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大事なものを直したよ1

 なんだか長い旅をしてきて、故郷に帰ってきたかのような郷愁にも思える気持ちがある。

 人にとっては死の森でもショウカイにとってはあまり脅威でもない。


 念のためとテラリアスナーズのナイフも出してあるのだけど目立つデカノワールを見て森の浅いところにいる魔物は逃げていく。


「わぁー……ここ私たちのお家にも良さそうね……」


 ショウカイはソリアとも別れ、死の森に戻ってきていた。

 今回の出来事が始まった地。


 もう長いこと戻ってきていないような気分にさせられるから不思議だ。

 人もいないところなのでノワールだけでなくみんなも外に出ている。


 歩き疲れたショウカイはノワールの背中に乗せてもらって移動していた。

 もののけの姫とか王とかそんな雰囲気すらあるショウカイはゆったりと森を闊歩する。


 シズクは丸いスライム形態でショウカイに抱えられていて、ミクリャはショウカイに肩車されるように肩に乗っている。

 スーは物珍しそうにそこら中を飛び回っている。


 基本的に棲家から出ることのない妖精にとって外の世界は物珍しくて楽しかった。

 穏やかで魔力に満ちた森はスーにとっても心地よく、妖精たちが住むのにもとても良さそうな場所であった。


「んん?」


 静かな森の中にふさわしくない地響きが聞こえてくる。

 段々と地響きが近づいてくる。


「よう、帰ってきたか!


 シズクがどこかに行っちまって…………シズク?」


 草木をかき分けてショウカイたちの目の前に飛び出してきたのは巨大なクマ。

 一時期ショウカイとも旅をしたことがあるマギナズであった。


 森の魔物の間を噂が駆け巡るのは早い。

 それぞれナワバリがある魔物もいるが小動物系や虫系の魔物はナワバリもなくそこらにいたりもする。


 わざわざ小動物を追いかけ回してナワバリを守るような器量の狭さでは周りの魔物からも下に見られるので一定の実力以下の魔物であれば見逃されて自由に行き来している。

 森の浅いところにいるような魔物はあまり知能がある魔物ではない。


 しかし一部知能があってショウカイを知っている魔物もいた。

 鳥類系の魔物たちである。


 やたらとかっこいい名前のスズメ、ファルバランがショウカイをこの森まで運ぶときにたくさんの仲間たちを連れてきていた。

 鳥類の頭は意外とバカにならない。


 ショウカイのことを覚えていてマギナズに伝えてくれた鳥がいた。


 慌てたように走ってきたマギナズ。

 申し訳なさそうな顔をしていたのだがショウカイに抱えられたシズクを見てあんぐりと口を開けている。


「お、お、お前!」


「私ですか?


 なんでしょうか?」


「なんでしょうか、じゃねぇよ!」


 吠えるマギナズ。

 多少距離を取ってこちらの様子を伺っていた魔物たちが散り散りに逃げていく。


「お前が、いきなり、いなくなるから、心配したろうがぁ!


 なんかあったらショウカイに申し訳がたたねぇって悩んだだろうガァ!」


 フェアリーイーターと戦っている時にショウカイはシズクを召喚した。

 マギナズたちは常にシズクも見ていたわけじゃないので気づけば進化を待っていたはずのシズクが壺の中から消えていた。


 なんの前兆もなくシズクが忽然と姿を消したものだから焦りに焦った。

 ショウカイが来ていると聞いてマギナズは謝罪とシズクがいなくなったことを伝えようと走ってきたのだ。


 原因はショウカイ。

 これは悪いことをしたと思った。


 しかし連絡する手段はないし、事前に召喚しますよとも伝えられることはできない。

 不可抗力であった。


「なのに呑気な顔しやがってー!」


「ごめん……それは俺のせいだわ」


「へっ?」


 ショウカイは事情を説明する。

 実際目の前でちゃんと説明して能力として召喚を見せた記憶が有るような無いような。


「そ、そうだったのか……」


 木に頭を擦り付けるマギナズ。

 大声を出したことが急に恥ずかしくなってきた。


「お、お前が悪いんだぞ!」


「ごめんって……」


 そう素直に非を認められると立つ瀬がない。


「くぅ〜……うっ!」


 ゴンと一発頭突き。

 それで結構太めの木が簡単に折れて倒れてしまう。


「まあいい、ほら、行くぞ!


 私の背中に乗りな、女王様のとこまで連れてってやる」


 まだちょっと恥ずかしいけどこのまま木に頭を擦り付けていても何も変わらない。

 サバサバとした切り替えの早さもマギナズの良いところだ。


「ダメです」


「あっ?」


「見て分かりませんか?


 今ご主人様は私に乗ってるんです」


「んなもん降りりゃいいだろうが?」


 相変わらず、仲がいいのか悪いのか。

 ノワールとマギナズが睨み合う。


 一触即発の空気。

 魔力が漏れ出してぶつかり、遠くで多くの鳥たちが飛び立つ音がした。


「早く丸く収めるである」


 せっかく穏やかに帰ってきたのに早々と喧嘩になっては台無しだ。

 ぶつかり合う魔力にヒヤヒヤしながらシュシュがなんとかするように促す。


 どうするのが1番いいのか悩む。

 どちらに乗ってもどちらかが怒るだろう。


 降りたら降りたでノワールもスネそうだし、丸く収めるとは難しいものである。


 スーはいきなり現れた殺気立つクマに怯えてソーッとショウカイの服の中に隠れてるし。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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