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頭泥棒の事情7

 だから集められた人は王様直属の部隊と実力はあるが表立って活躍していない人たち。

 よく名前の聞く有名な冒険者などはいなかった。


 それでも道中の魔物を倒すには問題もなく、ヴァルシュゲルフェン城まで行くことができた。

 そこからグジェットたちが先導して隠し通路を進んだ。


「問題はそこからでした……」


 王の間であり、バンシークイーンが封印されている部屋の前までやってきた一行。

 そこにいたのは1体のデュラハンでバンシークイーンの前哨戦とばかりに戦った。


 結果は敗北。

 痛みを感じない体、膨大な魔力、さらに連携を見破り策を看破する知恵すら持っていた。


 人数差があるので死者こそ出なかったけれど状況は悪かった。

 バンシークイーンにすらまだ会えていないのにこの様。


 そこで連中はとんでもない方法に出た。


 一斉に攻撃を仕掛けてデュラハンの頭を取ったのだ。

 実はイマイチデュラハンとデュラハンの頭の関係は分かっていない。


 体の一部、そしてデュラハンが頭を大切にしていることは分かっている。

 大事にはしているのだがだからといってそれが弱点でもない。


 分離していて、大切そうに抱えているのでそう考える人もいるけれど頭を破壊してもデュラハンは倒せない。

 理性を失ったように暴れたり頭を取り戻そうとはするので効果がないわけではないが頭を狙っても大きな効果はない。


 案の定頭を盗まれたデュラハンは怒り狂ったように頭の方に向かっていった。


「アイツら……俺たちに頭を押しつけやがった……!」


 何か策でもあるのかと思ったらグジェットに頭を投げ渡して、『デュラハンを引きつけておけ』とだけ言って距離を取った。

 デュラハンはグジェットの方に向かってきた。


「逃げたさ……弟と交代交代でデュラハンの頭を渡し合って。


 バカだよな、途中で捨てりゃよかったのに、ちゃんと仕事しなきゃ金がもらえないとか、デュラハンが戻っていって失敗したら俺たちのせいになるとか……そんな風に考えて」


 寝ない魔物のデュラハンはどこまで逃げても追いかけてきた。

 距離を取ってもこちらは人間なので休まなきゃ死んでしまう。


 そんな休憩の間にもデュラハンは正確にはグジェットたちを追いかけてきた。

 デュラハンを引き連れて人里にもいけず、正常な思考は無くなり、短い睡眠の間にもデュラハンに追いかけられる夢を見た。


 そしてある時デュラハンが追いかけてこなくなった。

 理由は分からないが逃げ切ったのだ。


「泣いたよ。


 弟と抱き合って命があることに。


 結局少し遠回りして戻ってみるとバンシークイーンの封印だけはしっかり解けて、一緒に討伐に向かった連中は1人も戻ってなかった。


 ふっ……デュラハンに敵いもしないのにバンシークイーンに手を出そうとするからだ」


 デュラハンだけ適当に逃しておめおめと帰ることもできない。

 本当に討伐しようとしたのか、様子見だけでもしようとして封印を解いてしまったのかは分からないけれどとにかく失敗したのだ。


 ざまあみやがれと思った。

 人のことを捨て駒にしようとして自分たちが失敗して死んでるのだ。


 スッキリとはしないけど当然の報いだと思う。


「……でも俺たちだけ戻りましたなんて言えなくて。


 報酬も要求なんてできるわけがない。


 だから必死に持って逃げたこの頭はどっかで売りゃ金になるかなと。

 もうこんな国にもいられないしどっか行って物好きな金持ちでも探して売ってまたやり直そうと思っていたんだ。


 なのに……なんで俺らばっかり……」


 事情はあった。

 盗みたくて盗んだわけでもなく、悲しい被害者であった2人。


 膝を抱えて声を殺して泣き出したグジェットにショウカイも罪悪感を感じる。


「……あ、アニキ……?」


「シェッド!」


 弟のシェッドが目を覚ました。

 一時死にかけていたにしてはかなり顔色が良くなっているのでもう大丈夫だろう。


「なにが……あったんだ?」


 シェッドは起きあがろうとして顔をしかめる。

 ひどく腹が痛い。


 ポーションのおかげで峠は越えたがまだ回復しきっていないのだ。


 グジェットが軽く事情を説明する。

 身に起きたことは信じがたいが目の前にその証拠があるのだから信じずにもいられない。


「……ありがとうございました。


 そしてお騒がせしてすいませんでした。


 何もないけど、命はあります。

 どこかに行ってこいつと2人やり直します。


 ご先祖様の残した裏切りの情報を売って儲けようとしたバチが当たったんですね」


 金もないし、アテもない。

 けれど唯一の家族はいるし命はある。


 まだやり直すことは十分に出来る。


「……そうだな、まだヴァルシュゲルフェン城の地図は持っているか?」


「えっ?


 ああ、はい」


「じゃあ地図を俺に買わせてくれないか?」


「……まさかバンシークイーンを倒しにでも行くつもりですか?」


「俺は分かんないけどその可能性もあるな」


 ライム次第だけどヴァルシュゲルフェ城にライムを送り届けねばならない。

 もしかしたら地図は役立つかもしれない。


「あんなもの、タダで差し上げますよ。


 それに弟を助けてくれたポーションも良いものだったみたいでそのお礼だと思ってください」


 あの地図がなければこんなことにはならなかった。

 ここまで大切にしてきたので捨てるのも忍びないので引き取ってくれるなら喜んで差し出すつもりだ。


「それとそうだな……」


「まだ何かあるんですか?」


「ちょっと返すものがね」

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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