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厄介事の気配2

 冷たい目をしてジザルデスが言い放つ。


「なんだと?」


「行きましょうか、ショウカイさん。


 頭の固いジジイに白点病の治療薬の作り方をくれてやる必要もないです」


「白点病の治療薬だと?」


「別に新しく薬を扱う組織がありますのでそちらに行きましょう。


 情報はもっと戦場に近いところに行けばいい」


「おいっ、ちょっと待つんだ!」


「なんですか?」


「白点病の治療薬とはなんだ。


 まさか新しく開発したのか?」


 白点病は魔人族にとって治す方法がなく感染力も強く致死率も高い脅威となる病気。

 その治療薬と聞いて男性の老人も居ても立ってもいられない。


「ヘビス族ではなくショウカイさんが持ち込んでくださったのです」


「なんだと!?」


「あなたは今魔人族の救世主になるかもしれない人を公然と信頼できないと言い放ったのですよ」


「なっ……!」


 実はこの製薬会に薬を持ってきたことを報告するついでにカレンデスが開発した薬の製法を申請してもよかった。

 しかしジザルデスはあえて申請を先送りにした。


 こうなる可能性も考えていた。


「お前さん薬師なのか?」


「いえ、俺は違いますけど……」


「ならどうして白点病の治療薬を。


 人族にはあまり流行らない病気だろう」


「それは……」


「お待ちください。


 先ほども言いましたがあなたは我々の客人を信頼できないと言い放ちました。


 なので我々はあなたを信頼しませんのでお話しすることはありません」


「なんだと!


 この若造が……」


「デラインスさん、もういい加減になさってください」


 これまで黙っていた女性の中年が口を開く。


「何だと!


 ハビアンス、お前さん……」


「もうあなたは会長ではないのですよ」


「だからって……」


「会員としての資格も剥奪されたくないのならそれ以上無礼はおやめください。


 今の会長は私です」


「ぐっ……」


 デラインスが顔を真っ赤にする。


「申し訳ありません、ヘビス族のお客人。


 正直な話魔人族は今現在人族と仲が良くありません。

 私も信頼してよいか迷って静観してしまいました。


 無礼をお詫びいたします。

 どうか広いお心でお許しください」


「治療薬の話を出したからでしょう。


 許す必要はありません」


「ジザルデスさん、そのようなことは……」


「ないと言い切りますか?」


「…………そのような思惑もないことはありませんが失礼を働いてしまったことは確かですので」


 品の良さそうなハビアンスにもジザルデスは厳しい態度を崩さない。

 なぜか両者の間に火花が散っているように見える。


「聞きたいことがあるなら答えましょう。


 ですのでその治療薬につきましても善処願えればと」


「それを決めるのはショウカイさんですが質問に答えていただけるならひとまず答えていただきましょうか」


 ジザルデスに促されてショウカイも席に着く。

 同じテーブルに着くまで長かった。


「改めて製薬会の会長を務めさせていただいています、ハビアンスです。


 それでお聞きになりたいことは何でしょうか?」


「戦争についてです」


「戦争?」


 ハビアンスだけでなくデラインスも含めた4人の顔が曇る。

 戦争の話は基本的に触れてはならないタブーな事項。


 ましてや人族が魔人族に何を聞きたいというのか。

 グッと警戒度が上がった気がする。


「戦争の原因についてご存知ですか?」


「戦争の原因だと?


 何だってそんなもの聞きたい?」


 たまらずデラインスが口を出す。


「……それは」


「答えなくても大丈夫です。


 理由を知る必要は今はないでしょう」


「ジザルデス……昔は可愛がってやったというのになんだその態度は!」


「嫌なら構いませんよ」


「デラインス!」


「ハ、ハビアンス……」


 ハビアンスに険しい顔で叱責されてデラインスが驚いた顔をする。

 元々怒りやすい性格のデラインスであるけれど戦争で周りがピリピリしていたり歳をとって余計に感情の抑制が効かなくなっていた。


 質問に答えると言ったのだから質問に質問で答えるのはマナー違反である。

 これについては製薬会側が悪い。


「ゴホン、戦争の原因でしたね。


 私が聞いている限りでは人族がいきなり戦争をふっかけてきたものだと聞いております。


 いきなり始まった戦争で最初は向こうがかなり優勢で事情になど気をかけている暇はありませんでした。

 今となってはだいぶ押し返して均衡状態になりましたがもうあまり発端を気にかける人もいません」


「ただいきなり兵を起こして攻め込むなんて魔人族だって気づかないわけじゃないでしょう?」


 兵を動かせば目立つ。

 いきなり攻め込んできたというのは分かるけれどなんの前兆もなかったはずがない。


 兵を動かせる正当性を無理矢理でも主張出来るようなきっかけは必要だ。


「確かにそうですね……ですが誰も気にしてこなかったきっかけの話はこんなところまで聞こえてはきません。


 それを知りたければ国の上層部にでも聞くしかないでしょうね」


 戦争が始まってしまったらそのきっかけなどどうでもいい。

 勝つか負けるか、それが重要なのだ。


 人族は魔王が攻めてきたといい、魔人族は人族が攻めてきたという。

 どこまでも食い違い、平行線を辿る。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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