表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
307/340

心優しきリッチの心残り4

 ノワールやシズクに手伝ってもらってテントを張り、その横でスーや魔法でかまどを作ったりしてアステラとミクリャで料理を始める。


「穏やかでいい光景だな」


「ご飯食べたいですね。


 もう味覚ないんですけど」


「私はあるぞ」


「ええっ!?


 ズルい!」


「骨だけになったのではないからな。


 ただ腹は減らないから食わなくてもいい体なのだろうな」


 知らなかった新事実にカレンデスが驚愕する。

 カレンデスもグオンも死んでいるので食欲なんて湧くことがない。


 けれど食は生きているものにとっての大きな楽しみであってそれを奪われたことは悲しいことだった。

 舌に感じる豊かな感情を2度と感じることはないと思うと絶望すら覚えると思っていたのにカレンデスは裏切られた気持ちになった。


「……何をしているんだ?」


「石投げてる」


「そうじゃなくてなんで石投げてるんだってことだよ」


 テントも張り終えてノワールとシズクベッドでのんびりとしていたショウカイ。

 ふと見るとカレンデスがグオンに石を投げつけていた。


 不満なことがあったのだろうがこの短い間に何があったのか。


「遊んでるんですかね?」


「……そうかもな」


 魔法なんかを使わないあたり不満はあるがじゃれ合いの範疇なのかもしれない。

 本気で傷つけるつもりはないしグオンも大人しく石を投げられている。


 長らく一緒にいた2人なりのコミュニケーションなんだ。


 あっ、違う。

 カレンデス目を狙っている。


 本気で傷つけるつもりだ。

 結構石を投げているのかカレンデスのピッチングは割とコントロールがいい。


 どう見ても石の投擲先は目の付近だ。

 弱点を狙って石を投げている。


「私も枝とか投げてほしいです!」


「枝……なるほど。


 まだご飯できるまで時間あるし遊ぶか」


 ノワールがキラキラした目をショウカイに向ける。

 枝を投げるといってもノワールに投げつけるのではない。


 いわゆるとってこい遊びをしたいのである。

 時々外で休んでいるとノワールが枝を持ってくることがあるのでやってあげたりもする。


「おりゃあ!」


 ただショウカイは全力。

 ノワールの足が早くてすぐに枝に追いついてしまうので魔力を全身にたぎらせて枝を遠くまで放り投げる。


 ここは広いのでいくら枝を飛ばしてもなんの問題もない。

 とってこい遊びによってコントロールはないけど多少強肩にはなった気がする。


 ノワールはあえて小さくなってたくさん走らなきゃいけないようにして枝を追いかける。

 森の中と違って投げた枝も見やすいし無心で投げているとショウカイも楽しくなってくる。


「ヒャホーい!」


「楽しそうで何よりだ」


 今度どこかでボールでも買ってあげよう。

 犬用ボールはないけど手頃なオモチャならどこかにあるはずだ。


「ごはんですよー!」


「ハッハッハッ……」


 楽しさで舌がテロンとなっているノワール。

 ショウカイも枝投げすぎて肩がダルい。


 基本肉食なのが魔物たち。

 だからご飯も肉中心。


「そこ食べにくくない?」


「大丈夫です」


 遊んでもらって大満足ノワールはさらに地面に座るショウカイの足の上に乗る。

 ミニウルフ状態なのでそんなに邪魔になるものじゃないけどノワールの方は食べにくいだろう。


 だけどノワールは幸せそうだ。


「ならいっか」


「次の時はミクリャ」


 プクッと頬を膨らませているミクリャ。

 ミクリャも割と膝上乗りだからノワールと取り合っている。


 スーは肩に乗り、シズクは普段は体にまとわりついているから食事の時の膝は譲るらしい。

 アステラも見てくるけど流石に通常の人と変わらない体格のアステラを膝に乗せて食事はできない。


「くぅ……食欲とまた違う食べたい気持ちはあるけど私に出来るのは咀嚼だけ……」


 食事を取る間も魔石を吸収しているカレンデス。

 久々に食事を食べたい気分になるけど食べたところで噛み砕いてそれで終わり。


 味わうこともお腹が満たされることもない。

 泣く泣く魔石を吸収するが魔力が満ちても気分は満たされない。


「たとえばだけどさ」


「なんですか?」


「擬態スキルで人に擬態したら味覚ってどうなるんだろうな?」


「へっ?」


「ノワールは擬態スキルで人の姿になれる」


「ええ、それは知っています」


「もちろん、舌もある」


「そうでしょうね」


「となるとだ、味覚はどうだと思う?」


「……なるほど。


 興味深い考察だな、ショウカイ」


 面白い考えだとグオンは感心する。

 擬態スキルでは別の姿に擬態することができる。


 弱い魔物は持たないスキルで強い魔物になると持っていることもあるが強い魔物ほど擬態する必要なんてないので使われないスキルでもある。

 そしてさらに強くなると大体知能が備わってくるので人に化けたりすることもある。


 アンデッドで擬態スキルを持つ魔物はほとんどいない。

 必要ないからかもしれないし亡者が生者に化けるという発想がないのかもしれない。


 高い知恵のあるアンデッドはリッチぐらいでリッチは自分で生者である自分を捨てた者。

 生きている姿を自分で捨てたのにまた戻ることを心のどこかで良しとしない。

 

 もしかしたらアンデッド全体の深層心理として死んでいる者の自覚があるのかもしれない。

 ともかくアンデッド系の魔物は擬態スキルで擬態をしないのだ。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ