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首無し騎士の首はどこ2

「ライム殿とワタクシは互いに互いを助け合った仲である……」


 まどろっこしいなと思うがツッコミ入れると話が無駄に長くなりそうなのでショウカイは大人しく聞くことにした。


 ーーーーー


「ふええ……怖いである……」


 意気揚々と走り出したはいいがすぐに不安に襲われるシュシュ。

 昔、自分だけだった頃や女王様に仕えている時は孤独であっても特別それに関して感情を持つことはなかったのに。


 それが弱くなったとは思わない。

 でもそれだけショウカイたちの存在がシュシュの中で大きくなったのだと思った。


 あとは状況も悪い。

 無駄なく移動するためにはこの見えない壁沿いを進んでいく必要があるのだけれどそうすると必然的に逃げ道が制限されることになる。


 何かがいるかもしれない状況下でそのような制限があることもまた不安を増している。


 とりあえず早く向こう側に行っておかなければ。

 不安を振り払うように走るシュシュ。


 糸で背中に背負っている心の支えであるクッキーもあと1枚しか残っていない。

 もっと大切に食べればよかった。


 思っているよりもはるかに結界の範囲が広い。

 結界の湾曲は緩やかでなかなか回っていっている感じがしない。


「もう1枚食べちゃおうか……いや、ダメである!」


 心の寂しさは口寂しさにも繋がり、特にお腹も空いていないのにクッキーを食べてしまいたくなる。


 時折休憩を挟みつつシュシュは先の見えない結界を回り込もうとする。


「ハッ!」


 クッキーという誘惑に気もそぞろであった。

 しかしそんなに油断していたのでもない。


 なのに普通に囲まれた。

 そもそもどうしてここにいるとバレたのか。


「な、なぜ……そうか、クッキーのこの芳醇な香りかである!」


 シュシュは比較的匂いに鈍感な方でクッキーも食べるといい香りがするぐらいに感じているが甘い小麦の香りは鼻の良い魔物にはとても簡単に嗅ぎつけられる。

 人が容器に入れて持っているならともかく剥き出して背中に背負っているとモロバレである。


「しかも相手が悪いである……」


 相手は小型のトカゲ。

 複数体でシュシュを囲んでいて舌をチロチロと出している。


 クモは捕食者の側に存在することが多いがどの相手に対しても捕食者でいられるわけではない。

 クモを捕食する動物もいて、特にシュシュのような小型のクモは捕食の対象にされがちでもある。


 トカゲもものによってはクモを捕食する。

 中には逆にトカゲを捕食するクモもいるが何であれ良き友人関係になることはない。


 目を見ればわかる。

 あの目はクッキーだけでなくシュシュまで食べる対象としている目。


 後ろには見えない壁があり、シュシュを食べようとしているトカゲに囲まれている。

 最悪と言わずして何という。


「な、舐めるなである!」


 シュシュが糸を吐き出す。

 ブワッと広がった糸でトカゲの視界を遮ってその隙に逃げようとする。


「ふんっ、ワタクシを捕まえられると……フギャ!」


 逃走に失敗した!


 シュシュはトカゲの尻尾で叩きつけられて見えない壁に叩きつけられる。


「グ……ググッ、痛いである……」


 シュシュの頭にみんなとの思い出が駆け巡る。


 いや、走馬灯見んの早いだろとショウカイは思ったけど口に出さないで話の続きを聞く。


「もっと……美味しいもの食べてみたかったであるな……


 ミクリャ様の……成長した姿も見たかったであるし、ショウカイ様の子供の名付けもしたかったである」


 おい、何でだよ。


 トカゲが完全にシュシュを取り囲む。

 慈悲もないトカゲはバリバリとシュシュのことを食べるだろう。


 せめて美味しかったと言ってほしいが足も少ないこの三下クモが美味しいのだろうか。


「クッキー食べておけばよかったである!」


 足で顔を覆い、痛みに備えるシュシュ。


 しかしいつまで経ってもトカゲは襲ってこなかった。


「……な、なんであるか?」


 ソーッと足をずらして確認してみる。


「ぎゃあああ!


 何であるか!?」


 目の前には真っ二つになったトカゲの死体。

 他のトカゲは逃げてしまったようでいつの間にこんなことになったのか分からない。


「な、何が起きたであるか……」


「大丈夫ですか?」


「うおおおおっ、今度は何であるかー!」


 ちょっと見上げるとそこに黒い鎧が立っていた。

 禍々しくて威圧感のある魔力に晒されて震えるシュシュ。


 トカゲどころではない相手である。


「ひ、ヒイィぃ……ワタクシなんか食べても上手くないであるよぅ……」


「食べませんよ?


 頭もありませんし」


 表情は分からないけれど笑っているような声色。


 そういえばトカゲが真っ二つになっているのは鋭い剣か何かでやられたようだ。


 もしかして助けてくれたのではないかとすぐに気づいた。


「た、助けてくれた……であるか?」


「そうです」


「な、なぜであるか?」


「あなた、魔物なのに人の言葉を話していますね?」


 ずっとシュシュはショウカイと話すのに人の言葉を話していた。

 もはやクセみたいなものだし、魔物の言葉だろうと人の言葉だろうと魔物には通じるから問題はないのだ。


 今はショウカイも魔物の言葉でも問題はないのだけど人の言葉を話す魔物っていうのは特別感があって良いのだ。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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