大事なものを直したよ2
「んー……」
「ご主人様?
……ご主人…………様?」
「マギナズに乗せてもらうよ」
「…………そうですか」
「ふふん、そりゃ当然だな」
「ほら、ノワール。
おいで」
「……ご主人様?」
「ノワール、おいで」
「……はい!」
ノワールに乗るか、マギナズに乗るか問題は難しい。
どちらに乗っても角が立ってしまう。
しかしショウカイはこの短い間に最適解を導き出した。
ショウカイはノワールの上を降りてマギナズに乗ることにした。
それはノワールに大きなショックを与えた。
尻尾や耳が悲しそうに下がり、暗い目をする。
勝ち誇ったようなマギナズ。
そうなることは分かっていた。
だからショウカイは手を広げ、優しい笑みを浮かべてノワールを呼んだ。
ノワールには出来るがマギナズに出来ないことがある。
ショウカイの動作の意味に気づいたノワールが目を輝かせてショウカイの胸に飛び込んだ。
もちろん小さくなってだ。
マギナズには小さくなる能力はないけれどノワールには抱えられる大きさにまで小さくなることができる。
「ふふん」
「グヌヌ……」
ショウカイはノワールを抱っこしてマギナズに乗ることにした。
赤ちゃんのようにノワールを抱き抱える。
「むぅ……なんだか納得いかねぇ……」
胸を触ったりお腹を触ったりマギナズに乗りながらキャッキャウフフで移動する。
「遅いですよ?
これでは日が暮れてしまいます。
私はそれでも構いませんが」
「グヌヌ……掴まってろ!
さっさと連れてってやるー!」
「ちょ……あぶ……はやっ……」
「わーん、まってぇー!」
ノワールに煽られて走り出すマギナズ。
1人飛び回っていたスーは置いていかれかけて慌ててマギナズの後を追った。
ーーーーー
神妙な面持ちの亀にも似たドラゴンであるアースドラゴンのテラリアスナーズ。
預かっていたスライムのシズクがどこかにいってしまって行方が分からない。
他の魔物が近づいたりした気配はないのだけど、シズクそのものの気配もない。
何にしても保護しておくべきシズクのことを見失ってしまったのでテラリアスナーズはどんな言葉でも受ける覚悟をしていた。
何も走ってこなくていいのにとマギナズに思っていたがショウカイは全く怒っていなかった。
事情は聞いてるはずなのにショウカイはカラッとしていると思ったらショウカイのリュックの中からスライムが飛び出してきた。
むしろ走るマギナズにしがみついていたので死にそうな顔をしていた。
「……そういうことだったんですか」
あんぐりと口を開けて驚いていたテラリアスナーズはショウカイから話を聞いてホッと胸を撫で下ろした。
ショウカイに召喚されたからいなくなったのだと聞いて、卵の時のように正体不明の敵に攫われたのでなくてよかったと思った。
恩人に仇を返してしまうことにならなかった。
それにテラリアスナーズにすら気配を掴ませないほどの化け物がきたわけでもなくて、そこにも安心した。
「それでは安心して、お帰りなさい」
「……ただいま」
ちょっと嬉しくなる。
住んでいるところでもないけどこんな風に迎えてくれる相手がいると安心する。
「なんか森に変わったところはあった?」
「いいえ、相変わらず平和な森のままです。
オーガは一触即発ですが……」
「ありゃ……そうなの」
「ですのでショウカイさんのお帰りを心待ちにしておりました。
オーガの争いが始まると流石に介入せざるを得ないですからね」
「そういえばちゃんと直せたのか?」
「ふっふっふっ……それはもちろん!」
「おおっ!
さすがだぜ!」
直せませんでしたではここに戻ってこれない。
直せたから戻ってきたのである。
自信満々なショウカイの態度を見てマギナズも嬉しそうに笑う。
「では早速お届けに参りましょうか。
いつ戦いが始まってもおかしくないので」
「そうしようか」
早く治ったクマーベラス改を見て喜んでもらいたい。
ソリアとトリシアとオルテが頑張ってくれた努力の結晶はきっと喜んでもらえる。
挨拶もそこそこにまたマギナズに乗って移動する。
マサカリ担いだ何ちゃらみたいな移動方法であるが今回はマギナズも意地を張って走らないでいてくれたので快適だった。
「おーい」
「あれは……女王様の代理様がいらっしゃったぞー!」
オーガの村はちょっと物々しくなっていた。
村の囲いは先の尖った丸太のようなものが追加されて戦いに備えているような感じがあった。
見張りのオーガが村の中に入っていて程なくしてゾロゾロとオーガが出てきて、先頭にオーガの村の村長でもあるフドワがいた。
「お久しぶりでございます!」
マギナズに乗ったショウカイが近づいてくるとオーガたちが一斉に膝をつく。
「ふむ、頭を上げるといい」
「ありがとうございます!」
「わざわざみんなも集まることがない。
自由にしているといい」
「はい、みんな戻るんだ!」
なんとなくマギナズが対応してくれてフドワの後ろに勢揃いしていたオーガたちが村の中に戻っていく。
そうしてオーガがはけるとちょこんといるリキナがようやく見えた。
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