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出会い3

 何を思ったのかショウカイ自身にも分からない。

 詳細鑑定がお腹が空いているなんて情報を見せてきたからかもしれない。


 携帯食料の干し肉の包みを開けて剣でウルフの側まで押して置いてやる。


 ウルフは相変わらず低くうなったままで干し肉に口をつけない。

 食事中なんて無防備な姿を晒せるわけにはいかないかととりあえずこの謎の空洞から出ようと試みる。

 かなり前屈みの体勢になって転がらないように気をつけて登っていく。


「よっ……と?」


「警戒!」


「へっ?」


 出た瞬間、剣を突きつけられた。

 薄暗い中にいて目が慣れていたので外は眩しくイマイチ状況が把握できない。


「人? どうしてこんなところに人がいるんだ?」


 剣を突きつけている側も困惑している。


「こんなところで何をしている?」


 目が慣れてくると剣を突きつけているもののがちゃんと見えてきた。

 若い冒険者パーティーだった。


「ちょっと道に迷っちゃいまして……そしたらこの穴に落ちちゃって……」


 情けないが本当のことである。

 頭を掻いて笑うショウカイに冒険者たちが顔を見合わせる。


 ショウカイの後ろを覗き込むと本当に穴がある。


「まあ……本当みたいだな。


 俺たちは逃げたウルフを追いかけてきたんだ。

 ここにウルフは来なかったか?」


 ウルフと戦っていたのはこのパーティー。

 追いかけていなくなってしまったと思っていたのに逆に一周して戻ってきた。


「はい、いませんでした」


 このパーティーが追いかけているウルフと空洞にいたウルフはおそらく別物。

 ウルフはいるにはいたがショウカイは咄嗟にウソをついた。


「いたらやられているか、やっているか」


 冒険者たちが剣を収める。


「じゃあ僕たちは逃げたウルフを探すからもう行くね。剣を向けてごめんね」


「あ、あの!」


「んっ? 何かある?」


「どっちに行けば森を抜けられるか教えてもらってもいいですか?」


 このまま行かれてしまっては本当に帰れなくなってしまう。


「ああ、ええと、あっちに真っ直ぐ進んでいけば道に出るはずだよ」


「ありがとうございます」


「それじゃ気をつけてね」


 冒険者たちはウルフの痕跡を探して足早に去っていった。


「ふぅ……」


 帰る方向も分かった。

 魔物も冒険者がこの辺りのウルフを倒したというならさほど心配するのこともないだろう。


 改めて落ちたところを見てみる。

 木の根に囲まれるようにして大きな木の下に空洞があった。


 たまたま転んだ拍子にショウカイはこの空洞に落ちていた。

 中から見た時には広く見えていたけど外から覗くとそんなに広くもなさそうだった。


「静かにしてないとバレちゃうぞ」


 覗き込むと中からかすかにうなり声が聞こえる。

 なんだか見つかってほしくないなとショウカイは思った。


 ーーーーー


 それから無事に帰ることができたショウカイだったけれど妙に怪我をしたウルフのことが気になった。


 非常に悩んだが気になってしょうがなかったので肉屋に寄って肉を買ってお土産にしてウルフの元に行った。

 相変わらずうなっていたので干し肉と同じように剣で押してウルフの側にお肉を置いていった。


 理由はなかったけどチコニソウを探すついでにウルフのところに通った。

 最初こそうなっていたウルフも3日も通うと危害は加えないと分かったのか警戒したような目は向けてもうならなくなった。


 最初の干し肉も含めてショウカイが持ってきたお土産は毎回次来る時には綺麗に無くなっていた。


 5日目には少し奮発して良いお肉を買っていくとウルフの尻尾の先がパタパタと動いていたのをショウカイは見逃さなかった。

 少し意地悪な気持ちが芽生えてお肉をウルフの近くに置いたままいつもよりも長く滞在してウルフの様子をうかがってみる。


 ショウカイの予想通り、ウルフは我慢しきれなくなってショウカイがいるにも関わらず目の前でお肉を平らげてしまった。


 7日目、ウルフはショウカイが来ただけで尻尾を振るようになった。

 肉が目的で尻尾を振っているのだとは分かっているがそれでも非常に大きな変化である。


 思い切って滞在して近くにいる距離を半分にしてみた。

 尻尾を振ることはなく怪訝そうな目をしていたけれど警戒心はだいぶ薄れている。


 8日目、今日ウルフのところを訪れるのは2回目。


 いつものように来た時ウルフはグッタリとしていてショウカイが来ても顔も上げなかった。

 詳細鑑定で調べてみると後ろ足の傷が化膿してかなり良くない状態にあることが分かった。


 このままでは死んでしまう。


 なので急いでタウモーズに戻って良いお肉とポーションを買って、再びウルフのところに来た。


 側まで近づいてもウルフは苦しそうに浅い呼吸を繰り返すだけでなんの反応も示さない。

 これは危ない状況だとショウカイにもわかる。


 皿にポーションを出して飲むように言ってみるが鼻先に皿を置いても顔を背けられてしまう。

 噛まれるのは怖いけどしょうがない。


 良いお肉を鼻先にチラつかせると匂いに反応して口を開けた瞬間ポーションのビンをウルフの口に突っ込んでポーションを流し込む。


 ポーションが口入ったのを確認してマズルに腕を回してロックして吐き出させないようにする。

 暴れるのを必死に押さえて数秒。


 飲み込んだようなので頭を離すと恨めしそうな目をしてうなられてしまう。


「ごめんって」


 お詫びに最初に持ってきたお肉と追加で買ってきた良いお肉を置いて、その日は帰った。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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