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空飛ぶミクリャ3

 風が頬を撫で景色が流れていく。

 ショウカイの肩も高かったけどそれよりも高い空の上。


 これからショウカイの元に行くという高揚感も相まって世界が輝いて見えた。


 魔物って割とスピード感があるのが好き。

 ジルバの肩に乗って空を飛ぶミクリャは楽しそうだった。


 本来ならもっと早く飛べるがそうなるとミクリャの方がもたない。

 ある程度抑えて飛ぶ。


「ショウカイ……君のお兄さんはどんな人だい?」


 人であって魔物と仲良くするのは簡単なことではない。

 魔物は敵で相容れない存在。


 仮に仲間にできる能力があってもそうしたいと思えるのかすら疑問である。

 もしかしたら酷い扱いを受けている可能性がある。


 そんなこともほんのわずかだが頭をよぎる。

 兄と呼んで慕っている以上はそんなことないとは思うけど無理矢理なことだってある。


「お兄ちゃんは……弱い」


「よ、弱い……」


 そう言えばマギナズもそんなことを言っていた。

 弱っちい人間。


「でも優しくて暖かくて、強い」


「強い……?」


 言っていることが矛盾している。


「弱いけど強いっていうのはどういうことだ?」


 強いなら強く、弱いなら弱い。

 どちらかであってそのどちらもではない。


「戦うと弱い。


 でも諦めないし、守ってくれる。


 だからお兄ちゃんは世界一強い」


「私よりもか?」


「ん」


「……そうかそうか!」


 魔物だからと差別する人間ではなさそうだ。


「弱くて強いか……」


 不思議だ。

 でもそんな人間だから魔物と仲良くなれるのかもしれない。


 ドラゴンには人の中に紛れて生活しているものもいる。

 だがジルバは人と接点もあったけれども世界をさすらうように生きてきた。


 長く付き合いは人はいなかったので人というものをよく分かっていない。

 ショウカイに会うのが楽しみになってきた。


「少し日が落ちてきたな」


 急ぐ旅路でもない。

 日が落ちてきたら早めに休んでおこうとジルバは良い休憩場所を探す。


 ついでに何か食べるものがあればいい。

 飛びながら周りを見回す。


「あそこなんかどうだろうか」


 近くに岩山が見えた。

 そこに向かうジルバ。


「尻尾をくれ」


 岩山のボスをしているのは大きなトカゲの魔物だった。

 突然のドラゴンの来襲に逃げる暇もなかったボストカゲ。


「しし、尻尾ですかい?」


「お前さんならまた生えてくるだろ?」


「そうですが……なぜ……」


「晩御飯にする」


 ということでボスが使っていた巣穴を宿としてボスの尻尾を調理して食べることにする。

 魔法で火を焚き、どこからかフライパンを取り出して尻尾をざっくり輪切りにきてじっくりと焼く。


 さらにどこからか調味料まで取り出して尻尾のステーキにふりかける。


「俺はな、実は料理の腕で妻を落としたんだ」


 ドラゴンはかなりの長命種であるために時間を持て余すことも多い。

 あまり食べることをしなくても一度のエネルギー補給で長いこと活動もできるのだけどジルバは持て余した時間に料理を覚えた。


 食べなくてもいいが食べてもいい。

 どうせなら楽しんで作り楽しんで食事をしようと考えたのだ。


 だから世界を渡り歩き料理や食材を色々と知るために旅をして回ったりしていた。

 そんな時に出会ったのがテラリアスナーズだった。


 新しい料理に出会った時以上の衝撃。

 最初は相手にされなかったジルバだけど料理を食べてもらうことを口実に世界中からいろいろな食材を持ち込んではテラリアスナーズに振る舞った。


 テラリアスナーズだってうぶな乙女でもない。

 ジルバの目的は分かっていたし、断らなかった時点で多少の気はあった。


 そうしてジルバとテラリアスナーズは結ばれた。


「君も落としたい相手がいるなら料理がいいぞ。


 創意工夫があって作るのも楽しく、食べることは喜びで、また食べてもらうことも喜びだ。


 今日は調理する場もないからこれぐらいだがこれでもただ食べるよりは美味いだろう」


「お兄ちゃんも落とせる?」


「んん?


 ……そうだな、料理が上手ければ落とせるかもしれないな。


 まずは胃袋を掴む、など人の言葉であるそうだ」


「食べるのは好き……でも作ったことない」


 基本的に料理係はショウカイだ。

 ショウカイ以外は生でもいけるけどやっぱり料理した方が美味しいのでショウカイもみんなの分作ってくれる。


 街中で出来合いのものを買ってくることもある。

 ミクリャはこれまで小さかったこともあり、食べる専門だった。


 というか、みんな食べるの専門だったと思う。


「基本魔物は生で食べるからな。

 だが料理の味を知るともう生ばかりも嫌だろ?


 作れるようになって損をすることもないしな。


 ただハマりすぎると大変だぞ」


 またまたどこからか皿を出して尻尾肉のステーキをミクリャに渡す。


「食べるのもナイフとフォークを覚えておくといい。


 君は人に近い姿をしている。

 人に混じって兄の側にいるつもりなら人の習慣も覚えねばな」


 ナイフとフォークを受け取るミクリャ。


「こうだ」


 ジルバがやってみせてミクリャがそれをマネする。


「はははっ、そうだ。


 それでいい」


 下手っぴだけど初めてにしては上出来だ。

 少しずつ慣れて笑われない程度に出来ればいい。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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