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隣国へ8

 ウルガスは馬車の護衛の時と同じウィランドを中央に左にレーナン、右にノーンで後ろにテラットとジーという陣形をとっている。


 黒ずくめの襲撃者の先頭にいるリーダーらしき男がゆっくりと手を振り下ろし、攻撃の合図を出した。


 一斉に襲撃者たちが走り出す。


「ウォータースピア」


 ジーが魔力を込めながら杖を振ると空中に水の塊が続々と出来上がり細長く変形していく。

 瞬く間に十何本という水の槍が出来上がる。


「行け」


 もう一度杖を振ると水の槍が襲撃者に向かって飛んでいく。

 襲撃者は左右に分かれて水の槍をかわすが逃げ遅れた1人の腹部に水の槍が突き刺さった。


「やあっ!」


 水の槍だけではない。


 襲撃者たちが水の槍に気を取られている間にレーナンが距離を詰めていた。

 コンパクトに素早く2度剣を振るう。


 不意をつかれた襲撃者の1人が首を切り裂かれ、もう1人は腕を切り飛ばされた。

 囲まれる前に後ろに下がり深追いをしない。


 次はノーンが前に出た。

 縦に真っ直ぐ振り下ろされた剣。


 ここまで情けない姿しか晒していない襲撃者たちのリーダーがとうとう動いた。

 真っ二つにされそうになった襲撃者を肩で弾き飛ばして自分が剣の下に入って防ごうとした。


 しかしノーンの一撃は想像以上に重たかった。

 そのまま押し切られそうになって慌ててノーンの剣の軌道を逸らすようにして転がって避けた。


 一人一人が目覚ましい活躍を見せている。

 これは個人の実力ももちろん、テラットの力によるところも大きい。


 テラットは戦いが始まってから全員に強化魔法をかけ続けている。

 強化を受けた人はいつもよりも力強く、素早くなる。


 自分自身で出来ることは少ないけれど他人を大きく支援するのが強化術師。


 目に見えにくい働きであるがその効果は一目瞭然だった。

 しかも相手からは強化術師が強化しているなんて知る由もない。


 気づいたところで強化された前衛を倒さないとテラットまで辿り着くのは難しい。


 ウルガスがBランクになれた中心的な戦力と言っても過言ではないのだ。


「クソっ! お前らしっかりしやがれ、さっさと……チッ! 邪魔だ!」


 ノーンがリーダーを追撃して指示を出させないようにする。


 未だに混乱極める襲撃者をレーナンを中心にしてウィランドとジーが補助して倒していく。

 2、3人抵抗してみせた人もいてヒヤリとしたけれど相手には連携も何もなく、しっかりと連携して動いたウルガスには敵わなかった。


 気づけば残っているのはノーンの攻撃を防いで逃げ回っていたリーダー1人だけ。

 それでも散々逃げ回り、とうとうレーナン、ノーン、ウィランドの3人に囲まれた。


「目的を聞こうか」


 すでに体力は消耗してしまっているし囲まれては逃げ出すこともできない。


 なぜこんな実力のあるパーティーが護衛についているのか。

 事前調査ではBランクに上がったばかりのパーティーだったはず。


 真面目で品行方正なので態度が良くてランクを上げられた奴らなのだとばかり思っていたのにBランクでも上位に近い実力を持っている。


(こんなにあっさりと……)


 曲がりなしにもBランクはBランクなので手練れも何人か連れてきた。

 頭数も倍を揃えたのに。


「何も教えてやるかよ!」


 リーダーがウィランドに切り掛かる。

 それに反応して3人が動くのはほとんど同時のことであった。


 ウィランドがリーダーの剣を盾で防いでレーナンとノーンの剣がクロスしてリーダーの背中を貫いた。


「グフっ……」


 もう少しショウカイがお金でもケチっていたら結果は違っていた。

 下心なんか出して女性パーティーだったら勝てなかったかもしれない。

 ウルガスが不真面目で油断があったなら最初の奇襲で気がつかずにやられていたかもしれない。


 運が良かったとショウカイは倒れたリーダーを見ながら思った。


「他の旅人には申し訳ないですが、この量の死体をこの時間に片付けるのは難しいです。


 テントなど引き上げて移動しましょう」


 辺り一面は血の海だ。

 死体と血を処理するには夜がふけすぎている。


 血の臭いに誘われて魔物が集まってきてしまうし襲撃者にまだ仲間がいる可能性もある。

 血に囲まれて寝るぐらいならこのまま夜移動する方がいい。


「大丈夫ですか?」


 馬車の中でテラットが声をかけてくれる。


 死体を見たのは初めてじゃない。

 モヤッとした気持ちがないこともないけれどこの気持ちは巻き込んでしまったウルガスに対する罪悪感というか、申し訳なさというか。


「ショウカイさんが気に病む必要はありませんよ。

 あいつらは盗賊ですよ、死んで当然です」


 気づいている風にも見えるテラットは血生臭い戦いの後だとは思えないさわやかな笑顔で言い切った。


「このまま実力をお見せする機会がないかと思っていましたがちょうど良い相手が現れた、ぐらいに思っていただいて構いません」


 下手に真意を聞きだとそうとすると藪蛇になりかねないので素直にうなずいておく。


 そうこうしている間にも夜はさらにふけ、馬車は地図上で見ると国境を越えて隣の国に入っていた。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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