希望の光5
テントの外に出ると外は鮮やかな夕焼けだった。
美しいほどの自然を感じるが同時にどこかにこの世界の残酷さというものも目の当たりにしたような気分がしていた。
死が隣にある世界だからだろうか、時として人の命がとても軽いような、そんな雰囲気を感じることもある。
「残酷だから美しいのか。
それとも美しいから残酷に感じるのか……」
「どんな命でも一生懸命に生きているである。
だから美しいである」
「なかなか深いな」
「照れるであるな」
夕日が地平線に沈んでいく。
「あ……あの、あっ、名前……に、人間さーん」
そういえばショウカイも名乗ってなかった。
名前も分からないし魔物が来ては怖い。
見つけた妥協点としてショウカイのことを呼ぶのにとりあえず人間と呼称した。
ショウカイは手でステイするようにみんなに合図してテントの中に入った。
そこには泣いてやや腫れぼったくなった目をしているけれど背筋を伸ばして凛として立っているアステラ。
テントの中から聞こえた情けない声がウソのようだ。
「……何があったのかは理解しました」
今更な気もしないではないけどこれが女王としてのアステラで、先ほどの感じが普段のアステラなんだろうとショウカイは思った。
「ライムに……会わせてくれませんか?」
「大丈夫ですか?」
「はい落ち着いて話したいんです」
目の奥に芯の強さを感じるアステラなら大丈夫。
ショウカイはテントの中にライムを呼んだ。
「あっ……人間さん……」
「ああ、ショウカイです」
「ショウカイさん、お願いなのですがテントの中にいてください……」
「分かりました」
入れ替わりでショウカイは出ようとしたがアステラの願いでそのままテントの中に留まることになった。
話は分かってもデュラハンになった元知り合いと対面するのには緊張感がある。
アステラにはまだライムがライムである確証が持てないでいた。
見た目は鎧だし、声の感じも鎧から聞こえるためかややくぐもっていて記憶の中のライムっぽいけど違うようにも聞こえる。
ライムの方もたっぷりと考える時間があった。
気持ちもそれなりに落ち着いて駆け寄るマネはしない。
膝をついて頭を下げるライムにアステラがわずかにビクッとなる。
「女王陛下、お久しぶりでございます。
ライム・アーフェリーズです」
「ここでは女王陛下なんて……いえ、もう私は女王ではないのでいつものように呼んでください」
「お姉様……」
「ライム、苦労をかけましたね」
駆け寄って抱きしめたい。
涙を流して大変だったと言いたい。
でも今はできない。
デュラハンの体では力が強すぎるし、デュラハンの体では涙も流せない。
「そんなことありません」
ただ震えるライムの声は泣いているように聞こえた。
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