな」


「手際はいいんだけど私の疑問としてはマンドラゴラの叫び声の一つも聞こえなかったことなんだ。


 どんな手段を使ったのか知らないけど叫び声が全くないのもおかしい。


 マンドラゴラの叫びはかなり遠くまで聞こえるから1体でも叫ぶと管理をする人には聞こえるはずのに」


 しかもマンドラゴラは気に入っている相手でも叫ぶ。

 というかむしろ気に入れば気にいるほど相手に害はない喜叫という喜んでいるような叫びを上げることもある。


 つまり気に入ろうと気に入らまいとどちらにしてもマンドラゴラの叫び声は聞こえるはずなのである。

 それなのにマンドラゴラの叫びすらなかったのは異常と言える。


「マンドラゴラの口を塞ぐことだってそんなことしようとすれば気づかれて叫ばれるし、マンドラゴラもたくさんいるから1体だけじゃダメ。


 一気に全体を防がなきゃいけないんだ」


「俺もマンドラゴラの根が必要だから作業を見学したことがあるが魔人族である俺の姿が見えるだけマンドラゴラはざわついていた。


 そんなに大きな群じゃなかったがそれでもかなり警戒心は高かったな」


「こう、魔法とかで沈黙させられたりしないのか?」


「魔法か……出来ないことはないが難しいな。


 もちろん魔法でどうにかすることも過去に試されなかったわけじゃないよ」


 当然にこの世界にある不思議な力である魔法でどうにかするということも試されてきた。

 物に頼る方法よりもそちらの方が先に考えられてきたかもしれない。


 だけどそれでどうにかできるほどマンドラゴラも甘くない。


「そもそもマンドラゴラは魔物だ。


 強い魔物ではないが魔法に対する抵抗はただの植物じゃない」


 倒すだけなら魔法でも可能だけど今回は倒したのではなくマンドラゴラを掘り起こして連れていったのだ。

 ただマンドラゴラを無力化することはできても大量のマンドラゴラを同時に無力化するのは決して容易くない。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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