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触れられたくない過去1

「まずはドラゴンについて話そう」


「ドラゴン……について?」


「ドラゴンについて人は多くを知らないだろう。


 当然ドラゴンが人と距離を置いていることが大きいのだが今から話すことはドラゴンの中でもあまり触れられないこと。


 子に伝えるのに一度だけ話すことはある警告というか、心の備えが必要なことがあってそれが今回の話に関わっている」


 ゆっくりと話し出したグオン。

 ドラゴンって何だと改めて考えると分からない。


 ざっくりとしたイメージはあるけれどあくまでイメージでこれまでに会ったドラゴンを思い起こしてみる。

 すごい強くて子供思いで優しくて良いドラゴンたち。


 能力はともかく性格的には意外と人とそんなに変わらない。

 義理に厚かったりと思ってたよりもフレンドリー。


 けれどもそれはそれぞれ個別のドラゴンの性格であってドラゴン一般に共通する事項ではない。


「それは何の話というのか難しいものだ。


 ドラゴンは基本的には人にあまり関わらず人前にドラゴンとして姿を現すこともない。


 ドラゴンからしてみれば人の強さとは足元にも及ばず戦う必要がない。

 けれども人が団結して戦うとドラゴンすら越えることもある。


 だからドラゴンが人に手を出すことはなく、人もドラゴンに手を出すことはない。


 ……そうであるのだが度々人の話の中にはドラゴンの話、ドラゴンを倒した話などが聞かれるであろう?」


「まあ確かに」


 それはショウカイにもイメージはある。

 ドラゴンと戦う勇者なり、国をあげての戦いなり何となくそんな話の印象がある。


「利益もないのに人と戦うことはしない。


 なのになぜ人とドラゴンが戦う話があるのか」


「確かにそう言われてみると不思議ですね……」


 カレンデスも顎に手を当てて考え込む。

 英雄譚として憧れる人はいるがだからといってドラゴンと戦おうなどとは考えない。


 逆にドラゴンが人の国を攻撃する理由なんて思いつかない。

 よほどナワバリを荒らせば攻撃もしてこようがわざわざ国全体を攻撃までする必要はない。


 なぜ英雄がドラゴンを倒すことになったり国との大きな戦いにまでなるのか。


「ドラゴンはな、時に狂うのだ」


「ドラゴンが……狂う?」


「どういうことですか?


 グオンさんみたいなのならともかくドラゴンが狂うなんてことあり得ません」


「私ならありそうってのもなんだか聞き流したくないが今は聞かなかったことにしよう。


 理由もどんな時になるのかも分からない。


 ただなぜなのか精神に異常をきたして狂ってしまうのだ」


「もしかして……」


「そう、それが人と戦って倒されたドラゴンだ。


 狂うと魔力や生命力に惹かれるらしく人の国に向かってしまう。

 そして破壊行為を行うのだ」


 長い歴史の中で何かの事情で本当に人と戦ったものいないわけではないが、とグオンは付け足した。


「なんで……」


「それは誰にも分からないのだ。


 個体数も少なく長命で病気などもせず生命力が高いのがドラゴンだからドラゴンの医者もいない。


 暴れたドラゴンはそうして人だったりドラゴンの中でだったり倒されるので拘束して原因も調べられない」


 人だって本気で暴れる人を押さえるのには苦労する。

 ましてドラゴンを拘束するなんてことできはしない。


 だから何が原因で狂ってしまうのかドラゴン自身であっても明らかになっていない。

 ここまで来るとショウカイにも話の展開も読めてきた。


「そして私はその狂ったドラゴンと戦って瀕死の怪我を負ったのだ。


 相手の名前はジャスガン……」


「だからあんなにボロボロだったんですね」


「私も本気で戦ったのだが暴れるジャスガンとはほとんど力の差がなくてな。


 実は決着もついていないのだ」


 狂ったドラゴンジャスガンと戦ったグオン。

 しかし力は拮抗していて互いにボロボロになった。


「あと少しで倒せる、そんな時にジャスガンが暴れた国や周辺から集まったドラゴン討伐軍が押し寄せてきたんだ。


 人にとってはジャスガンが暴れたのか私が暴れたのか判断がつかなかった。

 どの道そこで戦ったので国に損害を与えたのは私も同じだから連中にとっては同じだったのかもしれない。


 軍は私もジャスガンも攻撃した。


 ジャスガンの方も弱っていたからな。

 軍隊であれば倒せるだろうと私はその場を離れて逃げたのだ」


「そして迷い込んだのがここだった?」


「そうだ。


 魔力が豊かで身を隠せた。


 それにもう逃げられるほどの体力も無かったのだ」


「私の治療むなしくグオンさんは死んでしまいますけどね」


「実はその時のこともよく覚えていないほどに弱っていたのだ」


「人の献身的な治療を?」


「すまない……」


「まあいいです。


 ですが心残りはそのジャスガンとやらと戦って……勝てなかったこと、それとも最後どうなったのか分からないこと、なんでしょうか?」


 ジャスガンとやらとのことが心残りであることはまず間違いない。

 問題はジャスガンとの間で起きたことのどこが心残りなのかだ。


 話は分かるがどこに重きを置いているか判然としない。


「あとは色々言っていた人たちは?」


 マリーやらシェリルやらは誰なのか。

 人であり、ジャスガンが暴れた国の人っぽいのは分かる。


 食べ物の名前も出たから料理人。

 それがグオンと何の関係があるのか。


「……お話分かりますか?」


「そりゃ分かるわよ」


 真面目な話をしているので邪魔しないように横で丸くなっているノワール。

 その上にはスーやシズクもいる。


 スライムらしくまんまるになっているシズクは寝ている。

 寝る必要のないスライムだけど意識をぼんやりとさせて半分寝ているような状態になれる。


 ノワールは話を聞いていてもよく分かっていない。

 言葉は理解できるが元々ウルフなので話が複雑になると途端についてこれなくなる。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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