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頑張って直そう1

「ノワール!


 大丈夫か」


「はい!


 大丈夫です!」


 慌てたショウカイはトリシアの部屋を借りた。

 ショウカイの職業も知っているしノワールのことも分かっているのでとりあえずトリシアの部屋でノワールを出した。


 スーは軽く引っ張っただけで抜けたといい、心配になっていたがノワールは出してもらえて嬉しそうだ。


 恐る恐るノワールに手を伸ばして毛を掴む。

 軽く引っ張ってみるとごそっとノワールの毛が抜ける。


「え……これってまさか……」


「換毛期ってやつであるな」


「ウルフって換毛期あるんか。


 ……あったかいな」


 手に握ったノワールの毛は持っていると温かくなってくる。

 保温効果が高くて、抜け毛の塊だけでもフカフカとして気持ちがいい。


 異常な事態でも起きてしまったとか、また進化でも起こるのかと心配した。

 移動が激しく季節や気温の変化が分かりにくいが確かに少し寒くなってきたなと思っていた。


 ノワールの毛も生え変わりの時期らしく摘んで引っ張るだけで毛がスルスルと抜けていく。

 どうやらこれから冬を迎えるみたいで、ノワールはそんな冬を乗り切るために温かな冬毛になるらしい。


「ということは……」


 もっとモフモフなノワールになる……

 そんな密かな期待がショウカイの胸を占める。


 これまで実は夏毛であったという衝撃の事実にショウカイは動揺を隠せなかった。

 夏毛でこのフワフワ感。


 冬毛になるとどうなってしまうのか。


「まあ換毛期で冬毛になるってならいいんだけどさ。


 問題としてはこれだよな」


 ショウカイは軽いつもりで引き抜いたノワールの毛の塊に目を向ける。

 フワフワとした毛の塊はあっという間に両手いっぱいになった。


 ショウカイの希望に合わせて進化もしたので夏毛でもかなりのフワフワ感があり、夏毛のためにやや弾力がある感じもある。

 ほんのちょっと抜いただけで両手いっぱいになった。


 これがノワール一頭分となると山のようになる。


「……少しいいですか?」


「ああ、どうぞ」


「失礼します」


 ポヨンポヨンと手の上で毛の塊を弄って遊ぶショウカイを見ていたトリシアに毛の塊を渡す。

 ギュッとノワールの毛を潰して圧縮したり弾力を確かめたりしているトリシア。


 ノワールは手持ち無沙汰になって床に伏せ、ミクリャがその上に乗って毛を引き抜いている。

 毛の塊を自分と同じ大きさにするとこねてミクリャに似たような形を作っていく。


 ショウカイはトリシアの部屋が毛だらけにならないか密かに心配だった。


「これです!


 これならいけます!」


 しばらく毛をいじり回していたトリシアだったがなんだか自信ありげに毛を掲げた。


「何にいけるんだよ?」


「このフワッと手触り感、そして魔力を通してみましたが魔力の通りも申し分ありません。


 これをあのぬいぐるみの中に詰めましょう!」


「……なんだって!?」


 持った瞬間トリシアはビビッときた。

 天が使わした神の天啓が如きアイディア。


 メットンの代わりにノワールの毛をぬいぐるみの中に詰めてしまえばいい。

 このフワフワ加減なら悪くないアイディアだと思う。


 なかなか面白い考えだとショウカイも思うが本当に出来るかは甚だ疑問である。

 ウルフの毛をぬいぐるみの中身にするなんて聞いたことがない。


 確かに羊毛を使うことはあるだろうしメットンも実は魔物の毛らしいけどどうなんだろう。

 もし可能なら材料としてはただで十分な量を手に入れられるだろう。


「やるだけやってみませんか?」


「……そうだな、試してみようか。


 ノワール、毛を貰ってもいいか?」


「どうせ抜けるものですのでお好きにしてください」


 ミクリャはいつの間にか割とミクリャ風の毛の塊を作っている。


「よし、それじゃ毛取りといこうか」


「ええと……こういうのはどうしたらいいんでしょうかね?」


「羊なら毛を刈るんだけどノワールは羊じゃないからな……


 とりあえず手で引き抜いていくしかないかな」


「うーん、なんかクシとかブラシとか持ってきます。


 私はあんまり持ってないけど魔塔の売店に売ってたはずです」


 売店なんてあるんだと思ったけど、町からも離れてるし何か売ってるところぐらいなくてはやっていけないのは考えてみれば当然か。


「んじゃ、みんなも手伝ってくれる?」


「はーい」


 ソリアやシズクも含めてデカノワールの毛を抜いていく。

 抜くと言ってもぶちぶちするのではなく、引っ張るとスルリと毛が取れてくるのだ。


 ちょっと浮き上がったように見えるところなんかわかりやすい。

 とりあえずテーブルの上に載せていたのだけど帰ってきたトリシアがついでに袋も持ってきたのでその中にノワールの毛を入れていく。


「こう……なんというか。


 終わりの見えない無の作業ですね……」


 取っても取っても毛が取れる。

 終わりの見えない作業にすぐに飽きが来る。


 スーやミクリャは飽きて毛でベッドを作って寝ているし、ソリアやトリシアも無表情でノワールの毛をとっている。


「これ専門のゴーレムが必要ですね」


「まあとりあえず人形が直せればいい分だけ取れればいいんだよ」


 あとは外で自然に抜け落ちるのを待つしかない。

 もしくは小さくなってもらえればいいんじゃないか。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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