首無し騎士の首はどこ5
「あっ、いえ、すいません……つい興奮してしまって……
ただこの鎧の体デカくて不便でして。
可愛くないし」
「と、とりあえずライムは女性ってことでいいんだな?」
可愛いデュラハン。
鎧を可愛いと思ったことがこれまで一度もないので鎧の時点で可愛いは厳しい。
「ちゃんとレディーとして扱ってくださいね」
「俺はナイトじゃないからそれなりにな……」
ショウカイはゴツい鎧の女性デュラハンライムと仲間になった!
ーーーーー
「あっ、ショウカイさん!」
マーリンは玄関のドアを直していた。
ノワールに力負けして自分の魔法でドアに叩きつけられたのだがその衝撃で建て付けが悪くなってしまった。
洋館を修理して使っているのもマーリンなので日曜大工ぐらいのことは簡単にこなせるのだ。
何か作業をしている方が空腹もまぎれるし、この際ドアを新しくしてしまおうかとまで考えていた。
ただ新しいドアもただではないし一から作るとなると手間もかかる。
誰かが訪ねてくる用事もないからドアを外してリメイクしてしまおうかとドアまで悩んでいた。
人が近づいてくる気配を感じたマーリンが振り返るとショウカイが歩いてきていた。
ノワールも連れずに1人で、少し思い悩んだような顔をしている。
しかしマーリンは気がついた。
「あれ……死の星がない」
重たく、あたり一面を覆っていたような死の気配が一切感じられなくなっていた。
理由は分からないけれどショウカイが何かを変えたことはマーリンにも察することはできた。
「マーリン、久しぶり」
久しぶりというほどの時間も経っていない。
「ええ、どうかなさいましたか?」
迫っていた死がなくなり、ショウカイがひょっこりと戻ってきた。
魔物を遠ざけると言ったがもしかしたら倒してくれたのかもしれないと考えた。
「結界を解いていただけないですか?」
「結界を……ですか?」
魔物を倒したとも遠ざけたとも言わない。
いきなり戻ってきて結界を解けとは何があったのだろうとマーリンは首を傾げた。
自分の判断が正しいのか迷っているように見える。
これは占いではなく、長年人を見てきた経験から分かる。
「少し待っていてください」
「あっ、どこへ?」
判断を下すのに材料が足りない。
マーリンは走ってどこかに行ってしまった。
勝手に家に入るわけにもいかなくて大人しく待っているとマーリンが走って戻ってくる。
「分かりました。
ショウカイさんのこと信じてみます」
マーリンは村まで走っていっていた。
村を覆う気運を見て暗い影がなくなり、何人かの村人を見ても死は遠ざかっていることが分かった。
事情があるにしても魔物の脅威は去った。
結界を解いても安全である。
それを確かめに行ったのであった。
「ありがとうございます。
正直もうお腹も魔力も限界でした」
「いえいえ、マーリンさんのおかげで助かった命は多いと思います。
これ、少ないですけど食料です」
「わっ、ありがとうございます!」
結界が解けたのかショウカイに分からないけれどマーリンが魔力を送らなくなったので自然と結界は消えていた。
ショウカイはまたマーリンと別れてみんなのところに戻った。
「ええっと?」
「もうそろそろ日が落ちるである」
「こうしないと暴れてしまいますからね」
「ライムがいいならそれでいいんだ」
戻ってくるとノワール、シズク、シュシュ、スーとそして白い塊。
ノワールに繭にされたライムであった。
意識を失ってから拘束するのでは遅い。
早めに拘束しておかなければいけない。
ライムがそれをよしとしているならショウカイにはなんの文句もないのである。
そんななのでもう移動もできない。
巨大な繭は放っておいて野営の準備をする。
「う……ううう……あぁ!」
「……なんかうめき声あげてるけど?」
「そろそろ魔物になってきたであるね」
「思っていたよりも激しそうだな」
こりゃ失敗したと思った。
テント横にいるライムは謎のうめき声をあげてモゾモゾと動き始めた。
気味悪いので距離を取りつつ眺めていたけれど飽きることもなくうめいて動く。
もっとテントを離しておくべきだった。
抜け出そうとしているのか、また村の方に行こうとしているのか飛び跳ねているライム。
なんか気持ち悪い。
ノワールにライムを離れた場所に置いてもらう。
夜中ずっと鎧がカタカタいう音とうめくような声を出していたライム。
これが続くと寝不足になってしまうことまちがいなしである。
ーーーーー
「耳栓が必要だな……」
それともっと距離を置き、野営するのも人から離れなければいけない。
反省点を洗い出してショウカイは浅い眠りでしょぼしょぼする目をこする。
ノワールとスーも若干寝不足気味でシズクは相変わらずそう言った外部の刺激に疎くて問題はなかった。
シュシュも特に気にならないようで朝には元気に体操していた。
朝になってライムに何回か声をかけた。
ショウカイが声をかけると魔物状態のライムは激しく反応してうめき声をあげていた。
早く意識が戻らないかなと時間を置いて声をかけていくと、激しい反応を繰り返し無反応の時を挟んでようやくライムの意識が戻った。
第一声が呑気におはようございますだから本気で何をしていたか覚えてないのだろう。
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