首無し騎士の首はどこ6
早速ナンタラ城に向かう、ところなのだけどその前に1つ。
「不自然すぎません?」
「頭ないよりいいだろ」
布を丸めてライムの首に乗せてそこからショウカイのクロークをかぶせる。
深くフードを被ればなんとなく頭っぽく見えるはずだ。
ショウカイたちは城の方ではなくて、村の方に戻ってきていた。
なぜ村の方に行ってしまうのか突き止めたいと思ったのだ。
最終的に城に連れて行ってもまたこの村に戻ってきてしまっては本末転倒なことになる。
この村にくる原因を調べて、取り除かねばならないとショウカイは考えたのだ。
近づけば原因がわかるかもしれないとライムが言うのでバレるリスクはあるけれどちょっと村の方を調べてみる。
小さいフードを被って、時折首が座っていないかのように頭が動くライムはよく見ると不自然だけどこんな威圧感のある人に近づいてくる物好きはいないだろう。
声も女性なので気づかれないようしゃべりもしないので怪しさ満点でも手を出してこない限りは確証も得られない。
「こっちです……」
何かを感じたのかライムはフラフラと歩いていく。
「あれ、ショウカイさん?
ええと……そちらの方は?」
連日戻ってくるショウカイ。
1人で来たと思えば次は知らないデカい鎧騎士を連れている。
恩人に深く突っ込んで事情を聞くことはしないけれど非常に不思議な人である。
ライムのことは魔物を追い払うのに協力してくれた人。
追い払っただけなのでまだ戻ってくる可能性があるから一晩様子を見たくて周辺を見て回っている。
ということにしておく。
「そ、そうなんですか」
またしても星の見えない相手。
自分がおかしくなったのかと思うけどショウカイは相変わらず見えているし、昨日村の人から死の星が遠ざかったのを確認したばかりだ。
「そうですね、では泊まっていかれますか?」
どうせ大きな洋館を1人で使っている。
部屋は余りに余っている。
「えっ、あっ、いや、大丈夫です」
そんなこと言われると思ってなくて動揺するショウカイ。
一瞬それもいいかもと思ったけどライムの夜の状態を見せたらダメだと気がついた。
承諾してしまいそうになって怪しい返事でお断りすることになってしまった。
「えっと、こちらの方が人見知りなもので!」
乾いた笑いでごまかす。
「ショウカイさん、こちらの館はこの人のものですか?」
「この館?
確か別の人のお屋敷だったって村の人が言ってたような気がするけど」
「どなたの屋敷なのかちょっと聞いてもらってもいいですか?」
「分かった。
あのマーリンさん、このお屋敷ってマーリンさんのものじゃないんですよね?」
「ええ、どこかの貴族が別荘にしていた建物で没落でもしまったのか長いこと人の手も入らず放置されていたんです」
「誰のお屋敷だったのかは分かりますか?」
「分かりますよ。
急に没落したんでしょうかね、中の物はそのまま残っていたんですよ。
剣などの装備品や食器家具、日記なんてものもありました。
肖像画まで飾ってあったりもしていて……名前はええと…………ワロンという貴族ですね」
顎に手を当てて貴族の名前を思い出してくれたマーリン。
「何かピンとくるか?」
「ワロン……ちなみにその残った装備品を見せてもらうことは出来るでしょうか?」
「残っている装備品を見せてもらってもいいでしょうか?」
「装備品をですか?
構いませんよ。
武器の手入れに関しては素人で手を付けていませんが装備品も放置されていますからね。
欲しいのがあったら持っていってください。
使われない運命のままでいるくらいなら誰かに使われた方がマシでしょうから」
大きな洋館にも関わらず中はマーリンの手によって綺麗に掃除されていた。
マーリンに案内された洋館の奥の部屋。
そこにはいくつかの武器や防具がうっすらと埃をかぶって放置されていた。
お手入れの方法も分からないので時折埃を払う程度にしか手を出さない。
「欲しいものがあったら勝手に持っていってください。
なんなら全部持っていっても文句言う人もいないでしょうね」
ごゆっくりどうぞとマーリンは部屋を出ていった。
槍だったり剣だったりと意外と色々置いてある。
しかし仮にも他人の物、それにショウカイにはドワーフ製の剣である熊公がある。
熊公以上の剣なんてそうあるものでもないし、あったとしても思い入れのある熊公を使う。
「それで何か分かったか?」
「はい……それらの武器が私を引きつける原因です」
「武器が……?」
「もっと言えば武器に染み付いた魔力がです」
「説明してもらっても?」
武器や魔力がライムを引きつけるとはこれ如何に。
「私には頭がありません。
目もないですが普通に歩き、ショウカイさんをちゃんと認識しています。
どうやってそうしていると思いますか?」
「どうって……どうやってるんだ?」
「魔力を感知して見ているのです。
言葉では説明しにくいのですが人よりも遥かに魔力の感知に優れていて、目で見るように魔力で見ることができるのです。
だから今もショウカイさんの顔も魔力も見えていて分かるのです」
「ほーん、なるほど」
魔力が見える、あるいは魔力で見えると言ったところか。
ショウカイにはその感覚を完全に理解することはできないけれど言いたいことは理解できる。
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