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誇り高きドラゴンの心残り6

「まともな方法を教えるんだ!」


「ぐぬぬ……分かりました」


「くだらないことをするな、カレン……」


「私だってキスぐらいしたいんですよぅ!


 骨の身でも感触ぐらいは分かるから相手の唇の具合ぐらいなら感じられますからぁ!」


 心残りがあってアンデッドになるならカレンデスの心残りはこうしたことかもしれないとショウカイは思った。

 叶えられないこともないがショウカイがとんでもない勇気を出さなきゃいけないこととカレンデスにするなら多分みんなにもしなきゃいけなくなることがネックである。


 カレンデスには暴走の危険もないのでそこまでする必要はない。


「私だってこれからって時だったのに何が悲しくてドラゴンに青春捧げなきゃいけないんだぁ!」


「だから……悪かったと」


 カレンデスはその場に落ちていた石を拾ってグオンに投げつける。

 誰が褒めてくれるでも、誰が慰めてくれるでもない。


 魔物となって人の敵となり、グオンと共に死の谷に閉じ込められることになった。

 明るく振る舞っていたがカレンデスだって泣き叫びたくなるような思いを抱えていた。


 泣けないし叫んでもグオンは困惑するだけで上手く慰めてもくれない。

 人に襲われるのは悲しくてもまだ何もないぐらいなら人に襲われるぐらいの方がマシだった。


「マジでふざけんなぁ!」


「私も理性を無くして暴れるがカレンも時としてこうして暴れるのだ」


「そうなんですか……」


 大人しく石を投げられているグオン。

 カレンデスがこうなってしまった責任のほとんどは自分にあると分かっているから抵抗もしない。


 石がぶつかったところで特に痛みもダメージもない。

 けれど心は痛む。


「この!


 このぉ!


 ……ハァ」


 アンデッドの体ではいくら暴れても息も切れず疲れない。

 ただひたすらに空しさのみが後に残る。


「カレンデスは優しいんだな」


 ショウカイだったらどうしただろうか。

 こんなに取り乱すほどに献身的に周りを守ろうとすることが出来るかと考えるがどこかで放り投げてしまうと思う。


 このような状況まで来ているので意地なんて側面もあるだろうが意地だけでも続けられない。

 すごく優しい人なんだとショウカイは素直に思った。


「なっ……そそ、そんなこと言われたって何も出ませんよ!


 これ私の作ったポーションです」


 体をくねらせてカレンデスは岩陰から小瓶を取り出してショウカイに渡した。

 出ないと言いながら出てきた。


「お返しできるものなんてありません……このことを解決しても英雄にもなれません。


 誰も感謝しないですしすごく危険を伴います。


 でも私じゃもうどうしようもないんです。


 助けて……ください」


「……俺は別に英雄になりたくもないし有名にもなりたくない。


 危険は嫌だけど…………頼まれて放っておけるほどに人も出来ちゃいないんだ」


 多分ショウカイも底抜けに優しい。

 これまでどんなことをしてきたのか分からないが困惑しながらも魔物を助けようとしてくれている。


 普通こんなことに人は首を突っ込みたがらない。

 カレンデスのことを優しいというがショウカイの方こそ優しい人物だとアステラは思った。


 ーーーーー


「本当に安全なのか?」


「これまでは大丈夫でした」


 地下。

 大体グオンがいるところの真下らへんになる。


 カレンデスまだ谷が残っているところから掘り進めて地下に空間を作ってあった。

 そのまま地上にいたのではグオンが暴れた時に巻き込まれてしまうので対策として作った地下に隠れる場所。


 グオンの真下にまで掘り進めたのはここが霧に囲まれた中心地であり、グオンがど真ん中で暴れることが多くて真下を攻撃することが少ないからだ。


「声は聞こえるのか?」


「うっすらと。


 ですが今回は魔法で補助をしてちゃんと聞こえるようにしたいと思っています」


 ショウカイが死の谷に入ってから3日が過ぎた。

 グオンの様子は日に日におかしくなっていった。


 長く一緒にいたわけじゃないから元々のグオンのことをそんなに知っているショウカイではない。

 でもふと空を長いこと眺めていたり突然グオンから魔力が溢れてきたりしたら異常に見える。


 いつ暴れ出してもおかしくないので避難場所である地下に移動してきた。


「暴れるのは大体日が落ちてから……


 今夜辺り、あと数時間だと思います」


「ドラゴンの心残りか……」


 グオンは口数が少ない。

 直接思い残していることを聞いても思いつかないといい、何か執着するような性格でもない。


 アンデッドになるほどに思い残すこと、しかもドラゴンという相手がそんなに強い思いを抱くなんてどんなことだろうと悩んでみた。

 当然ショウカイが思いつくことなんてカレンデスも考えてきたことでグオン自身も悩んでいた。


「やっぱり死ぬ原因になったケガに関わることでしょうか?」


「それが1番可能性があるよな」


 みんなの中で1番ありそうだと考えているのはやはり死の原因である。

 グオンはこの死の谷に来た時にはすでにボロボロの状態になっていた。


 そのケガが原因で死ぬことになるのだけれどグオンはその理由を頑なに話そうとしなかった。

 ドラゴンがボロボロになるほどの事態はドラゴンにとって心残りになってもおかしくない。


 自覚していなくても心残りになっていることだってあるので一概に言えないが思いつくのはそれぐらいだ。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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