軽いお願い2
大きな都市じゃないので選択肢も多くない。
品物の質にさほどの差もないし値段的なところにも差がないので適当なお店に入る。
「いらっしゃい……おや、知らない顔だね。
冒険者さんかい?」
普段買い物に来る人ならみんな顔を知っている。
わざわざ別の店に買い物に行くこともしないので知らない顔ということは他所から来た人になる。
身なりを見れば商人には見えない。
旅して回る職業は少ないし夫婦でどこか行くようにも見えなくはないが可能性としては低い。
他所者が来たら大体冒険者か商人だ。
そう言っとけば間違いないし、相手がそれで不快に思うこともない。
「はいそうです」
店内を見て回る。
品揃えは多くも少なくもない。
値段は安くも高くもない。
至って平凡なお店である。
「なあ、にいちゃん」
「何ですか?」
店主はやや距離が近い話し方をする。
「サナズの方に行くのか?」
「サナズ?
……あー、はい」
サナズというのはこの国の首都で大きな都市であるし、サナズを経由してこの国を抜けていくつもりであった。
通過する1都市ぐらいの感覚だったのでパッと出てこなかった。
「あーとな、サナズの方に行くなら1つ頼まれちゃくれないか?」
「頼みですか?
内容によりますけど」
「ちっとばかし遠回りにはなるんだがとある村に寄ってほしくてな」
「何でですか?」
何か届け物でもすればいいのだろうかと予想してみる。
「いや、俺の娘夫婦が住んでいる村があってな。
定期的に連絡をくれるんだが、ここしばらく音沙汰がなくてな……
親馬鹿なことはわかってるんだが……とにかく様子を見てきてほしくてな。
なに、声をかけてほしいとかそんなことではない。
平穏無事ならそれでいいのだ」
平穏無事じゃなかったらどうする。
そんな野暮な質問はしない。
もしそれでお願いされたら厄介だし、何もないことを願うようにお願いしているのに不安を煽ることは言えない。
何かで忙しいとか旦那といい感じになっているとかそんな感じだろうと自分に言い聞かせるようにつぶやく。
見に行くだけならと店主のお願いを聞き入れる。
代わりに少し代金を値引きしてもらった。
こんなことばっかりしてるから色々厄介ごとに首を突っ込むことになるんだよなと思いながら宿に戻る。
迷子になってはいけないので地図で道を確認する。
ルートは決めたので高くても必要だろうと簡易的な写しの地図ではなくてちゃんとした地図を買った。
町の場所とこの先の道を見る。
迷子にならないか心配だったけれどちょっと遠回りで村を経由してまた元の道に戻ってくる程度の寄り道だった。
これなら迷子の心配もなく寄っていって村の様子を確認することも難しくない。
「まあ、見に行くだけだからな」
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