何故飢餓に喘ぐのか1
「シュシュ大丈夫かね?」
「んーまあ大丈夫だと思うよ。
なんだかんだシュシュは優秀だしな」
おそらく逃げることに関してはシュシュは誰よりも優秀である。
大体の魔物はシュシュのような小型な魔物は襲わないし足の速さと糸を駆使したシュシュを捕らえるのは簡単なものではない。
戦闘能力に関しては全く期待していないが他のところでシュシュはとても出来た魔物である。
スーの心配ももっともだけど心配ならシュシュと一緒にいてもいいんだぞというと速攻でイヤと否定された。
「おっ、見えてきたな」
見えない壁からそう遠くなく、村が見えてきた。
寂れた雰囲気のない割と大きめの村に見えたが人の姿が見えない。
「なんだなんだ?」
スーとシズクは再びリュックの中に隠れてショウカイとノワールで村に近づいた。
居心地が悪い。
村に近づいても人の姿はなく、妙な雰囲気があった。
よく見ると外に人がいないだけで中からショウカイのことを見ている人たちがいることに気がついた。
熱烈な歓迎は望んじゃいないがこんな風に警戒されたように家の中からジロジロ見られては気分は良くない。
何かはありそうだけど今のところは村に直接問題は起きていない。
頼まれた確認もこんな状況ではとりあえず村は無事だったぐらいでいいだろう。
シュシュのこともあるし早く村を抜けて合流してしまおう。
軽くため息をついて村の中を歩いていくショウカイとノワール。
物音一つ立てない村人たちに違和感を感じながらも出てこない以上は話も聞けない。
「あ、あの!」
そういえばこんなことあったなと思い出す。
ソリアと青色魔塔に向かっていた時だっただろうか。
家の影から飛び出してきた少年がヘロヘロとショウカイの前にへたり込む。
「おい、大丈夫か?」
「あの……」
「なんだ、言ってみろ?」
「食料は……ありませんか?」
「食料だと?」
ショウカイの前に飛び出してきた少年はよく見ると頬がこけ、目の生気が薄い。
手足も細くて話すのもやっとな感じである。
「君の家は?
近く?」
「は、はい……」
「案内して」
「……わかりました」
フラフラと歩く少年についていき、少年の家に行く。
「お兄……ちゃん?」
「ペーイ?」
「みんな……旅の人が来たよ」
「ペーイ!
外の人とは関わってはいけないと……」
「でも、もう死んじゃうよ!」
ペーイ少年の家にはペーイよりも年下そうな女の子と母親っぽい女性がいた。
みんな痩せていて、満足に食事ができていないことが伺えた。
「事情は分かりませんが何か食べますか?」
「うっ……それは」
「お母さん……私、お腹空いた……」
「うう……お金はお支払いします。
何か食べるものがありましたら恵んでください」
「分かりました」
ショウカイはカバンの中から食料を出す。
ノワールをはじめとしてみんな結構食べるので食料は常に大量に持っている。
そしてこのカバン面白い性質もあって中では時間が流れていないのか食べ物が腐らないのだ。
たまたま長いこと忘れていたパンを入れっぱなしにしていたのだけれどカビも生えていなきゃフワフワの状態をキープしていたのだ。
生きているものは入れられないが生肉などの生の物は大丈夫なので食料事情も大幅に改善されたのである。
しかしアツアツのスープをカバンの中から取り出しては驚かれてしまう。
パンと簡単な干し肉など持ち歩いていてもおかしくない食料を出して分け与える。
何度も何度も感謝の言葉を繰り返してペーイと家族はパンと干し肉を食べる。
もうちょっとなんか出してやればよかったかなと思うがあまり調子に乗ると大体良くないことが起こるものだ。
小さい子供もいるので水代わりに柑橘系の果物を絞ったジュースをコップに注いであげる。
栄養が足りてないならこうした果物系のビタミンも必要だろうと思ったのだ。
「お兄ちゃんありがとう!」
女の子がジュースを口にしてニコニコとショウカイにお礼を言う。
「本当に何とお礼を言ったらいいか……
少ないですがこちらを」
「いえ、いいですよ」
「で、ですが……」
「お礼と言ってはなんですが何が起きているのか聞いてもいいですか?
村の異様な雰囲気もそうですし、どうしてそんなになるまで……」
お金があるなら食料は買えるはず。
家もボロ屋ではなく、小綺麗にしてあってギリギリまで食料を切り詰めるように見えない。
ショウカイの言葉に悩むような素振りを見せる母親。
「分かりました……親切なお方なので正直にお話しします」
この村はイルン村という穏やかで平和な村。
村人たちが助け合って生きている何の変哲もない村だったのだが1つ他と違う特徴があった。
それは魔女が少し離れたところに住んでいるのである。
魔女は悪い人ではなく、近くの森から取れる薬草なんかを加工して薬を作ったりして村のお金を支えてくれていた。
実は魔法に関しても高い実力があり、大きな能力としてこの魔女には占いのスキルがあった。
そのために時々観光客が来たりもしていたのだが、よく当たる占いで時折災害や大雨などを占いで予知しては警告してくれていたので村人も魔女のことを信頼していた。
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