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厄介事の気配3

「何で知りたいのか知らないが今戦争になっているユニシアとは元々仲が良くない」


 渋い顔をしたデラインスが口を開いた。


「ここいらじゃあまり聞かない話だがユニシアと我々は肥沃な土地を巡っての遺恨がある」


「それは……私も聞いたことがありません」


「今は特に争いが起きていないからな。


 しかし昔はそれで小競り合いが起きていたこともあるんだ」


 短気ではあるがデラインスは物知りで、製薬会の元会長でもあって情報も色々と知っていた。

 現在ビクニシアンとユニシアの間には肥沃な土地が広がっていて遥か昔から国規模までいかなくても小さな争いが絶えなかった。


 そのために当時の王たちは話し合いの場を設けてその土地に走っていた川を境にして国境を定めた。


「だかまあその川もおとなしい川じゃなかった」


 その川はよく氾濫した。

 だから周りの土地も肥沃だったりするのだけどある時その一帯が沈みそうになるほど氾濫を起こした。


「その結果川の位置が変わってしまった。


 こちらに大きく有利になるようにな」


 川を境界にすると決めた以上はユニシアも不満を抱えながらも何も言うことができなかった。


「だからあの国とはいつ戦争になってもおかしくない恨みはある。


 ただこちらの土地で取れたものを安く取引するうちに個々の関係においては改善しつつあったのだがな……」


 デラインスはゆっくりと首を振る。

 製薬会としてもユニシアとの取引はあった。


 過去の遺恨はともかく今の人族と魔人族の関係はそんなに悪くなかったはずなのにとデラインスは思う。


「無理矢理理由をつけようとすれば出来る。


 言えるのはこれぐらいだ。


 それにしたって向こうが何かの理由をつけられるというぐらいでこちらからの理由にはならん」


「教えてくださってありがとうございます」


「もっと知りたいならやはり上の連中……戦争のことなら戦闘部族をまとめ上げている闘部と言われている連中に聞いたらいいだろう」


 なんだかんだと答えてくれたデラインス。

 ついカッとなって変にあざけるように言葉を吐いたことを反省した。


 人族の国と戦争はしているが人族が皆悪いのではない。

 冷静になってみればショウカイが何かをしたわけではない。


 それに白点病の治療薬の製法まで持ってきてくれたという。

 魔人族と敵対するつもりならわざわざ持ってくる必要なんてないものだ。


「ただしツテがなければ魔人族でもあってはくれないだろうな」


「何が言いたいんですか、デラインスさん?」


「ワシならツテがあるということだ」


「だからそれをどうしたいんですか?」


 ジザルデスに苛立ちが見える。

 ずっと感じていた。


 どうやらジザルデスは製薬会、あるいはデラインスを好ましく思っていないようだと。


「薬草谷が死の谷となって人が帰ってこないようになってから久しく、その上人族と戦争になって当事国以外とも国交が断絶してしまった。


 いくつか必要な薬草が品薄でな」


「私たちの客人に何をさせるつもりですか?」


「なに、無理にとは言わない。


 ただ少しばかり手を貸してくれたらワシのツテを紹介してやろう」


「さんざんこちらを疑うようなことを言っておいて……」


「ふん、質問には答えた。


 だからワシとお前さんの立場はもう対等なんだ。


 そちらの願いを聞くならワシの願いも聞いてもらわねば不平等だろう?」


「なら白点病の治療薬は製薬会では諦めるんですね」


「むっ……それは…………」


「こちらにはまだ切っていないカードがあるんですよ。


 対等じゃない」


「ぐぅ……」


「はぁ……デラインス、あなたは会長を退いたのに前に出たがる癖は治りませんね。


 少しは黙ることも覚えてください」


 ハビアンスが深いため息をつく。


「ハビアンス!」


「本当にいい加減になさってください!


 あなたのその尊大な態度が製薬会の分裂を生んだのでしょう!」


 ギャーギャーと言い争い始めるデラインスとハビアンス。

 内輪揉めはよそでやってくれとショウカイはため息をつく。


 話を聞いているとデラインスは長いこと製薬会の会長を勤めていた。

 元は優れた薬師で真面目で不正なんかも許さない性格を買われて役職について、そのうちに会長にまで上り詰めた。


 しかし真面目が故に融通が効かず堅物で年を取るにつれて真面目さが仇となり始めた。

 未だに薬に関する利権を製薬会が握っているので権威は大きいが薬草谷であった死の谷に入れなくなって希少な薬草の流通が減って、人族の薬も入ってくるようになって製薬会も岐路に立たされていた。


 古いやり方に固執するデラインスは若い人から反発を受けた。

 そうして製薬会とは別に製薬会を離れた若い人で作ったフェデリエーラという組織が設立された。


 その責任を取ってデラインスは会長を辞任してハビアンスが会長に就任したのだけどすっかり凝り固まった考えになってしまったデラインスの暴走はなかなか止まらない。

 デラインスも自覚はしているのだけど長年の習慣は抜けないのである。


「どの道アレは必要だろう!


 もう流行り始める季節だがストックしてある分だけでは足りない!」


「そうですが彼は外部の人間、ヘビス族の客人です」


「適材適所、人族ならちょうどいいだろう」

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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