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カレンデスの故郷4

「ちょ……多いですね」


 他にも色々研究していたカレンデス。

 暇と有り余るほどの薬草はあったのでいろいろな薬を作っていた。


 実際に試す機会には恵まれなかったので効果のほどは確実でないが効果はあるはずだと完成品やら作り方の資料やらも渡した。


「それでお前さんに協力すればいいのかい?」


 手紙にはショウカイへの協力のお願いも書いてあった。


「何をどうするつもりなんだい?」


「俺は……過ちを正したいんです」


 この戦争が欲望によるものなら勇者としてやるべきなのは単純に呼び出した人族側に付くことではなくて何が正しいかを考えて正しい方に付くべきであるのだ。

 そしてそれは魔人族なのではないかと今は考えている。


 まだ魔人族が正しいのかも、もし正しくてもどうしたらいいのかも分かっていない。

 どの道まずは何が正しいのか知ることからだ。


「恩人のためだ、できる限りの協力は惜しまない。


 何を知りたいんだい?」


「実は俺はユニシア側の人だったんです。


 ユニシアでは魔人族の国には魔王を名乗る危険な王がいて、悪虐非道の限りを尽くしユニシアに攻め込んできたことが戦争の理由であると聞かされていました。


 俺はそれに疑問を持って調べているんです」


「魔王だって?


 そりゃおかしなことを言うもんだ。


 私たちにも統一の王が今はいるけど自分達の王のことを魔王だなんて呼びはしないよ」


 クレアデスの顔に驚きが広がる。


「……まあ人族にとってはあまり知らないことかな。


 平和な時代も長かったから混同してもおかしくない。


 魔王というやつはな、魔族の王だ。

 魔人族の王ではない」


「ええと……」


「説明してやろう」


 世の中にはいわゆる人間である人族、職業を持たないが人族よりも自由で強い魔力を持つ魔人族、ケモノの特徴を体に持つ獣人族がいる。

 そしてそれに加えて魔物がいる。


 動物に近いようなものから凶悪なものまで広く全てを魔物と呼んでいる。

 魔族とはつまりは魔物のことである。


 しかし単なる魔物を魔族とは呼ばない。

 強大な力と高い知恵を持つ魔物を魔族と呼ぶことがあるのだ。


 基準としては曖昧だがおよそ人族や魔人族のように意思の疎通が取れるレベルの知能の高さがある。

 自分のテリトリーに暮らし魔物の残虐性もあるが知能もあるのでテリトリーを侵さない限りは攻撃してこないことも多い。


 基本的には魔物の本能に従ってテリトリーから出ない生活を送るのだけど中には魔族の傑物や突出した知恵、野心を抱く魔族がいる。

 そうした魔族が魔族や魔物をまとめ上げて自分のテリトリーを広げたり人族や魔人族などを支配したりしようとする。


 これが魔王である。

 魔物は圧倒的な強者には逆らわずに従う。


 人族だと敵対心が強すぎて力を見せても従わないが同じ魔物である魔族には力を見せつけられると従うのだ。


「だから魔王は魔人族の王ではないのだ。


 仮に魔人族の王が野心を燃やして他国を吸収しようと戦争を仕掛け回ったら魔王と呼ばれても仕方ないがな」


「なるほどです……」


「魔人族もはるか昔は魔族だった、なんて話はあるがな。


 だから神の祝福である職業も与えられていないと言うものもいる。


 だが今の魔人族の王は聡明で善良な王で魔王と呼ばれるような者ではない」


「今回の戦争の発端は分かりますか?」


「ふむ……私たちの部族は薬や薬草の知識が豊富で戦闘に長けた部族ではない。


 戦場からも遠いし正直戦争の話が多く入ってこない。


 チラと聞いたのは人族からいきなり宣戦布告してきたというものだが……実際はどうなのか知りはせん。

 知りたいのならもっと戦場に近いところに行った方がいいだろう」


「戦場に近いところ、ですか……」


 サラリと言うがなかなか難しい。

 森の中で弓矢を向けられたこと忘れていない。


 怒ったり恨みに思っていることなどないけどあれが通常の反応だとすると堂々としていてもこの国の中を移動するのは困難なことである。

 戦場から離れた戦闘向きでない部族でこうなのだ、戦場に近い戦闘部族に遭遇したら一も二もなく襲いかかられるのではないか。


「安心せい、協力すると言った以上ただ放り出すことはせん。


 ただ人族が歩いていれば顔の皮ぐらいは剥がされるかもしれないからね」


「マジですか……」


「ジザルデス、お前さんもそろそろ外を見て回る必要があるだろうさ」


「母さん、まさか」


「この薬の製法を製薬会に伝える必要もある。


 白点病を治せる特効薬は早急に確かめる必要があるからね。


 案内と製薬会への報告をジザルデスにやらせるのはどうだい?」


「まだこいつは若い」


「若いからと何もさせなきゃ何もできない子になってしまうよ。


 魔人族が共にあればいきなり襲われることもないだろう。

 面白い機会だ、ジザルデスの経験にもなるかもしれない」


「…………本人次第です。


 どうする、ジザルデス。

 母さんはお前をショウカイさんの案内役に任せようとしているが」


 イワンデスかジザルデスをジッと見つめる。

 ショウカイたちだけで歩き回って情報を集めるのはおそらく無理。


 けれど魔人族がついていれば敵でないと証明出来るので厳しい目は向けられても拘束されたり攻撃されることはない。

 部族の中にだけ留まれば世の中のことを知らずに終わってしまう。


 だからこうした辺境に住むヘビス族はある程度の年齢になると旅をさせる。

 それも兼ねてジザルデスに案内させようとしているのだ。


「私は……やりたいと思います」

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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