話で聞くよりヤバそうです3
ショウカイは詳細めな地図の写しをお願いしたのだけれど、ついでにアイロ・エスタファの詳細な情報をまとめてもらうこともお願いした。
地図の方より先に出来上がった報告書を受け取ったショウカイは内容を読んで頭を抱えた。
アイロ・エスタファは元々アイロとエスタファという2つの国が併合して出来た国だとかそんな国の変遷はどうでも良い。
大切なのは今どうなっているかである。
ヴァルシュゲルフェン城は数年前まで国によって入ることを禁じられていた。
周りの魔物を国主導で倒して維持されていた場所であった。
しかしアイロ・エスタファの王様が世代交代してから状況が変わり、ヴァルシュゲルフェン城やその周辺を取り戻すことを王様が宣言した。
冒険者なども自由に攻略することを許され、攻略したものには国から報酬金が出ることになった。
そうして冒険者が集まりライムの話に繋がってくるのである。
魔物の根城になっている城を冒険者たちは攻略していった。
統率されているでもない魔物などものの数でもない冒険者たちはライムことデュラハンのところにまでたどり着いた。
激しい戦いの末にデュラハンを倒した冒険者一行は城の奥に足を踏み入れた。
そこには封印されたバンシークイーンがいた。
倒すためには封印を解かねばならず、バンシークイーンの封印を解いたのだけどそれが大きな失敗だった。
冒険者たちはバンシークイーンに敗北した。
残されたのは冒険者も敵わなかったバンシークイーン。
バンシークイーンの影響を受けてあたりに魔物が集まり、凶暴化し、その地域は荒れ果てた。
「だから私が封印を守っていたのに!」
目がないので物の形は分かっても文字が見えないライムのためにショウカイが報告書を読み上げた。
プンプンと怒るライム。
そらみたことかと言いたくなる。
こうなるだろうことはライムには分かっていた。
仮に倒せるなら何年も前に倒されているはずだ。
なぜ長い間ただ封印しておいたのかその理由を考えなかった愚かな王。
時は人から恐怖を忘れさせ、先人の話を軽んじさせる。
「もし倒せそうなら私だって道を開けています。
誰か止められるなら止めてほしい……一体どれほどの時をそう思い続けてきたことか」
「ちなみに行ってどうするつもりなんだ?」
もはや魔物の巣窟と化した城。
魔物であるライムなら襲われることなく中を闊歩することも可能なのかもしれないが守っていた封印が解かれてしまったのだから守るものはない。
「まさかまた封印でもするつもりか?」
「……それ以外に私が私である理由がありませんから」
「勝算は?
前の時も1人でやったのか?」
「前は多くの騎士と共に戦いました。
彼らのほとんどが死に、私はなんとかバンシークイーンの封印にのみ成功したのです。
勝算は……ありません」
「行くのはヤメダ」
「な、なんでですか!」
「うっせえ、死への道案内しろと言われてするバカがどこにいる!
例え魔物だろうと自殺しに行くのを助けはしないぞ!」
ライムは死にに行こうとしていた。
多くの仲間の犠牲でようやく成功した封印を守り切ることもできずに城の周りを死の土地にしてしまった。
倒せるなら倒すつもりはあるがかつて優秀な騎士が大勢いても勝てなかった相手だ、封印することすら厳しいことだろう。
そんなことショウカイは許さない。
なぜ死に場所までご丁寧に案内しなきゃならないのか。
生きている限りやり直せるし、挑戦もできる。
バンシークイーンのことを知っているなら周りにそれを伝えるなり手助けする方法はいくらでもある。
なのに全てをかなぐり捨てて策もなく勝てもしない相手に戦いを挑むとは何事なのか。
「まともで良い魔物そうだと思ってたのに俺の勘違いだったようだな。
シュシュのことは感謝するが俺はお前の遊びに付き合うつもりなんてない」
「遊びのつもりなんてありません!」
「うっ!」
ライムがショウカイの襟を掴む。
遊びと言われて非常に頭にきた。
「その手を放しなさい」
「貴様……ご主人様への恩を忘れるか……」
「ダメだよ、暴力は、特にこの人には」
一瞬でシズク、ノワール、スーがライムを殺さんばかりの殺気を放って止めに入る。
戦ったらみんなとライムどっちが強いだろうか。
「みんなありがとう。
ノワールもシズクもスーも今俺を助けるために命だって投げ出そうとしてくれている。
大切なもののために戦おうとしている。
本気だ、本気で助けるためなら命だって差し出す。
ライム、あんたは何のためにその命を差し出そうとしている?」
「な、何って……」
「過去死んだ者への贖罪?
何もできなかった自分への戒め?
忠誠、後悔、怒り……なんだ?
今まだ出来ることもあるのに、救えるものもあるかもしれないのに全部投げ出して!
勝てないけど命をかけて戦ってみます?
そんなお遊びよそでやれよ!」
みんな必死で生きている。
追い詰められて殺してくれと言った人はいたけれどみんな生を追って生きていた。
ショウカイだって生きたかった過去がある。
生を渇望した日々があった。
ライムの無気力に死に向かう姿がショウカイにはムカついてしょうがなかった。
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