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頭泥棒の事情3

 その黒い鎧には見覚えがあった。

 散々追いかけられてしばらく夢にまで出てきたデュラハンであった。


 男の顔が一気に青くなる。

 こんな町中に魔物が、しかもかなり強力な個体であるデュラハンが目の前にいる。


「グッ!


 うぅ……」


 ライムは男の首を掴むと壁に投げつけた。

 壁板が割れるほどに強く叩きつけられた男はグッタリと座り込んで動くことすらできなくなった。


 同じデュラハンなのに違う。

 以前はただ力のままに剣を振り回していたのと異なって理性的に攻撃してきている。


 それに怪力の妙な女と特徴もない優男が一緒にいる。

 なぜ魔物と人がいるのだ。


 どうやってここを見つけた。

 町中に入ってどうして見つからなかった。


 疑問が頭の中をぐるぐると巡る。

 痛みで体が動かなくて頭ばかりが動く。


「お、お前ら……なにもグッ!」


「ここから先質問するのは私の方です」


「なん……だと…………」


 女声のデュラハン。

 やはりこいつはバンシークイーンを守っていたデュラハンであると確信する。


 やたらと首を掴まれるので男の首は真っ赤になっている。


「私の首はどこですか?」


「へっ、そこに乗ってんじゃねえか……」


「これはあなたたちが盗んだのでその代わりです。


 あなたたちが盗み出した私の頭はどこですかと聞いてるんです」


「し、知らねえな」


「ウソをつくとタメになりませんよ?」


「なら殺せばいい!


 お前になんか見つけられるはずが……うわああああ!」


「誰がそんなにベラベラと話していいと言いましたか?」


 ライムが男の足に剣を突き立てる。

 脅しではなく本気だと男は痛みに顔を歪ませて理解した。


「ど、どうせ言ったところで俺たちを殺すんだろ!


 それなら魔物のいいなりになんかなってやるかよ!」


 なんにしたってこのまま頭の場所を教えたからといってありがとう、さようならと終わるはずもない。

 こんなに簡単に足をぶっ刺してくる相手なら終わった後の処理も想像がついてしまう。


 何の希望もないけれど一分一秒でも長く生きれば何かの幸運でもあるかもしれない。

 誰かが魔物に気づいて人でも呼んでくれれば逃げていくことだってあり得る。


 恐ろしく確率の低い賭けだけど大人しく話すよりは生き延びる可能性がほんのわずかはある。


「た、ただ……」


「ただ何ですか?」


 しかし男は少ない可能性の中で別の賭けに出ることにした。


「弟は、見逃してやってくれないか?」


 こちらもまた可能性のない賭け。

 わざわざ1人逃す必要性などどこにもない。


「頭の場所は教えるから……」


「誰がそんな戯言信じるとでも?」


「ライム!」


「…………なんですか?」


 ライムの様子がおかしい。

 もっと理性的で残虐性のない性格だったのに、今は攻撃性が高くて男のことをサラッと殺してしまいそうな雰囲気すらある。


 止めたショウカイにすらかかってきそうな言葉の棘も感じる。


「本当かどうか聞いてやってからでもいいだろ?


 そんなはなからウソを決めつけないでさ」


「ラ、ライム殿……?」


「…………私、頭冷やしてきます。


 ショウカイさん、どうか代わりにお願いします」


 長い沈黙の後、ライムは重たい足取りで部屋を出て行った。

 大きな物音がして、ライムが壁を殴りつけているのがチラリと見えてしまった。


 頭を奪われた時には昼も夜もなく暴れたらしい。

 今近くに頭があるということで魔物の本能が刺激され、ライムも自身の中にいる魔物と戦っているのかもしれない。


「あ、あんたら……何者なんだ!」


「何モンだろうとどうでもいいだろ?


 ライムの頭はどこにある?


 ちゃんと答えるならあんたの弟は見逃してもいい」


 別に兄の方も殺すつもりはショウカイにはないけどせっかくライムが脅してくれたのだからこのまま恐い感じを続けておく。


「ほ、本当だな?


 本当に弟を助けてくれるんだな?」


「俺は寛大だからな。


 ライムが戻ってきたらどうかはわからんぞ」


「ライム……さっきのデュラハンか。


 分かった。

 デュラハンの頭は床下に隠してある。


 そこのテーブルのあるカーペットの下の床板が外れるようになってる」


「ノワール」


「はい、ご主人様」


「ノワール!」


 ワイルドガールノワール。

 ショウカイの意図は通じたけど人間らしい繊細さは全くない。


 テーブルの下のカーペットの下。

 まずはテーブルを避けなきゃならないのだけどノワールにやってもらおうと思った。


 ノワールはテーブルの足を掴むとサッと窓の外に放り投げたのだ。

 丁寧に場所をずらすよりは早いけどさ、やり方ってもんがあるだろうに。


 窓の外に飛んでいったテーブルは地面に激突してただの木片になる。

 兄の男の顔も引きつっていて、とんでもない女だと冷や汗が滲み出てくる。


 カーペットも窓からポイっ。

 何で外に捨てる。


「ちょ……それは!


 ああぁぁ……」


 よく見れば小さく手を入れるところがあったのだけどノワールにはお構いなし。

 床板を殴りつけて無理矢理下の収納をオープンにしたノワールに兄の男がガックリとうなだれる。


 ノワールなりの手っ取り早い方法。

 床下に手を突っ込んだノワールは1つのヘルムを取り出した。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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