行くべき場所2
「なんか不思議だよな、他の人間見てもこんな気分になったことなんてなかったんだがな。
悪くない気分だからいいけどさ」
「そーか……」
「んでミクリャはこっちで預かるよ。
持って歩くにはちょっとデカいしな」
抱えられるほどの大きさになった繭は持っていけないこともないけど隠していくことはできない。
次はミクリャかと思った。
「まあミクリャが終わるまでここにいてもいいしさ」
「ワチカミ、ありがとう。
ただちょっと行こうと思っているところがあるんだ」
「そうなのか」
「ミクリャは任せとけって言うけど……危ないことなんかないだろうな。
むしろお前の方が心配だよ」
「危ないことなんてしないから大丈夫だよ」
「人間はか弱いからな。
……生きて帰れよ。
人も魔物も生きてんのが1番だかんな」
「もちろん、死ぬつもりなんかないさ」
ーーーーー
1人旅。
正確には1人とウルフ1匹、スライム1匹、クモ1匹、妖精1匹である。
人間は1人、旅。
ただ急ぐ旅じゃない。
ぼんやりとした目標だけを持って歩いている。
ノワールには人型になってもらって、一緒に道を歩く。
広い草原に来るとノワールに乗って移動するわけにもいかない。
1人旅でも構いはしないけどやはり1人で外を出歩くのは若干目立つらしく、ノワールを同行者としているがノワールはノワールで美人で目立つ。
ウルフの時はピッタリと横について歩くので人で歩く時もピッタリとくっつくように歩く。
時折すれ違う旅人がすごい目で見てくるのでみんなリュックに入れて1人で移動した方がいいんじゃないかと思えてきた。
シズクは基本的にリュックの中で大人しくしていて、人がいなさそうなら時々出てくる。
大体丸くなったシズクをショウカイが抱えているのだけど人の形になって歩いている時もある。
スーもスーでそこら中を飛び回って疲れたらショウカイの頭の上で休んだりしている。
大人しめのお姉さん妖精に見えていたけど意外とヤンチャで可愛らしいものだ。
「のんびりしていていいであるな」
そしてまたシュシュも一緒にいる。
なんかもうレギュラーメンバーなのだがショウカイが従えている魔物ではない。
ミクリャがいない代わりに連れてけとワチカミが連れていかせてくれた。
なんだかんだ安定の相棒である。
まず目指したのはタウモーズ。
ユニシア王国を脱して目指した隣国のリテュウスの都市である。
ワダエを中心にして活動すると決めてから戻ることも滅多にないだろうと思ってた。
「そういえばどこに行って何をするであるか?」
とりあえずショウカイの行くところにはついていく。
だから聞いてなかったけど一体どこに行こうというのか。
「ビクニシアンって国に行こうと思っているんだ」
「ビク……?」
「うん、ちょっと確かめたいことがあるんだ」
「なるほどである。
まあどこに行こうとついていくだけである。
美味しいものがあるといいであるな!」
すっかり人の食べ物に魅了されたシュシュ。
ひとまずどこか目的があるならそれでいい。
詳細に目的を聞いたところで何が出来るわけでもないのだから起きたことに対処するだけだとシュシュは思う。
基本は逃げて隠れているのだが。
本当はビクニシアンという国にもあまり行きたくない。
けれどどうしても確かめなければいけない。
そうでないと前に進めない、そんな気がしたのだ。
急ぐことも焦ることもしない。
だけど重たい気分を吹き飛ばすように着実にビクニシアンに向かって歩みを進めているのであった。
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