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あなたの無事を祈っています

「本当に色々ありがとう」


「こちらこそありがとうございました。


 ショウカイさんを助けるつもりだったのに、思い返してみると助けられてばかりでしたね……」


「そんなことないよ。


 ソリアがいてくれてかなり助かったよ」


 森にソリアを連れて行くことはできない。

 ここまで一緒に旅してきたけれどスーハッフルスまで戻ってきた。


 ソリアともここでお別れとなる。


 ソリアを見つけて寄ってくる人をかき分けて治安維持部隊の本部までやってきた。

 当てがわれた部屋まで案内された。


 片付けられていて、それでいながらもらった感謝の手紙などが貼り付けてあったりして女の子の部屋に少しドキドキする。

 トリシアの部屋?

 そんなもの知らない。


 ベッドに並んで腰掛けて言葉を交わす。


 ソリアは助けられたというがショウカイこそ助けてもらったと思っている。

 青色魔塔を紹介してもらったしフェアリーイーターもソリアの力無くしては勝ち得なかった相手だと思う。


 ジュードと戦うようなこともあったけど今となってはいい思い出である。


「ショウカイさんといると私の知らない世界がたくさんあることがよく分かります」


「俺も知らない世界の話ばかりだよ」


 Sクラス犯罪者とかフェアリーイーターなんてショウカイも知らない世界の話なのは間違いない。


「その……ショウカイさんは今後どうするつもりなんですか?」


「俺?


 俺は……ちょっとやるべきことができた、かな?」


「なんですか、それ?」


「んー……ちょっと放っておけないことがあってな」


 ショウカイには気になっていることがあった。

 もしかしたらこの世界に来た意義を問うことになるかもしれない。


 いつかきっと向き合わなければいけない問題で、先延ばしにしてはならないと思った。


 考えるように指先を見つめるショウカイの目は真面目で、言葉では冗談めかしたような言い方だけど本気で答えてくれてる。

 ショウカイとなら一緒に旅して行きたいとソリアは考えていた。


 でもショウカイがなんだか決意に満ちたような顔をしていて、ソリアは言葉を飲み込んだ。


「じゃあ……」


「えっ……」


 ソリアはショウカイの顔を引き寄せた。

 一瞬なんだかわからなかった。


 目の前にソリアの顔があって、目をつぶったソリアが顔を近づけた。


 チュッと音がして、感触があってソリアが何をしたのかわずかに遅れて理解した。


「えっと……これは…………お礼です。


 あとはおまじない……ショウカイさんが無事でいられるように…………」


 ソリアはショウカイのおでこにそっと唇を当てた。

 これは戦場に出立する騎士の間で時々行われるおまじないのようなものであった。


 かつて王になった騎士が王になる前の話。

 後の王妃となる女性と仲睦まじくあったのだが自分は戦場に行かなければならないことが分かっているので恋人にはなれないと最後の一線は越えなかった。


 そして騎士が戦場に行く日、女性は騎士の額にキスをした。

 恋人でも自分にできるのはここまでで、ただ無事を祈り、ただ待っていると伝えた。


 今では古くからある無事を願う、恋人同士のおまじないとなってしまった。

 ショウカイはそんなことを知るはずもなく、額を押さえて顔を赤くする。


 ソリアも顔が真っ赤になっていて、2人の間に言いようもない空気が流れる。


「それ以上は……許しませんよー!」


 なんとなく流れる甘い空気を打ち破ってノワール、シズク、ミクリャがリュックの中から飛び出してきた。

 ノワールはソリアに歯を剥き出しにして唸り、シズクは人型でキッとソリアを睨む。


「少し活躍したのでご主人様と話すことは許してやりましたが貴様如きがご主人様に触れていいと思うのか!」


「キスはダメでしょう!」


「ん、チュッ!」


 ノワールとシズクが行きすぎたソリアの行動に怒る後ろでこっそりとショウカイの肩に乗って頬にキスするミクリャ。

 いつもの無表情に見えるミクリャだけど今ばかりはちょっとイタズラっぽく微笑んでいた。


 こういう時に強かなのは実はミクリャであったりする。

 ソリアがやってミクリャがダメな理由もないのでショウカイは困ったように顔に抱きつくミクリャに苦笑を浮かべた。


「でもあなたたちよりも私の方が強いので、1番私がショウカイさんのためになれると思いますよ?」


「なっ……!」


 まさかのソリアの反論にノワールが言葉を詰まらせる。

 ソリアの強さはノワールも認めるところである。


 パワーはあるがスピードに劣るノワールではソリアに勝つことはおそらくできない。

 ショウカイのために1番役に立てることが基準なら自分が1番進んだことをしてもいいのではないか。


 そんなソリアの言葉にグヌヌとなるノワール。


「で、ですが私には毛があります!


 ご主人様は私のことを撫で回すのがお好きですがあなたには触りどころがないでしょう!」


「う……で、ですが私の体だって柔らかいですよ!


 サ、サイズは……ちょっと控えめかもしれませんが…………あっ!


 い、いや!

 そういうことじゃ。


 触ってほしいとか、そんなことじゃないんです!


 ショウカイさん?

 どこ見てるんですかショウカイさん!


 うぅ〜!」


「どこ見ていいか分かんないよ……」


 無の表情で虚空を見つめるショウカイ。

 着地点の見つからない口論。


 自爆したような発言にソリアはまた顔が真っ赤になっていたのであった。


「さっすがモッテモテだね!」


 人の基準で他者にモテるのは強くて良いオスだと聞いたことがある。

 スーはそんなご主人君持って鼻高々であった。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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