神が笑いて竜が鳴く4
チラリとイケオジがショウカイに視線を向ける。
普通の人間にこの戦いの衝撃は強すぎる。
「ここでは狭すぎる。
場所を変えようか!」
「それは構わないが手を離せ!」
イケオジがログダルケイオスの顔を掴んで投げる。
飛び上がって肩をぶち当て天井からログダルケイオスと共に飛び出していった。
呆然と残される一般人間たち。
「な、何が……」
「お兄ちゃん……」
みんなが呆然とする中でミクリャだけがショウカイのほっぺに自分のほっぺをくっつけてスリスリしている。
いつの間にかミクリャも二桁年齢に達した人の子供ぐらいの大きさになっている。
ミクリャのほっぺた柔らかいなとか思考することを放棄した頭が考えていた。
「そちらの子はお知り合いですか?」
「ええ……まあ」
「では先ほどの御仁はお知り合いですか?」
「いいえ、知りません」
「そうですか……お知り合いなら是非ともご正体をお教え願おうと思ったのですが」
ニンファスも冷静というよりももう頭の理解が追いついていない。
「うわっ!」
光が通り過ぎて天井が無くなった。
王の間どころか王の間よりも上にある城の部分が全て消し飛んだのだ。
「……に、逃げましょう!」
王の間は城の高いところにあった。
今はたまたま王の間の上が消し飛んだが次はここが消し飛ぶかもしれないことに気づいた。
全員が顔を見合わせて、城どころか外、町から離れなければと逃げ出す。
「ライム……」
ショウカイはせめてもとライムの頭を抱えて走り出す。
ログダルケイオスに与えられた不思議な圧力のせいで全身がひどく疲弊しているが生きるためには走らなければならない。
外から音なのか、衝撃なのかが伝わってきて激しい戦いが繰り広げられていることが見ずとも分かる。
もはや城は限界だった。
老朽化に加えてバンシークイーン討伐に当たっての戦闘も城にダメージを与えていた。
途中途中で崩れていたようにどこが崩れてもおかしくなかった。
どこかに何かがぶつかって城が大きく揺れた。
「ショウカイさん!」
「ご主人様!」
「ノワール、後で呼ぶから……!」
お前は危ないから飛び込まなくていい。
そう言い切る前に足元が抜けてショウカイは落ちていった。
ーーーーー
ショウカイにはシズクがいる。
落ちて地面に叩きつけられる衝撃はシズクが防いでくれた。
でも落ちる途中で出っぱってるところに頭をぶつけるのまでは防げなかった。
落ちながら頭をぶつけて気を失ってしまった。
「うっ……いだい……」
「主様!」
「あっ、起きた!」
目を覚まして頭を動かすと後ろの方がズキンと痛んだ。
状況も確認する前にサッと手で触ってみると大きく腫れていた。
幸い出血していないけれどちょっと動かすだけでひどく響くように痛い。
なんか落ちてばっかりだ。
「ここは……?
う……みんなは?」
みるとシズクに膝枕をされていた。
頭が痛まなかったのもシズクが優しく包み込んでくれていたからだった。
スーが魔法で光を出してくれていた。
じゃないと真っ暗で何も見えないほどに暗い場所。
なんか体が重いと思ったらミクリャがお腹の上に乗っていた。
呑気に寝息を立てて寝ている。
「ここがどこかは分からないである」
「とりあえずみんなは無事そうだな」
「結構落ちたである」
崩れた床がさらに床を崩してを繰り返して下まで落ちてきた。
「ミクリャ、起きて」
このままじゃ起き上がることすらできない。
ミクリャを揺すって起こしてお腹の上から退けてもらう。
なんでミクリャがイケオジとここまで来たのか聞きたいけど状況把握と安全な場所への避難が優先だ。
「通路……なのかな?」
見たところ廊下の真ん中に寝ていたみたいだ。
窓もない道が伸びていて、スーの光だけじゃ見通せない。
「あっちの方を見てきたであるが崩れて通ることができなかったである」
「そっか、ありがと」
頭は痛むが移動しなきゃいけない。
「どれぐらい気絶してた?」
「そんなに長くはないである。
外がまだ揺れているから戦いも続いているである」
そういえば床についた手に振動が伝わってきている。
上にいた時より伝わってくる振動は小さいので離れたか、もしくはもっと頑丈なところまで落ちてきたかだと思った。
「ノワール……」
きっと心配してる。
ふと思い出したノワールのことを召喚する。
「ご主人様!」
シュンとショウカイの目の前に現れたノワール。
ショウカイに飛びついて抱きつく。
「ノワールも無事だったか。
他のみんなの様子はどうだった?」
「他の人間どもは城を出ました。
あのクソと謎の男は外で戦っていて城の後ろ側は建物が消し飛んでいました」
クソとはログダルケイオスで謎の男はイケオジだろう。
ちょっとばかり口は悪いけどノワールはショウカイと仲間たち以外はほとんど視界に入っていないようなものなのでしょうがない。
討伐隊の冒険者も無事のようで良かった。
「移動しようか。
えと、あっちがダメだからあっちか」
「れっつごー!」
スーはショウカイの頭に乗ってライト係に集中する。
「助かるよ、スー」
「えっへん!」
「私も頑張りました」
「シズクもいてくれなきゃ危なかったな」
それに1人だったらこんなところ心細かったと思う。
みんながいてくれて安心だ。
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