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誇り高きドラゴンの心残り3

 グオンが咆哮した。

 大地を揺らすようなドラゴンの咆哮。


 逃げようと思ったカレンデスだったがどこにと同時に思った。

 ドラゴンが本気で暴れれば最初から離れた地にいない限りは逃げきれない。


 それどころか魔人族の国に被害が出る可能性が大きい。

 カレンデスの脳裏に結婚した妹に出来た子供のことが浮かんだ。


 このまま暴れさせてはいけない。

 とっさに思った。


 魔人族の国を守るためにはどうしたらいいか。

 ドラゴンを外に出してはいけない。


 幸いここは人里離れた場所。

 多少無茶をしても被害が出ることはない。


 正気を失っているならほんの少し狂わせてやるだけでも大きな効果が得られるかもしれない。

 カレンデスは自分の全力を持って谷に魔法を展開した。


 それは方向感覚を狂わせて相手をその範囲内に封じ込める結界を張る魔法だった。

 正常な状態のドラゴンになら到底通じないだろう魔法だけどカレンデスはこの魔法に希望をかけた。


「結果としては成功したんですけどね」


 暴れ出したグオンだったがカレンデスの魔法にハマって谷から外には出なかった。

 しかし全てが丸く収まったのでもなかった。


「代わりに私は死んでしまいました。


 もっとまともにやれればよかったのですけどグオンさんの魔力が強すぎて死んでしまったのです」


「……本当にすまない」


「許しません」


「うっ……そこは許してくれるところじゃないのか?」


「助けてあげようとして、アンデッドとして復活しても見逃してあげたのに殺されたんですからね。


 許しますか?」


 カレンデス強し。

 グオンがしょんぼりしている。


 まあ確かにカレンデスがやったこととやられたことを考えると許せなくてもおかしくない。


「それからどれぐらいの時間が経ったのでしょうか。


 私は死んだはずだったんですけどある時目が覚めたんです」


 グオンがアンデッドになったのと同じく谷底に滞留したドラゴンの魔力が原因だろう。

 きっかけも分からないがパッとカレンデスは目を覚ました。


 しかし目覚めた時、カレンデスの体すでに白骨化していた。


「この際ただのスケルトンだったらよかったのに……」


 なぜなのかカレンデスは人の意識を保ったまま魔物になっていた。

 その時はただのスケルトンとしてカレンデスは復活していた。


 流せる涙もなくカレンデスは嘆いて叫んだ。

 スケルトンになったなど受け入れられる話ではない。


 そしてそこにはまだグオンもいたのであった。


「それからも色々ありました。


 グオンさんは時々暴れるのでそれを外に逃さないようにすることやそのために私の能力を強化する必要があること、そのために人が迷い込んでくることなど色々です」


 カレンデスは自身を魔石で強化してリッチとなり、グオンが暴れても外に行かないように魔法の結界を張った。


「ですが限界も迎え始めたのです……」


「限界?」


「魔力というのは無尽蔵なものではありません」


「はぁ……」


「谷底に滞留していた魔力ですが少しずつ流れていってしまいます。

 そうして少しずつ魔力が薄まってきたのですがそうすると私たちの魔力も補充できなくなってしまったのです」


 アンデッド系の魔物は死んでいるので食事などを取らず他から魔力を供給してもらうしかない。

 世界に溢れる魔力や生きているものの魔力を奪って自分の魔力を回復しているのである。


 谷にも魔力はあるので魔力の補充はできる。

 ただしそれは単純に生きていくだけの分として、である。


「ここに来るまでには霧の中を通ってきたと思いますがあれは長年かけて改良したグオンさんを外に出さないための魔法なのです。


 それを維持するにも魔力が必要なのですがもう自然から吸収できる魔力じゃ使用量をまかないきれなくなってしまいました」


 ドラゴンの魔力が谷底に多く滞留している時は吸収できる量が多くて問題がなかった。

 しかし時が経って魔力が薄くなってしまった今ではグオンを出さないための結界を維持する魔力が1日で自然に吸収される魔力を上回ってしまった。


 このままでは近い将来に結界は解けてグオンが暴れても止められるものがなくなってしまう。


「せっかく守ってきたのにこんなところでグオンさんを暴れさせて全てを無駄には出来ません」


「……まあ、話は分かったけど。


 俺たちにどうしろというつもりなんだ?」


 割と壮大な話だった。

 ドラゴンをどうにか押しとどめようとしているカレンデスの自己犠牲はとても尊敬できるものだ。


 けれど助けてほしいのどんなことをすれば助けになるのかショウカイに思いつかない。


「魔力を分けてほしいのですが……今は別のお願いもしたいと思っています」


「魔力は別にいいけど、別のお願いって?」


「グオンさんは暴れる時に何かを言っているようなのです。


 それは魔物の言葉で私には理解できないのですがおそらくそれが原因でグオンさんはアンデッドになってしまった……


 実はグオンさんを倒して止めようとしたこともあったのですが危機に陥るとまた何かを叫びながら暴れてしまうので倒せなくて。


 もしかしたらその何かが分かれば意識のないグオンさんを止められたり、倒したりすることができるかもしれないと思っていたんです。


 どういうわけか魔物を連れていらっしゃるなら魔物の言葉が分かるのではと思ったのですが……」


「分かりますよ」


「ほ、本当ですか!」


 アンデッドになったのは心残りがあったから。

 それを取り除くなりしてやればアンデッドとして執着する必要がなくなるから倒せるんじゃないかとカレンデスは思った。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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