ぬいぐるみも忘れちゃいない1
悲壮な覚悟を持った冒険者たち。
頭数は揃っているがSランク冒険者は捕まらず、最高でもAランク冒険者までしかいない。
勝てる希望が持ちきれないでいた。
それでも被害が予想されるために戦わねばならない。
冒険者たちはフェアリーイーターと戦うために集められていた。
Sランク冒険者からの情報提供を受けて調査を開始したところフェアリーイーターの痕跡が見つかり、田舎村に住む人がフェアリーイーターを見たと証言まで取れた。
フェアリーイーターは妖精の天敵で妖精を捕食する魔物であるが他のものを捕食しないわけではない。
空腹なうち、妖精が近くにいるうちは人に被害を及ぼす魔物ではないのだが問題は妖精がいなくなった時である。
背に腹はかえられぬので他の生物を捕食し始める。
その対象には人も含まれるので人にとっても安全な魔物では決してない。
性格も悪く残忍さがあることから人を襲って満腹になると、今度は人を襲って遊ぶような行動を見せる。
人里離れたところにいる間に倒してしまわねばならない。
しかしながら募集をかけたのだがSクラスの魔物に対してSランクの冒険者が来なかったのだ。
いつまでも長々と募集を続けていてはいつフェアリーイーターの矛先が人に向くか分からないし、待機する冒険者の負担も大きくなる。
数はいるのでSランク冒険者を待たずにフェアリーイーターの討伐に出ることになった。
Sクラスの魔物にはSランクの冒険者が必要になる。
Aランクの冒険者を揃えればSクラスに挑めないこともないけれどフェアリーイーターはSクラスでも上位の魔物になる。
Aランクの冒険者はそれなりの数きてくれたが勝率は高くないとみんなが思っていた。
「おい、誰かいるぞ!」
ネヴァンデル大平原の湿原の方から人が来ているのが見えた。
一瞬フェアリーイーターかと思って身構えた冒険者たちはホッと警戒を解いた。
「あれは……ソリアだ!
Sランク冒険者の剣帝ソリアだぞ!」
「なんだと!?」
ソリアの話は聞いている。
フェアリーイーターの情報を提供して少数の仲間と共にフェアリーイーターのところに向かってしまったと。
きっとフェアリーイーターの被害を最小限にとどめるために足止めに向かったのだと冒険者ギルドは好意的に解釈し、おそらくあの人数では厳しいだろうとも思っていた。
希望。
Sランクのソリアが合流してくれるならフェアリーイーターも倒せる可能性が大きく上がる。
そんな明るい雰囲気になった冒険者たちに衝撃が走った。
「フェアリーイーターは討伐しました」
冒険者に合流したソリアは申し訳なさそうにそう言った。
完全に冒険者ギルドにフェアリーイーターのことを伝えたのを忘れていた。
冒険者たちが出発しているとは知らずに何事だろうとのほほんと考えていた。
フェアリーイーターと戦わなくてもよかった安心感や喜び、依頼としては不達成になる残念さなど複雑な感情で冒険者たちは顔を見合わせた。
まだ被害にもあっていない魔物なので大喜びするほどの感情もない。
とりあえず無事に終わった微妙な喜び持って冒険者たちは引き返す。
ショウカイたちも冒険者ギルドに報告する必要があるので冒険者たちと行動を共にする。
「うわっ、むっちゃ美人じゃん!」
「すごい希少職業なんだろ?
それならフェアリーイーターと戦ったのも勝ったのも分からないでもないな」
ショウカイの肩に座るスーが冒険者たちに手を振る。
スーは妖精だけど見た目には人の容姿に近い姿をしている。
すごく可愛らしい見た目であってスーがにこりと笑って手を振ると強面の冒険者たちがへラリとして手を振りかえすのだ。
ショウカイは今妖精使いということになっている。
どうしようか迷ったのだがスーが興味津々で外を覗いているところを見つかってしまったのでそういうことにしたのだ。
もはや姿を隠すことなく堂々としているスーはちょっとしたアイドル扱いだった。
ソリアなんかも美人だけどSランクということもあって近寄り難い雰囲気があるのかニコニコとして可愛らしいスーの方にみんなデレている。
意外と男心を掴むのが上手い。
トリシアのほうは魔塔の魔道士ということもあって魔法職の人と交流を深めている。
魔塔といえば冒険者よりも魔法系の人が行きたい就職先ナンバーワンなのでトリシアはエリートのようなものだった。
命懸けの戦いをしなくて良くなった。
依頼が1つ飛ぶことになったのは痛手だが命には変えられない。
明るい雰囲気の冒険者集団は大きな町に向かった。
ソリアが情報を提供した小さな町の冒険者ギルドではフェアリーイーターについて処理ができないためだ。
ソリアとその仲間だけでフェアリーイーターを倒したという話に冒険者ギルドは驚いていた。
なんせ次の冒険者を集っているぐらいだったので正直なところソリアどころか送り出した冒険者も討伐に失敗する可能性を考えていた。
実際にショウカイがフェアリーイーターの死体を出してみせると話を聞いていた冒険者たちも倒れそうになるぐらいだった。
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