厄介事の気配4
他2人のお偉方に目を向けるけど苦い顔をしているだけで止めに入る様子もない。
現会長と元会長を止められるはずなどなかったのである。
「アレってなんですか?」
「これぐらいの季節になると毎年魔人族の間で流行る病があるんだ。
強い風邪のようなものだけど感染力が強くてな。
毎年予防薬と治療薬を用意して置くのがいつものことなんだが……魔人族ではなく人族がいい素材……マンドラゴラの根が足りないのかもしれない」
ジザルデスも薬師としての教育は受けている。
だから会話の中身を聞いていればなんのことなのか大体分かる。
当然この時期に持ってくる薬だからその薬もジザルデスが運んできたものの中にあった。
「マンドラゴラの根ですか?」
「そうです。
うちでももうストックは少ない……これに関しては昔から人族からの輸入に多くを頼っていたからな」
「この国にマンドラゴラはないのか?」
「いるにはいるんだが……なぜかマンドラゴラと魔人族は相性が悪い」
「相性が……?」
「どうだ!」
「はっ?」
言い争いをしていたはずのデラインスがいつの間にか目の前にいてショウカイは驚く。
何がいきなりどうだ!なのだ。
「無礼は謝罪する。
マンドラゴラの根を取ってきてくれれば闘部の偉いやつにワシからの推薦の手紙もつけて紹介してやろう。
白点病の治療薬は製薬会にデカイ貸し1つ、これでどうだ?」
言い争いをしているうちに話がまとまった。
どうしても今マンドラゴラの根が必要な製薬会と戦争に関する情報が必要なショウカイ。
ここで貸し借りなしだとすると白点病の治療薬についてはショウカイに大きな恩義を作ることになる。
もちろん薬として認められれば特許料などを支払うが長年白点病は魔人族を悩ませていたものなのでその功績は大きくお金だけでは足りない。
だからショウカイに借り1つ。
無礼だった分も合わせてどでかい借りだ。
「頼まれてくれんか?」
「ショウカイさん、受けることはありませんよ」
「うーん、でもマンドラゴラの根がなきゃ魔人族が困るんだろ?」
「多少具合が悪い人が多くなる程度です」
「そんな簡単に考えるでない。
予防薬が広まってから久しく若いもんはなんてことはないように思っているが昔はこれでも多くの人が亡くなった。
決して油断をしていいものではないのだ。
ワシらとて薬を用意する責任がある。
……頼む、この通りだ」
「どうしますか?」
「どうしますかったって……」
「ご判断はお任せします」
深く頭を下げるデラインス。
困惑するショウカイ。
ショウカイがどんな判断をするにしても協力するつもりのジザルデス。
「製薬会としてもお願いします。
ショウカイ様がどのようなお立場の方なのか分かっておりますがいわゆる緊急事態ですので……」
「はぁ……どこに行けばマンドラゴラがあるんですか?」
なぜこうスッと物事が進まない。
なぜ何か厄介事が舞い込んでくる。
そんな疑問にショウカイはため息をついた。
ただ厄介事は厄介事なんだけど断るつもりが自分の中にないことがなぜなのだろうかと1番の疑問であった。
「なんだかんだショウカイ様は優しさで出来ているであるな」
「押し付けられ体質なだけだよ……」
押し付けられてもノーと断る人はいる。
ショウカイはそうしないのだからやっぱり優しいのだ。
「文句を言いながらも引き受けて相手を助ける、ワタクシはそんなショウカイ様が好きであるよ」
「……あんがと、シュシュ」
それでいいではないか。
平坦な道をただ進むよりもそこに何かがあった方が面白い。
ショウカイの行く道には助けを求めるものが数多く現れ、ショウカイはその手を振り払うことをしない。
時にそれがとても困難で大変なことであってもショウカイは諦めずに助けようとしている。
弱肉強食の厳しい世の中に1人ぐらいこんなお人好し、魔物好しな人がいたっていいじゃないかとシュシュは思った。
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