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隣国へ6

 ノーンとレーナンが枯れ枝を集めてきて薪木にする。

 運良く他の人の焚き火跡があったのでそこを利用して薪木を置いて焚き火場所にする。


 焚き火に火をつけるのはショウカイ。

 枯れ枝と言っても一瞬で火がつくのではないから少し継続して魔力を込める。


 薪木に火がついたのを確認すると魔力を込めるのをやめる。


 ウルガスのメンバーには火を扱える人はいない。


 魔法は個人個人で得意な属性、苦手な属性があって得意属性以外の魔法は扱わないのが普通。

 火をつけるぐらい覚えられないのかというと覚えることもできる人もいる。


 苦手にも程度があって全く扱えないことも珍しいことではない。

 得意な属性は自分でも分かりやすく最終的に伸びていくので練習もする

 苦手な属性は何が苦手で、どこまで苦手か分からず、伸びてもいかないので得意な属性以外を練習する人はまずいない。


 扱えても魔力の消費が大きく練習の時間だって得意な属性よりも必要とする。


 ウルガスのメンバーでも全く火を扱えないのはおそらくジーぐらいだろうが火の魔法を練習するぐらいなら別のことをした方がよほど有意義。


 それに火をつけたいだけなら火をつける道具や火属性の魔道具もある。


 だけれども火付け道具は面倒だしコツが必要で時間がかかる。

 火属性の魔道具は高価で使える回数が決まっている使い捨ての道具である。


 なのでサクッと火をつけられるに越したことはなく、ショウカイが火をつけられるのはウルガスとしてもかなりありがたかった。


 それに火属性魔法の強みは多少薪木が湿気っていても火が付けられることである。

 今回はしっかりと枯れているので関係ないが火の周りにおける地味なストレスは冒険者につきものである。


 火が安定したなら次は食事。

 基本は日持ちする物だけなのだが馬車の力は大きい。


 食料の内容は変わらなくても道具を持ってこられている。

 鍋があれば煮込んだりスープが作れる。フライパンがあれば焼いて調理が出来るのである。


 温かいだけでも食事は変わる。

 固いパンもスープにひたして柔らかくすれば多少はマシに食べられる。


 さらに今日はノーンが薪木探しで鹿を見つけて狩ってきた。

 戦いで扱うことはないがノーンは弓も使えて近くに獲物がいれば狩りもする。


 解体もお手のものでその場で解体して、晩御飯には鹿肉ステーキも出てきた。


 一回で食べ切れる量でもないので腐っていないか様子を見つつ明日も鹿肉が出てくるだろう。


 そして食後のデザートとしてドライフルーツ。

 長旅のビタミン補給と旅の楽しみとしてちょっとだけだけれども食べるのだ。


 ドライフルーツも決して安い物ではないがショウカイが気前よく購入していたのでちょいちょい食べても大丈夫な量はある。


 レーナンは女の子らしく甘いものが好きなのかドライフルーツも気に入ったようだ。

 ドライフルーツが既に無くなった皿をジッと見つめていたのでショウカイはこっそりと自分の分をレーナンに分けてあげた。


「ほんっと、いい依頼、いい依頼主!」


 ショウカイから会話解禁の許可が降りたことを聞いたレーナンが話し始めた。


「レーナン……」


 話していいと言ったが軽口を叩いていいわけではない。

 ウィランドが渋い顔をしてレーナンを見る。


「あははー……ごめんなさい、ショウカイ様。私って孤児出身で礼儀ってものがなくて」


「俺は何とも思わないから平気だよ」


「申し訳ありません、ショウカイ様」


「むしろいつも通りで構わないですよ」


 ウルガスのメンバーはショウカイのことを様付けで呼ぶ。

 依頼主なのでそう呼んでいるけれどショウカイからしてみるとむず痒い感じがしてあんまり様付けは好きではない。


「ショウカイがいつも通りでいいって言ってるじゃん!


 依頼主のめーれー何だからちゃんと聞かなきゃ……」


「レーナン!」


 ウィランドの怒号が飛ぶ。

 ここまで依頼主であるショウカイとは良い関係性を築いてこれたとウィランドは思っている。

 ここで怒らせてしまっては今までの努力が水の泡である。


 チラッとショウカイの様子をうかがう。

 気を悪くされていたら何とフォローすべきか。


 一方でショウカイはいきなりの呼び捨てに驚いた。

 でもレーナンが相手なら不思議と怒る気はしなかった。


「ずいぶんとレーナンに懐かれましたね」


 気を揉んでいるウィランドを横目にテラットはころころと笑う。


「ウィランド、あまり丁寧すぎても失礼というものですよ。


 一線を設けることは必要ですが、良いと言っている以上不必要に構えすぎるものでもありません」


「しかしですね……」


「あのレーナンが懐いているのです。

 ショウカイさんは良い人か、ものすごく悪い人かのどちらかでしょう。


 もう取り繕っても遅いのですからショウカイさんの度量にお任せするしかありませんよ」


 数日馬車の中で一緒だった。手伝い始めたのも驚いたし依頼主でありながらウルガスのメンバーに必要以上に気を使って接してくれているのが分かる。


 偉ぶった態度もなく見下すような言動もない。

 ジーやレーナンを卑猥な目で見ることもないし保存食の食事も文句を言わずに食べている。


 それにレーナンはもうかなり距離を詰めてしまった。

 ショウカイが悪い評価をつけようと考えているならもう手遅れである。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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