ぬいぐるみも忘れちゃいない2
Sクラスの魔物を倒した宴が冒険者ギルドで開かれてソリアを筆頭にしてその功績が讃えられた。
ソリアとしては自分の功績でないと言いたいが周りが聞いてくれない。
ショウカイもショウカイであまり目立ちたくないのでそこら辺は主張しなかった。
フェアリーイーターの死体やらそれに関わるお金やらはとりあえずギルドにお任せしてショウカイたちは青色魔塔へと急いだ。
「ぬぅ?」
そんなに長いこと出ていたわけじゃないのにすごく長く感じる旅だったと思いながら、今度はなんの事件もなく青色魔塔まで帰ってきた。
門番さんは相変わらず青色魔塔の前で座っていた。
少しだけ顔を上げてショウカイたちを見た。
誰のことを見ていたのか不思議そうに声を出した門番さんはジッと3人のことを見つめていたけど、やがてゆっくりと腰を上げると青色魔塔の門を開けてくれた。
「ああ、やっと帰ってきました!
外も悪くないですが、やっぱり魔塔が一番です!」
晴れやかな顔をしたトリシア。
たまには外に出ることも大切だとは思うが研究室で研究していた方が性に合う。
トリシアは荷物を持ってどこかに行ってしまった。
取ってきたものを青色魔塔に納品するらしい。
「ソリアとショウカイではないか」
とりあえず壁際に寄ってトリシアを待っているとゴーディアヌスが2人を見つけた。
「あら、ゴーディアヌスさん、迎えにきてくれたんですか?」
「うん?
いやたまたま下に用事があったんだ。
君たちを見つけたのもたまたまだ」
「そうなんですか」
「君たちが戻ってきたということはトリシアも戻ってきているのかな?」
「はい、ちゃんと妖精の粉を持ってきてますよ」
「そうかそうか。
きっと色々苦労かけたんじゃないか?」
「ははっ……」
そんなことはありませんという言葉が出なくて乾いた笑いで誤魔化すソリア。
ゴーディアヌスも軽くため息をつく。
旅で何をしたかまで聞かないが、何もなかったと言わない時点で多少は察する。
少しは外に出てトリシアが成長してくれればと思ったがなかなか人が変わるのは難しい。
勝手に期待したことなので落胆はしないが迷惑をかけてしまったことは謝罪せねばなるまい。
「あっ、ゴーディアヌス様!」
「ん?
トリシアか……」
「お久しぶりです!」
「んん?
少し……変わったな」
「本当ですか?
何か変われたなら嬉しいですね」
ニッコリと笑うトリシア。
歩いてくる姿の時点で既に違っている。
腰を曲げたようにして自信なさげに視線を落として歩いていたトリシアがまっすぐに背筋を伸ばして歩いていた。
ニッコリと笑った顔など、会う機会も少ないゴーディアヌスでは最後にいつ見たことか。
トリシアも変わったが薬草とかを納品して結構お金をもらえたのもあって今はニッコニコなのであった。
トリシアは荷物を部屋に置きにいき、ゴーディアヌスの部屋に向かう。
そちらの方が綺麗で広いからである。
ゴーディアヌスがお茶を淹れてくれる。
甘いお菓子も出してくれて青色魔塔までくるのに疲れた体に染み渡る。
「心配していたが上手くいったようだな」
「はい。
お二人のおかげで多めに妖精の粉を手に入れることができました」
「そうか、手伝わせてすまなかったな」
「いえ、なかなか面白い旅でしたよ」
今となっちゃ大冒険。
「それに取り引きみたいなもんですからね」
ただし旅でやったこととテディベアの修理が釣り合うかと聞かれるとちょっと微妙な気がする。
なんかすごく大変なことをやり遂げた気がしてならない。
「分かっている。
1つ謝らなければならないことがある」
「謝らなきゃいけないことなんてありました?」
「君たちが旅に出ている間にメットンの素材を探してみたのだが手に入らなくてな。
探しておくつもりだったのだが……」
ゴーディアヌスは3人が旅に出ている間にメットンが手に入らないか探してみた。
メットンは見つかっても少量、しかもかなり高額でとてもテディベアを満たすほどの量が見つからなかった。
「そのことについてなんですが私も考えていました。
おそらくですがメットンはもう入手するのは難しいと思います。
ですが代案を考えました」
「代案?」
「そうです。
そもそもメットンを使う理由は何も高級感のためだけじゃありません。
魔法を定着させるのに魔物の素材の方がいいからメットンを使っていたんです。
つまり魔法を定着させられるような魔物の素材があればいいんです」
「ふーん……その魔法を定着させられる魔物の素材って」
「それは……その、考え中です。
中に入れるのですからフカフカとしていて魔力の通りがよければいいんですがこんなこと初めてなのでどんなものがいいのか……
でもショウカイさんの能力なら見つけられるんじゃないかと思います!」
人任せかい!
そんなツッコミが口を出そうになる。
でも初めてのことだから分からないのも仕方のないこと。
トリシアなりにどうにかしようと考えてくれていたのだからグッと我慢する。
「例えば魔物の毛とかそういったものがいいと思います。
メットンも使われてるのは実際毛の部分ですからね」
「魔物の毛か……」
「はっ、甘いものあるじゃない!」
「……それは、妖精か?」
ショウカイのリュックの中で寝ていたスーが起き上がって飛び出してきた。
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