表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/340

頑張って直そう2

 それでもデカノワールの毛はごっそり抜けるので時間はかかりながらも大きな袋いっぱいにノワールの毛が取れた。

 ちょっとした達成感すらある。


 ノワールは抜かれ飽きたのか寝てしまっている。


「これぐらいあれば足りますかね……


 ちょっと待っててください!」


 ノワールの毛の中に腕を突っ込んでみると暖かい。

 トリシアは走ってどこか行ってしまったのでもうちょっとノワールの毛を取る。


「正直な話、こんな大変なことになるなんて思ってもいなかったです」


「そうだね。


 ガッツリ巻き込んじゃってごめんね」


「いいえ、文句を言いたいのではなくて……結構楽しかったりしてますよ」


 崖から落ちかけたり魔物と戦って死にかけたりもした。

 そんな経験を楽しいと表現するのはおかしいかもしれないがこれまでしたことのない体験で輝かしい思い出になっている。


 ウルフの毛を手でちまちまと引き抜くことなんてやったことある人はいないだろう。

 魔物とこんな風に一緒にいられるなんてあり得ない出来事は世界中を探しても経験した人などいない。


 ショウカイには感謝している。

 今まで自分の視野がいかに狭かったかよく思い知った。


 Sランクであっても上には上がいて、Sクラスの魔物も自分1人じゃ歯が立たなくて。

 妖精にも仲間を思いやる強い気持ちがあった。


「ありがとうございます。


 私を頼ってくださって」


「頼ってくれてありがとうとはまた変な話だな」


「そうです……ね」


 おかしくて笑う。


「ふふふっ、恩返しのつもりでしたけどまたショウカイさんに感謝することがいっぱい増えてしまいました」


「俺は何もしてないぞ?」


「それがいいんです」


 ショウカイが気兼ねなく接してくれるからソリアも気兼ねなくいられ、気を使うことがないから周りのことを見る余裕が生まれる。

 ソリアにとっては何でもない態度が1番ありがたいのである。


「お待たせしました!


 はっ……ちょ、ちょっと待ってください、オルテ!」


「はぁ?


 呼んどいてなんだそりゃ?」


 バンと勢いよくドアが開く音が聞こえて何やら言い争う声がした。


「ちょ……ショウカイさん!


 みなさんを隠してください!」


 トリシアはついうっかり他の人にみんなをお目見えするところで、思い出した。

 研究室のど真ん中にはデカいウルフが寝ていることに。


 ショウカイも慌ててみんなを隠す。

 よだれを垂らしていたノワールも揺り起こして小さくなってもらいリュックの中に入れた。

 

 帰ってきたトリシアは1人の女性を引き連れていた。

 不機嫌そうな顔を隠しもせずにトリシアのことを睨みつけていた視線をショウカイたちに向ける。


 暗めの金髪の若い女性はポケットに手を突っ込んでショウカイにガンを飛ばしていた。

 魔道士たちはみんなローブだったり白衣だったりを着ていて魔法使いや研究者といった出立ちだったがこの女性は大分ラフな姿であった。


「こちらはオルテです。


 私の同期で4級魔道士です」


「あんだ?


 自分の方が上だってアピールか?」


「やだなー、そんなんじゃないってば!」


 ショウカイが苦手なヤンキータイプのお方。

 トリシアとは真逆そうな人なのに仲は悪くないのかオルテの睨みにもトリシアは動じない。


「チッ!


 お前のせいかぁ!」


「何が!?」


 オルテはいきなりショウカイに掴みかかった。


「うちのトリシアが変わっちまったじゃあねえか!」


「理不尽!」


「オ、オルテ!」


「その手、離さないと切りますよ?」


「あ?


 やってみろよ?」


 謎の修羅場。

 ショウカイに掴みかかったオルテにソリアが剣を向ける。


 トリシアはあわあわしてるし、ショウカイは死んだように気配を消していた。


「なにこれー」


「これは……修羅場であるな」


 逃げ遅れて床に落ちているモコモコの毛の中から覗いているシュシュと目が合う。

 助けて、と口の動きで伝えてみるが今日に足をクロスしてバツ印を作るシュシュ。


「大人しくてちょっとオドオドしてたトリシアがなんだかハツラツとしてんじゃねえか!」


「いや……別にいいことでは?」


「…………いいことだけど!」


 なんだか悪い子ではなさそう。


「私の知らないところでトリシアを変えたのがお前かって聞いてんだ!」


「も、もうオルテ!」


「オンナを変えるのはオトコだってお師匠様が言ってた!


 トリシアが変わったのはお前が原因だな!」


「そ、そんな関係じゃないです!」


 トリシアが顔を真っ赤にする。

 なるほど、オルテはヤンキー風純情少女なのだとショウカイは理解した。


 オルテの部屋に突然訪ねてきたトリシアはなんか明るかった。

 何か言われたりするのが嫌で自分に視線が向けられているような感じがして4級魔道士の階には滅多に来ないのにニコニコとして訪ねてきた。


 オルテの小言も笑顔で受け流すし、なんだかちょっと大人になったようでムカついた。

 呼ばれて部屋に行くと呼んだくせにちょっと閉め出されて、中に入ってみると男がいた。


 ピンと来た。

 こいつがトリシアを変えたのだと。


 オルテもこんなだから友達が多い方ではない。

 トリシアも同じだ。


 ほとんど無二の親友なのにトリシアに何か変化が起きていたことが衝撃で、ほんのちょっとの嫉妬が混じっていた。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ