村に入れぬ訳5
ショウカイが目の前に現れてノワールは目をキラキラさせて尻尾を振る。
「流石です、ご主人様!」
「あー!
ノワずっこいぞ!」
「ふふーん、悔しかった来てごらんなさい」
キャッキャッと見えない壁を挟んでじゃれるノワールとスー。
召喚スキルはこの壁に阻まれることなく発動できるみたいである。
シズクとスーも問題なく壁の内側に呼んであげることが出来た。
「えっ……ええっ、ショウカイさまー!
ショウカイ様、ワタクシを忘れてるであるよー!」
1人……1匹ポツンと壁の外に残されるシュシュ。
見えない壁を叩いてアピールするシュシュであったがショウカイは悲しげに顔を逸らした。
「俺には……どうしようもできないんだ」
「な、なぜであるか……」
「シュシュは俺の魔獣じゃないから……中に呼んであげられないんだ!」
「ガ、ガーン!」
ショウカイの召喚スキルは何でもかんでも呼べる便利スキルではない。
呼べるのはショウカイが従属させた魔物。
つまりシュシュは中に召喚できないのである。
レギュラーシュシュ、ここで脱落。
「ここまで一緒にやってきたワタクシを見捨てるであるか!」
「んな人聞きの悪いこと言うな!」
「うぉーん、こんな見知らぬ地でこんな非力なワタクシを見捨てていくであるなー!」
「別に一生の別れでもないし見捨てるわけでもないだろ。
この道は続いていってるからこのまま壁沿いに回って道の向こうで待っててよ」
「くぅ……こんなことで亡き女王様への忠誠が揺らぐことになるとは……不覚である……」
「じゃ、また後でな」
「ま、待ってくれである!」
「なんだよ?
もうどうしようもないぞ?」
「ク……」
「ク?」
「クッキーをくださいである……」
「……なんで?」
「哀れなワタクシにせめてものご慈悲を〜
食料も持ってないワタクシにお情けを〜」
キラキラ?とした瞳でショウカイのことを見つめるシュシュ。
別に可愛くないけど可哀想にはなってきた。
「分かったよ。
2枚で良いか?」
「ははぁー!
ありがたき幸せである」
ショウカイは荷物の中からクッキーを取り出してシュシュに渡す。
「達者でな……」
「それじゃ完全にお別れのセリフになってしまうである!」
「ははっ、冗談だよ。
早くしないと意外とこっちの方が早く向こうのほうにたどり着いちゃうかもよ」
「クッ……待ってろである!
ワタクシが先に着いていたらもっとクッキー貰うである!」
「じゃあ本当に後でな」
ショウカイたちは行ってしまった。
「孤独とは寂しいものであるな……」
しばらくの間ずっとみんなと一緒にいた。
シュシュだけである時間の方が珍しいくらいで寂しいと感じるような時間は全くなかった。
そばに誰かがいないということの不安と寂しさをシュシュは感じていた。
「……うまままま」
とりあえずクッキーを一枚食べる。
空いた心の隙間をクッキーで埋めて、反対側で待っていよう。
先に待っていなくても置いていかれることはなくてもショウカイが寂しがってしまうかもしれない。
シュシュはそっと見えない壁に軽く体を押し当てると壁に沿って歩き出した。
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