秘密のパートナー2
『ノワールが寂しがっています!』
少しでも離れるとこうだ。
現在ショウカイは空洞を離れて再びタウモーズの町に戻ってきていた。
当然ながらノワールはお留守番であり、あの表示がショウカイの目の前に現れていた。
それを無視してショウカイは広く使いたいからと2人部屋の宿を取り、軽くベッドに横になる。
『ノワールが寂しがっています!』
再三の表示。
「分かった分かった……」
ベッドから起き上がり、部屋の真ん中に向かう。
軽くノワールの顔をイメージしてスキルを発動させる。
「召喚!」
近くでやった時とは違ってほんの一瞬の間があって、ノワールがショウカイの前に現れた。
少し魔力を持っていかれた気がするのは気のせいではないだろう。
召喚スキルなら部屋に直接ノワールを呼び出せるのではないかと思ったが大当たりだった。
「お、おい、やめろって!」
嬉しさのあまりショウカイを押し倒し、顔を舐めるノワール。
別にいい。いいのだが激しいベロベロに呼吸が出来ないので、ちょっと呼吸する暇ぐらいほしい。
一通り舐め終えたノワールは満足してショウカイの隣に寝そべる。
なんともあっさりと問題が解決してしまった。
せっかく空洞まで荷物を運び必死こいてテントを立てたのにとは思わなくもないけれど、いつまでもあの空洞で寝泊まりするわけにはいかない。
離れれば離れたで表示が出て大変だし宿にこっそりと泊まれるならこの方が断然いいに決まっている。
早めにこの方法に気づけてよかったと思うことにする。
「さて、これからどうするか」
ビショビショの顔を拭いてベッドに座る。
ベッドをポンポンと叩くとノワールも飛び乗ってくる。
これまでは流されるままだったり、必要に迫られて行動してきた。
流石に隣国まで来て人を暗殺するとは思えないがそこも若干頭の隅に置きつつ今後の活動方針を考える。
自分が何をしたいのか、どうしたいのかをベッドの上で腕を組んで考える。
前提として前の世界に帰りたいとかはあまり考えていない。
帰っても別にいいのだけど積極的に帰りたいとは思えないのだ。
どうせならこの世界で心機一転のんびりと暮らしていけるならそれがいい。
もっとお金を稼いで家でも買ってゆったりと暮らすのだ。
1人だったら寂しいかもしれないと考えたが今はノワールもいる。
モフモフとキャッキャッウフフな生活をする、悪くない考えだと思う。
つまりだ、第一目標は安住。
「まずは安定した収入だな」
正直な話今の手持ちの金額でも家を買って慎ましく暮らしていく分には苦労しないと思う。
しかし何が起こるか分からないのが人生というもの。
お金があって困るものでもないし多少なりとも稼げるようになっておかなきゃならない。
後々必要になることも考えられるのでやはり冒険者のランクを上げておくことは重要になる。
せっかく買った家を売って金策なんて笑えない。
「となると良い場所を探したいよな」
どうせ住むなら良い場所に住みたい
この場合の良い場所とは高級住宅街ではなく心穏やかに過ごせる場所である。
今から調べておいて目星をつけておく必要がある。
「あとは…… 」
復讐。
殺されかけたことはショウカイは忘れていない。
しかしながら王女様と騎士団長、2人を敵に回すことは国を敵に回すことと同じこと。
決して忘れはしないけれど命を捨ててまで復讐はしない。
何か機会があればぐらいに思っておこう。
「あとは出来るならもうちょい仲間が欲しいな」
横を見るとノワールがいつのまにか寝息を立てて寝ている。
ノワールの能力には満足しているが1人と1匹では限界がある。
ウルフが仲間にできるとノワールで証明できたのだから少なくてもウルフは仲間にできる可能性がある。
しかしノワールの性格には同族嫌悪、つまりウルフが嫌いとある。
なのでウルフを仲間にすることはできない。
他の魔物を従属させて仲間にすることができるのだろうか。
人を嫌っている魔物の心を開かせて仲間にできるのか、そもそもウルフという種族だから仲間にできたのか、それともノワールがさらに特殊だったのか。
可能性を感じなくもないけれど何もかも不確定であって分からない。
いろいろな魔物に出会って、詳細鑑定で見てみるしかない。
時間も、まだ金もある。怪我をしないように無理はせず気長にやっていくしかない。
「やっぱり冒険者のランクを上げるのが1番だな」
お金を稼ぐにも、良い場所を探すにしても、魔物を見つけるにしても冒険者が最も適している。
最終目標は立派な一軒家とノワールが走り回れるぐらいの広い庭。
今の目標は自分の収入で自分の生計を立てること。
ノワールの力も借りてコツコツと依頼をこなしてランクを上げ、お金を貯めていく。
「夢としちゃあ悪くないだろう」
まだ少し曖昧な感じだから冒険者ギルドに行って依頼を見たりして具体的に考えていく必要はある。
でもなんとなく活力、というかやる気が出てくるような感じがした。
ショウカイはそのままベッドに倒れ込む。
1人と1匹じゃ狭いベッドの上でショウカイはゆっくりと目をつぶった。
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