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炎帝が追いかけるモノ2

 まだ気持ちは落ち着かないけれどいつまでも草むらからゴブリンを眺めているわけにもいかない。


「ノワールは左の2体を頼む」


 任せとけとノワールが湿った鼻先でショウカイの腕を突いた。


「よし、行くぞ!」


 草むらからノワールとショウカイが飛び出し、一直線にゴブリンに向かう。

 ノワールの方が足が速いのでゴブリンたちはまずノワールに気がついた。


 1番左のゴブリンが首に噛みつかれて絶命する。

 完全にゴブリンの視線はいきなり現れたノワールの方に向けられている。


 仲間の死と状況を理解し、ショウカイに気づいた時にはもうショウカイは剣を振り下ろし、ノワールはもう1体に襲いかかっていた。


 ショウカイの剣が肩口から入り、ナナメにゴブリンを切り裂いた。

 切った感触が妙に気持ち悪く感じられる。


 もう切ってしまった後なので気持ち悪くてもこの感覚を受け入れるしかない。


 ノワールも容易くゴブリンを仕留めていた。

 縦にスライスされて死んでいるゴブリン。


 魔力を込めた爪による攻撃。

 爪術のスキルを持っているので自然とこうした爪を使った攻撃をすることができ、引っ掻くだけでなく斬撃のようにも攻撃を繰り出せていた。


 ゴブリンたちは反撃する暇すらなかった。

 ショウカイは後味の悪さを感じながらもゴブリンたちに完勝した。


「うぅ……」


 最後にやらなければいけない行為。

 本当にみんな切れるのかと疑問にすら思えてくる。


 左手でゴブリンの耳の先を摘み、右手に持ったナイフを当てる。

 顔を逸らしてナイフを一気に引いて耳を切り落とす。


 ゴブリン討伐の証として耳を切って持っていかなければならないのだ。


 話で聞いた時にはなんて事はないと思ったのに今こうしてやってみるととてもじゃないが気分が悪くためらわれる行為である。


 精神的なダメージを受けながらゴブリン3体分の耳を切り落とし、買っておいた袋の中に入れる。


 その後もノワールがゴブリンを見つけ出してくれて最初の3体を含めた計12体のゴブリンを倒した。

 初日の成果としては良い方なのではないかと思う。


 ちょいちょい見つけたチコニソウもそれなりの量が取ることができたのでそろそろ帰ろうかという時、爆発が起こった。


 すぐ近く、ではない。

 けれど同じ森の中で上がる黒煙が木々の間から見えた。


 嫌な予感がする。


「ノワール、逃げて隠れるんだ。安全になったら呼ぶから」


 少しためらうようにしながらノワールがその場を離れる。

 爆発はその後も続いてショウカイのいる方に近くなっていく。


「……あれは?」


 何かがショウカイの横をすり抜け、走り去っていった。


「どこへ行った!」


 その何かを追いかけるように大柄な体格の男性が姿を現した。

 燃えるような真っ赤な瞳が印象的で、圧倒されるような強い魔力を感じる。


「ん? こんなところに人が……なるほど、ゴブリン狩りか」


 ショウカイの周りにあるゴブリンの死体を見て男は素早く状況を把握する。


「しかも1人でか、最近の若いのにしてはやる気があるな」


 1人で話し続ける男はウンウンとうなずいている。


「あの、あなたは?」


「なに? 俺を知らないのか?」


 知るわけないだろ、とショウカイは思った。


「すいません……」


 でもそんな風に言えば気を悪くするかもしれないので下手に出て謝っておく。

 別に喧嘩をふっかけたいわけじゃないから丁寧な態度で対応する。


「なんと……まあいい、俺は三帝が1人、炎帝のサルモスだ」


 胸を張り、どうだと言わんばかりのドヤ顔をするサルモス。


「はあ……」


「はあってお前まさか三帝を知らないのか?」


 知らない。ショウカイはまだまだこの世界に来て日が浅いのだ、三帝だかなんだかを知る由もない。


「かぁ〜……それは俺の知名度不足か、お前の勉強不足かだ、青年よ。

 まあ調べればすぐに分かる事だから今は説明しないでおこう」


 手のひらを顔に当ててオーバーなリアクションで驚く。

 そんなに有名なのか気になってきた。


 態度だけを見ると気さくで特別すごいような人には見えないサルモスだが感じる魔力は圧倒的でショウカイが到底及ばぬ猛者であることを感じさせていた。


「ところで青年、ここらで魔物を見かけなかったか?」


「……魔物ですか?」


 ショウカイの心臓が跳ねる。


「そう、俺は今アラクネという魔物とその手下のクモの魔物を追っているのだが、一部を逃してしまってな。


 こちらに逃げてきたと思うのだが見なかったか?」


「あっ……」


 そういえばショウカイの横を通って行ったのはよく見ればクモっぽかったかもしれない。


「何か見たんだな?」


「はい」


「どっちに行ったか分かるか?」


「ええと、確かあっちの方、だったかもしれません」


 少し、少しだけ逃げたのとズレた方をショウカイは指差した。


 ノワールの時にウソをついてしまったように理由は分からないけどそうするべきだと思った。

 全く違う方向を言うのは気が引けたのでちょっとズレた方向を教えた。


「ありがとう。青年も1人でも頑張れよ!」


 ショウカイの指差した方向に走って行くサルモス。


 サルモスの名前は覚えておいて後で誰かに聞いてみようとでも思った。


 一瞬ノワールのことがバレたと思って緊張したけれども追いかけている対象は違ったので安心した。

 安全になったのでノワールを召喚し森を後にすることにした。


 ズレた方向を教えたためなのか、魔物が逃げ切ったのか爆発音はそれ以降聞こえなかった。


 ショウカイは帰りに冒険者ギルドに寄ってゴブリンの耳とチコニソウを納品した。

 受付の女性は驚いた顔をしてゴブリンの耳を受け取り、数を数えてまた驚いていた。


 12体分ならそんなに多くないと思っていたのにそうでもなかったらしい。


 宿に戻り森に隠れていてもらったノワールを宿に召喚した。

 受付の女性にでもサルモスのことを聞いておけばよかったと思いながらショウカイはその日は眠りについた。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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