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頭泥棒の事情6

 それが気になるというのだ。

 魔物であるデュラハンに協力している、そんな馬鹿馬鹿しい話あるものか。


 しかし目の前で起こったことは現実だし、ショウカイが他の魔物を出して指示しているところも見た。

 ただショウカイとしてもグジェットに事情を細かく説明してやるつもりはないし、そんな義理もない。


 ショウカイが遠回りに話すことを拒否したのでグジェットとしてもこれ以上突っ込めない。

 立場としてはショウカイたちの方が今は圧倒的に上なのだ。


「そうだな、俺としてはそっちの話を聞かせてほしいな」


「俺たちの話ですか?」


「そう、倒す実力もないのにライムの頭を盗んだこととか、なんで頭をまだ持ってたのか、そんな話」


「……それは」


 ショウカイが言えることではないがこの兄弟はそんなに強くない。

 一定の実力はあるのだろうがとてもじゃないけれどデュラハンなんて魔物を倒せるほどの実力はない。


 そもそもライムのところまで辿り着けるとも思えない。


 なぜそのような実力でデュラハンに挑んでいったのだろうか。

 そしてさらにどうにかたどり着いたとして、どうしてわざわざデュラハンの頭を盗んで逃げ出すなんてことをしたのか。


 その後頭を持ったまま逃げ回って最後には床下に保管しておくなんて行為も意味がわからない。

 追いかけられているなら途中で捨てればいいのに。


「……聞いてくれますか?


 俺たちは捨て駒だったんです」


 どうせもう何も失うものもない。

 ポツリポツリとグジェットは話し始めた。


「俺たちは今はカズールと名乗っていますが、それは母方の姓で小さい頃はワロンと名乗っていました。


 訳あって没落した隣の国の元貴族だったんですがさらに家系を辿っていくとワロンは貴族ではなく、隣の国の出身でもありませんでした。


 昔ワロンはこのアイロ・エスタファのアイロに仕える騎士だったんです。

 王様に直接仕える秘密部隊の1人、それがワロンのご先祖様でした」


 王様直属の騎士として警護から汚い仕事までなんでもこなす役割を担っていたのがワロンだった。

 重宝され、表立ってはいけないが地位を与えられ不自由のない生活を送っていたワロンだが事件が起きる。


 バンシークイーンに関わるあの大事件である。

 その過程でワロンは国を見限った。


 新しく国王になったハンラッドも信用できなかったしワロンは裏側を知りすぎていた。

 隣の国に逃げ出したワロンはアイロの情報を売り、保護を受けて貴族となった。


 裏の仕事もこなすワロンは優秀だったので時が流れていつしか本当に貴族となっていった。

 順風満帆、もはや汚い騎士であったワロンはどこにもない。


 しかしワロンは一線を越えてしまった。


「そんなことをする父親じゃなかったのに……誰も話を聞いてくれず、父は狂人として嫌われて処刑された。

 まるで口封じでもされたみたいだ。


 それで俺たちは遺品を整理している中でワロンがそんな歴史を持つ貴族だったと知ったんです。


 保身のためでしょうか、その当時のアイロの機密文書などが残っていました。


 その中にヴァルシュゲルフェン城の内部構造が書かれた地図もあったんです。


 王様に直接仕える騎士だったワロンが持つ地図にはなんと秘密の通路まで書かれていたんです」


 貴族だったワロンが没落した時グジェットはまだ子供だったがその地図を見て使えると思った。

 他の機密文書は破棄して完全に過去を消したがその地図だけは持っていった。


 カズールでも当然にワロンの子は歓迎されなかった。

 辛酸を舐め、命を絶ちたくなるような苦境を兄弟で支え合って生きてきた。


 そして身を立てる手段として冒険者となり、それなりに名前も売れてきた頃にグジェットは温めてきた計画を実行することにした。


 といってもやろうとしたことは単純だ。


「今の王様がヴァルシュゲルフェンの現状に不満を抱いていることは有名でした。


 なので俺はヴァルシュゲルフェン城の内部地図を売ろうと王城に近づいたんです」


 ちょうど王様もヴァルシュゲルフェン城に手を出そうと秘密裏に人を集めていた。

 そんな時に安全にバンシークイーンの近くまでショートカットできる秘密の道が書かれた地図を持ってきたグジェットが近づいてきたので王様も警戒しつつ受け入れた。


「ただ情報を買ってくれればよかったんですけどね。


 信頼されてなかったのでしょう、俺たちにも同行して道案内するようにと言われました」


 その時は喜んで話に飛びついた。

 バンシークイーンの討伐に成功したらヴァルシュゲルフェン周辺が丸々取り戻せる。


 グジェットたちには成功報酬だけでなく協力した冒険者として名前が挙げられ、領地ももらえる。

 再び貴族となれる。


 そんな甘い誘いだったから。


 これで周りの連中を見返してやれると思った。

 うまくいけばワロン没落についての調査もできるほどに地位や金銭を回復できるかもしれない。


「ただ……俺たちは考えが甘かったんです」


 バンシークイーンに手を出すことは御法度。

 歴代の王が禁じてきたこと。


 たとえ今の王であってもいきなりバンシークイーンを倒しますとはとても言えなかった。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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