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名前を出すのもはばかられる貴族2

 イブラはまだアイロ・エスタファではなくその手前の国の大きめの都市になる。

 アイロ・エスタファだけでなく他の国にも近いので交易の起点ともなる都市で情報を集めるには良さそうだと思った。


 嫌でも視線を集める3人組が冒険者ギルドに入ってきた。

 デカい鎧の騎士と褐色の美しい獣人と特徴のない若い男。


 繋がりのわからない、ここらの者じゃない奴らに冒険者ギルド中の視線が向く。

 暗黙のルールでジッと見ることはないが気になっているようでチラチラと様子を伺われているのは分かっている。


 そんな視線を一々相手にはしていられないので真っ直ぐ受付に向かう。


「今日はなんのご用で?」


 やや愛想の悪い強面の男性が対応してくれた。


「アイロ・エスタファに行きたいんだ。


 だから情報が欲しい」


 ショウカイはあらかじめ用意していた冒険者証を出す。

 前のように身分を確かめることがあるだろうと思ったのだ。


「ふん、そうかい。


 これをやるよ」


「これは?」


「アイロ・エスタファに関する資料だ。


 身分証いらん。

 今は死にに行きたい馬鹿の1人でも欲しいみたいだからな」


 受付に渡されたのは一冊の冊子。

 ペラペラと中を見るとアイロ・エスタファの状況が書いてあるようだった。


 聞きにくる人が多いので前もって準備しておいたのだ。

 この状況で聞いてくる人はある程度事情も分かっている。


 最初から説明するよりも好きなように冊子でも見てもらえればお互いに楽で早くていい。

 もはや経験や実績を見て人を選んでいる場合でもない。


 相当状況は悪そうだと思った。

 

「ありがとうございます」


「まあ、命は無駄すんじゃねえぞ。


 生きてりゃどうにかなることの方が多いんだからな」


「はい、分かってます」


「分かってるやつはそんなとこ行かねぇよ」


 なんだこのツンデレみたいな優しさ。


「それともう1つ聞きたいんですが」


「なんだ?」


「ワロンという人のことを探しているのですけど……


 えっ?」


 一瞬でギルドの中が静まり返った。

 酒場もあるギルドなのでそれなりに賑わいを見せていたのに、水を打ったように静かになった。


 チラ見程度に見ていたはずの人たちがショウカイの方を見ている。

 その視線と静けさの意味が分からなくて困惑するショウカイ。


「……なんで探してるんだい?」


「えっ?


 えっと……ちょっと返してもらいたいものがあって」


「ふーん……


 まあ、なんでもいいがアイロ・エスタファじゃなくてここで死にたくなきゃあんまりその名前は言って回らない方がいい」


「……そうですか」


 理由を聞きたいけれどそんな雰囲気じゃないので大人しくショウカイは引っ込むことにした。

 一気にアウェイ感の強くなった冒険者ギルドを後にした。


 ワロンという名前を出した瞬間ギルドの雰囲気が悪くなった。

 悪い方面でワロンは有名のようで心臓がキュッとなる視線を向けられたので冒険者ギルドを出たショウカイはため息をついた。


「なんなんだ……」


「ワロンという人は相当嫌われているみたいですね」


 ワロンがいるということはわかったのだけどそれ以上聞き出すことは難しそうだ。

 聞いて回ると命を狙われるほどだとはどうしたらいいのだ。


「何者だ!」


「グエッ!」


「ノワール?」


 走り出したノワールが後ろにいた男の首を掴んで壁に押し当てた。


「ずっと後をつけていた人ですね」


「え、ほんとに?」


「ちょちょちょ!


 落ち着いて……グエッ!」


「何が目的だ!」


「何言ってるか分からな……」


「ノワール、降ろしてあげて、そのままじゃ死んじゃうよ」


 気づいていなかったのはショウカイだけだった。

 冒険者ギルドを出た時からこっそりと男が付いてきていた。


 ノワールとライムは気づいていたけれど確証が持てていなかった。

 けれどそれなりの距離を歩いてきてもまだ付いてくるのでノワールが動いたのだ。


 首を絞められて顔が青くなりつつあった男はノワールに問いただされてもノワールの言葉が分からない。

 ショウカイに言われてノワールがサッと手を放す。


「誰ですか?


 なんで後をつけていたんですか?」


「ゴホゴホ……申し訳ありません……ちょっと声をかけるタイミングを伺っていたので。


 ワロンについて知りたいのでしょう?


 その……誠意次第ではお話しないことも……?」


「誠意、ねぇ……?」


「はい。


 どうですか、いい店を知っているのでそこで少しお話でも」


「いいでしょう。


 うちのノワールの力は分かったでしょうから変な真似はしないでくださいね」


「もちろんです。


 私はピードゥと申します。


 ではこちらに……」


 ピードゥについて行くと普通のレストランだった。

 警戒していたけど中に入ると本当になんの変哲もないレストランだけどお高めみたいで個室に通された。


 料理はピードゥが適当に注文する。


「このお店は良いところなんですよ」


「それはいいんだけど……」


「そうですね。


 食べりゃ分かりますから本題に入りますか」


「誠意ってやつを見せればワロンについて話してくれるんだな?」


「ええ、この町でワロンについて聞き回るのは危ないですよ。


 私なら誠意1つでちゃんとお答えします」

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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