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アラクネもの3

「しかし何もいないな……」


 森の浅いところには今はゴブリンがいるはずなのに、探せど何もいない。

 ノワールにも見つけられないようで申し訳なさそうに尻尾が下がってしまっている。


 お前が悪いわけじゃないと頭を撫でてやる。


 魔物は見つからないけどその分薬草取りがはかどる。

 敵がいないから採取も楽だし森の中には薬草が多い。


 詳細鑑定を使って探しているのだが使い方にも変化があった。

 ただ漠然と使うのではなく意識して限定的に詳細鑑定を使っている。


 草の名前を小さめの表示で視界にあって身近なものだけ鑑定されるように頭の中で思いながら詳細鑑定を使うとそのように表示される。

 表示のされ方など調整しながら何回かやってみて快適に探せるようになった。


 分けて取れるように袋もいくつか持ってきているので慎重に根ごと抜いて袋に入れていく。

 下手すると薬草採取だけで生きていけるかもしれないと思い始めていた。


 その時、近くで爆破が起きる。


 何だか既視感がある。


「ノワール、逃げろ」


 吹き飛んできたゴブリンの死体を見て森にゴブリンがいない理由を悟る。

 ノワールが離れていき、入れ替わるようにサルモスがショウカイの前に姿を現した。


「んんっ? おっ、青年、久しぶりだな!」


 サルモスはショウカイのことを覚えていて軽く手を上げて挨拶する。

 近くにいるのはいいけどなぜピンポイントでショウカイの目の前に来るのだろう。


「どうもお久しぶりです、炎帝サルモスさん」


 確実に目上の人なので今回はちゃんと頭を下げて挨拶する。


「ははっ、俺のことを調べたようだな!」


「はい、とてもすごい人だったんですね」


「そうだろう、そうだろう。

 これでまた1人いたずらにファンが増えてしまったな」


 豪快に笑うサルモス。

 ファンになったとは一言も言っていないがサルモスが満足そうなのであえて否定することもない。


「こんなところで何をしているんですか?」


 炎帝がわざわざ森のゴブリンを倒して回るとは思えない。

 心当たりはもちろんあるのだが何も知らないフリをして聞いておく。


「あ、いや、すまないな、青年の獲物を奪ってしまって。


 俺は前にも言ったのだがクモを追っていたのだが見つかるのはゴブリンばかりでな。

 逃げるか隠れていればよいものを奴ら俺の強さが分からないのかかかってきやがってな。


 仕方なく応戦しているのだが音を出すとより寄ってきて邪魔でかなわんのだ。


 もし見つけたら死体を持って行って青年のものにしても構わんぞ!」


 ゴブリンがいない理由もサルモスがここにいる理由もやはりと言ったところか。


「しかし1人でめげることなく冒険者として活動するとは気に入ったぞ!」


「はぁ……ありがとうございます」


「君のような気概のある若者はきっと成功するから気を落とさず頑張るんだぞ。


 では私はクモ探しで忙しいからもっと奥へと行くつもりだ。


 ではまたな、青年!」


 言うだけ言ってサルモスは森の奥へと走り去ってしまった。

 この分では森のちょっと奥にいるコボルトの方も望み薄だろう。


 サルモスにノワールが見つかったら厄介なのでさっさと帰るとしよう。

 薬草はそれなりの量は全くの無成果ではないのでいいだろう。


 サルモスの倒したゴブリンを探して耳を切り取っていくなんて情けないことをするつもりはない。


「やってんなぁ……」


 遠くの方で爆発音が聞こえる。

 ゴブリンが集まってくるのが嫌だと言うならあんな風に音だして戦わなきゃいいのに。


 もう少し森の浅いところに移動してノワールを呼ぶ。


 潜伏スキルのおかげでノワールは一切サルモスに気づかれることはなかった。


 早くに逃したこともあるだろうがノワールはやっぱり優秀だ。


「さて、今日のところは危ないのが森にいるから家に帰ろうか。

 すぐに呼ぶから宿に戻るまで見つからないように隠れててくれよ?」


 サルモスは森の奥に行ったから心配は少ないけれど他にも冒険者はいるので何があるか分からない。

 見つかってもこんなところにいる冒険者にノワールがやられるとは思えないけど余計な戦いは避けて警戒するに越したことはない。


「に、人間〜!」


「ん? ぎゃああああ!」


 少し前、本当に少し前に聞いたばかりの声が聞こえて視界が暗くなった。

 間近にクモの腹と足が見えて、ショウカイは思わず絶叫した。


「は、はなっ、離れろ!」


 ショウカイも虫は平気な方ではある。

 ただし離れていればである。


 触れたりするのは好きではないし、まして顔面に張り付かれるのは論外だ。


「のわっ! 何をするであるか!」


「うるせえ! 人の顔に張り付くんじゃない!」


 シュシュを鷲掴みにしてボールのように投げ捨てる。

 顔に足の感触が残っていて背中がゾワゾワする。


「一度見逃してやったがどうやら死にたくなったみたいだな?」


「は、ははは、待たれよ、人間! そこまで怒ることではないではないか。

 剣をしまうのである!」


「一体何の用があって人の顔に張り付いてきたんだ?

 返答によっちゃ切るからな」


「き、緊急事態だったのである! あの赤い悪魔がワタクシたちを追ってきたのである!」


「だから顔に張り付いたと?」


「ヒィィ! 剣を相手に向けるのは良くないことである!

 人間のところに来たのは、たまたま見つけて助けてほしいと思ったからである」


「助けてほしい? 見逃してやったろ?」


 これ以上何を助けろと言うのだろうか。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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