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炎帝が追いかけるモノ1

 チコニソウとホーンラビットを冒険者ギルドに納めたショウカイは依頼の貼られた壁を眺めていた。

 ランクを上げたいなら依頼の数をこなすしかない。


 常設依頼をちまちまやっていくより通常依頼をやって上げる方が早い。

 上のランクでは条件が付されているものもあったりするけれど下のランクはそうした制限はないものがほとんどなので受けられそうなものから受ければいい。


「ゴブリン討伐ぐらいかな……」


 けれども1番下のGランクで受けられる依頼なんてあまり選択肢がない。

 まともな依頼はこのゴブリン討伐ぐらいである。


 上の方にあるゴブリン討伐の依頼書を1枚破り取って冒険者ギルドの受付に持っていく。


「ゴブリン討伐のご依頼ですね。


 ……お一人で行かれるのでしょうか?」


 受付の女性が眉をひそめる。

 たとえGランクであっても1人で討伐系の依頼に出ることはまずない。


「はい」


 実際のところ1人ではないけれどウルフを従えていて、ウルフと一緒に戦いますなんて言えるはずもない。


 少し迷ったような、心配するような顔で依頼書に判をおしてショウカイに返した。


「無理はなさらないでくださいね。


 ゴブリン討伐の証は右耳になりますので汚れても良い袋などお持ちになられると良いと思います」


「ありがとうございます」


 ゴブリンそのものは弱く戦うのに苦労はない。

 しかしゴブリンには知恵があり集団で挑んでくる。


 ゴブリンによって怪我をしたり、最悪死んだりする冒険者の数は常一定数報告が上がってくる。


 大抵自分の能力を過信した冒険者は痛い目を見るのである。


 ショウカイは1人での自信があるのではないと受付も分かっている。

 どこかのパーティーに入ろうとして断られているのを受付は見ていた。


 諦めて1人で活動するようだけれど出来るなら怪我はしないでほしい。


「東の森か」


 冒険者ギルドを出て改めて依頼書を確認する。

 東の森とはノワールと会った森とは逆の方にある。


『ノワールが寂しがっています!』


「おっ、今回は頑張ったな」


 受付のアドバイス通りに何か袋を買っていこうかと歩きながら店を探してもはやお馴染みの表示が現れる。

 宿を出発する前にノワールにおとなしくしていることとすぐに戻ってくるから寂しがらなくていいことをしっかりと言い含めて出てきた。


 長いこと表示が出てなかったけれどとうとう我慢の限界を迎えた。

 適当な店で麻袋を購入して一度宿に戻る。


 恨めしそうな目をしてベッドの上で丸くなるノワールを撫で回して機嫌を直してもらい、狩りに出ることを伝える。


 再びノワールを置いて宿を出て東の森に行く。

 森に入り道を外れて人気のないところに行き、ノワールを召喚する。


 グーッと伸びをしてノワールがショウカイの前に座る。


「えー、今回はゴブリンを探します! ゴブリン、分かる?」


 返事をするようにノワールが鳴く。

 本当に分かってて返事をしたのかノワールしか知りようがない。


 内容が分かってなくてもとりあえずショウカイの言葉に反応して鳴いたのか。


 これまでの感じ、何かを探すことは分かっていると思う。


 ゴブリンがどこにいるのかまでは分からない。

 森の中を歩いてゴブリンを探す。


 道に出ると人と会う可能性がある。あんまり道から外れすぎると迷子になる。

 道から離れすぎず、近づきすぎず道に沿うようにしながら進んでいく。


 ついでに見つけたチコニソウを拾ったりして歩いているとノワールが反応した。


 ピクピクと耳を動かして何かの音を捉えようとしている。

 ノワールが顔を上げた。


 何かがノワールには聞こえたらしい。

 チラリとショウカイを見てノワールが走り出した。


 走ると言ってもショウカイが付いて来られる速さでノワールは走り、ショウカイはその後ろに続く。

 移動した時間はそれほど長くはない。

 音が聞こえるぐらいなのだから意外に近かった。


 ノワールが止まり、体勢を低くして草むらに隠れる。

 それに倣ってショウカイも体勢を低くする。


 息をひそめて草むらから覗く。


 ゴブリンだ。


 ショウカイでも名前は知っているけど生で見るのは初めての魔物。

 何と表現したらいいのか、その見た目はゾワッとする不快感をショウカイに与えた。


 今まで会ってきた魔物は動物に近い造形をしていて、多少外見が異なっていても強化された動物ぐらいの感覚で見れていた。


 それに対してゴブリンは全く初見の生き物。

 二足歩行で背が低く緑がかった皮膚は遠くからでも不潔感が感じられる。

 見える顔は人の美的感覚からすると醜いと言わざるを得ない。


 単にブサイクで弱いと吐き捨てるように誰かが言っていたのを覚えているがそんなものではない。

 この世界ではゴブリンは普通にいるからその程度の認識なのかもしれない。


 しかしショウカイはゴブリンをまるで出来損ないの人のようにも見えて嫌な感じを受けた。


 数は3体。聞いている強さなら問題なく戦える相手だ。


「詳細鑑定」


 戦う心の準備ができなくてお茶を濁すようにゴブリンを鑑定してみた。


『ゴブリン

 性別:オス

 低身長、痩身痩躯の二足歩行の魔物。

 力が弱く魔力もほとんどない。

 それを補うように若干の知恵を働かせることがある。

 力は弱いが人の道具を真似したり利用してくるために油断はできない。

 人に対して恐怖や怒りの感情を抱いている。』


 鑑定にさえ弱いと言われる魔物がゴブリンである。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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